等身大をさらけ出すリリィ、さよなら。の攻勢――成長を続ける楽曲たち
◆“ハッピーエンドで会いましょう”と言ったほうがずっと悲しくないですか？
――ヒロキさんは1対1の関係の思い出を歌った曲が多いですが、おひとりに対して何曲も作ったりなさるんですか？
作ります。それこそ高校時代は、その当時付き合ってた女の子をテーマに何十曲と書きました。わりと引きずるタイプなので。
リリィ、さよなら。『リリィ、さよなら。』（2015）
そうですね、これは前作『リリィ、さよなら。』に収録された【流星ドライブ】で歌っている親友です。【流星ドライブ】の歌詞の締めは〈僕らの朝が来る、〉で「、（読点）」で終わっていて【フラッシュバック】も〈あの頃みたいにもう一度優しく握り返して、〉と「、」で終わっていて……いつか「。（句点）」で終わりたいなと。（その親友とは）同じサークルなので、周りのみんなは「またどうせいつか仲直りするよ～」「またかよ～」「小学生かよ！」って感じなんですけどね。あと【時間よ止まれ】（M-4）は大学1年生の秋頃に書いた曲なんですけど、これは前作のリード曲【snow～君がくれた物語～】の前のお話なんです。曲同士がつながってるものもあるので、聴いている人がいろんなことを考えて聴いてくれるリスナーさんがいたらうれしいなと思います。
――【時間よ止まれ】もいい感じにこじらせてますね……。今作は前作よりこじらせ度が高いと思います。この曲はアレンジはポップで甘いニュアンスのある曲だから、そのこじらせてる感じも少し和らいでるような。アレンジが詞を突き放すこともしなければ寄りすぎてない感じで、そのバランスがいい。
この曲はサウンドがポップで、クラップも入っているような明るい曲で。作業をしてたマスタリングエンジニアさんも「よくよく聴いたら悲しい曲ですよね？」って。サウンドが明るすぎて一聴してわからないんですけど（笑）、そこでごまかしてる感じはありますね……詞自体は結構センシティヴなので。
――〈1番じゃなくていいから 2番目だっていいから／俺を好きになってくれないか〉のくだりは強烈でした。
ははは！ そこで1回諦め入ってます（笑）。しかもそんなふうに思ってないのに「俺はそうするしかないんだ……」という。で、実はこのこじらせが実ってうまくいきまして、それが【snow】に続いて……まあ……さようならと。
――ヒロキさんの曲はほとんど対人関係から生まれるものですよね。
……人に甘えてるんですよね。甘えたい。“ハッピーエンドで会いましょう”というタイトルは聴いてくれる人に引っ掛かりがあるかなと思ってつけたんですけど、実際はバッドエンドの曲や後悔の曲が多くて……最初は“バッドエンドの続きを”というタイトルを考えてたんですけど、そんな露骨に言っちゃうよりも“ハッピーエンドで会いましょう”と言ったほうがずっと悲しくないですか！？ より皮肉ってないですか！？
――ははは。聴き終わったあとに改めてタイトルを見ると少し落ち込みますね……。それはリリィ、さよなら。らしい傷の残し方だと思います（笑）。M-5【君がいなくなっても】はひたすら悲しい曲ですし。
この曲も【フラッシュバック】と同じことを歌ってるんです。かなりの大ゲンカをしたときがあって、おまけにその当時好きな女の子とも大ゲンカをしてしまって、重なっちゃったんですよね。でも……大事な存在が自分の生活からパッとなくなっても、意外と人は生きていけるんだなと思ったんですよ。ちゃんと学校にも行くし、それなりに生活していけるし。でも、やっぱ……ね。でも……割り切れない精神的な葛藤がある。その気持ちが歌詞のラストの〈でも〉に込められています。2年くらい前に書いた曲です。今回のリリースにあたってその当時はなかったCメロや最後に来るAメロを足して、よりいまの等身大の感じにしましたね。この曲はほとんど詞を朗読しているような曲なので、歌詞を聴いてもらってなんぼだと思ってディレクターさんに「僕は弾き語りで入れたい」と主張して弾き語りで入れることにしました。……ライヴでやるときもこの曲だけ弾き語りしてます。感情の起伏だったり、ライヴで聴いたらいちばん鬼気迫ってる曲なんじゃないかな。この曲はぜひライヴで聴いてほしいですね。
――こうやってヒロキさんが歌うことで励まされる人はたくさんいますよ。同じ経験している人はすごく多いと思いますし。この曲は共感性がいちばん高い気がします。
あ、そうですね……これは電車の名前が出てきたりとか、あんまり具体的な描写がないから。現代人の生活を漠然と歌っているので、そう言っていただけるとうれしいです。この曲はいちばん共感してほしいソングNo.1なので！ Twitterとかでも「これ聴いてるだけで病む」ってつぶやきを見つけました（笑）。
