04 Limited Sazabys 『CAVU』
ALBUM(CD)
04 Limited Sazabys
『CAVU』
2015/04/01 release
日本コロムビア
“限りなく視界良好”
4つの魂が一丸となり剛速球で突き抜ける無敵のストレート
2010年代のギターロック×メロコアのハイブリッド。いいとこどりである。04 Limited Sazabys(以下フォーリミ)というとんでもないバンドが、『CAVU』というとんでもないアルバムを携えてメジャーデビューする。航空用語で“Ceiling and Visibility Unlimited=限りなく視界良好”という意味を持つ“CAVU”をタイトルに掲げるように、一切迷いがない。追い風を待ったり頼ったりするのではなく、自分たちでその突風を作り出している。それはまるで少年漫画の主人公のような、未知なる才能と無敵感を感じさせる。ELLEGARDENに初めて出会ったときに感じた衝撃に近い。頭よりも先に心と体が反応する胸の高鳴りを感じられる、未来を己の発する光で切り開くようなバンドが登場するのをみんな待っていたのかもしれない。前作がポップ寄りのアプローチだったゆえ、このメジャーデビュー作がどうなるのかと思えば、彼らはここで過去最高の攻めの姿勢をぶち込んできた。その気概や自信にも大物感を感じさせる。
フォーリミの魅力と言えば、まず第一に“メロディ”。それは満面の笑みで疾走する情熱というよりは、泣き笑いで突っ走る“青さ”だ。それを引き立たせるのが少年性の強いGENのヴォーカルと、メロコアにギターロックの要素が加わった真っ直ぐなバンドサウンドである。4人全員が同じ方向の一点を見つめる強靭な音に、無垢さも感じさせるGENの素直な歌声が重なる、これはもう青さ以外の何物でもない。人の胸のうちにくすぶる青い炎を触発する、素直でピュアな音像だ。
そしてこのバンドのパート割も、このバンドの魅力をさらに引き立てる要因だ。ヴォーカルのGENはベースを担当。ギタリストにはHIROKAZとRYU-TAのふたりがいる。GENのベースはヴォーカルを務めていることもあり、動いて主張するというよりはヴォーカルに寄り添う、ヴォーカルと共に歌うような低音だ。そしてRYU-TAがコーラスを務めているとはいえ、フォーリミにはギターに専念できるギタリストがふたりもいる。ギターに徹した人間が両サイドで全力で音を鳴らす、その迫力はやはり何事にも代え難い。そして緩急を大きく効かせたテクニカルなKOUHEIのドラムスが、まっすぐ突き抜けるギターとヴォーカルとベースのなかにうねりを作り出すことで、フォーリミの旋風が完成する。この4人で鳴らされた音は、まっすぐでかいロックにしかなりようがなくて、メロディが際立たないわけないわけがないのだ。
特にM4【fiction】のメロディは見事で、マイナーを突っ走っていたかと思いきや、サビでメジャーコードをスパイスとして効かせ、楽曲の疾走感も相まってその不安定さが焦燥を煽る。M2【Terminal】などもその絶妙なメロディラインに心の機微を感じさせる繊細さがあり、M8【knife】ではラップを盛り込み、こちらに拳を突きつけるような緊張感を放つ。と思えばM10【me?】では素朴なメロディに〈鬼さんこちら〉〈あんたがたどこさ〉という聴き馴染みのある言葉を入れてきたり、アコギの音も気持ちいいポップで弾むM12【milk】の韻踏みもヒップホップ的でナチュラル。言葉遊びもこねくり回さず、凝り固まっていない。
野球でもストレートは打たれてしまうかもしれないけど、それが剛速球だったら誰も打ち返せない。潔く清々しいサウンドを恐れることなく鳴らす、そんな男気にもヒーローを感じてしまう。堂々と“視界良好”と宣言する彼らに、未知なる可能性を感じてしまうのだ。(沖 さやこ)
04 Limited Sazabys『knife』(Official Music Video)
◆Disc Information◆
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