cinema staff presents「OOPARTS 2015」密着レポート
13時50分、この日初めてホールへ移動した。キャパシティは600くらいだろうか。想像以上に広くて驚いた。岐阜の若いバンドマンたちが「いつかここでワンマンを」と夢見る気持ちがわかった。そして改めてOOPARTSというフェスがここで行われる意味を噛みしめる。club-Gはフロア全体が緩やかな階段のようになっており、天井には巨大なミラーボールがついている。見たことのない大きさのミラーボール。これが回ったら間違いなく場内一面が星屑に包まれるような光景が広がるだろうなと胸が躍る。
13時55分、club-Gのステージに三島が立つと、開会宣言。設営を岐阜の若いバンドマンたちが手伝ってくれたことに触れ「OOPARTSが若い人につながっていけばいい」と語る。岐阜のクリエイター・Scott Alenによるオープニングムービーが流れたあとは、とうとうOOPARTSが開演! トップバッターは岐阜のバンド界のレジェンドと言われるMasahiro Yamaguchi率いるmy young animal。OOPARTSはもともと三島がyamaguchiへ「岐阜でフェスがやりたい」と相談したところから始まった。cinema staffが彼らの姿を見て育ってきたことも納得の、誠実なステージ。穏やかさや憂いのなかに激情をほとばしらせる音像で、多くの観客を魅了する。途中ゲストヴォーカルにレミ街のヴォーカリスト深谷彩を招き2曲を披露。その場にいた観衆も一気に大人の優しさと包容力を感じさせる音に酔いしれる。「一生岐阜から出る気はありません」という発言にも、岐阜への誇りを強く持っていることを感じさせた。
2番手はcinema staffとは同い年で、今回が初の岐阜ライヴとなるSAKANAMON。1曲目は同期を用いたアッパーな楽曲「マジックアワー」。同期音を炸裂させたり、生音で魅せたりと巧みにコントラストを作り出す。【幼気な少女】【アリカナシカ】【ぱらぱらり】とキラーチューンを立て続けに投下すると、「cinema staffへ愛をこめて」と言いcinema staffの人気曲【drama】を披露するというサプライズ! 原曲に忠実なアレンジでありながらも、SAKANAMONらしい行きすぎた激情が迸る。ラスト【TSUMANNE】のコール&レスポンスも痛快だった。反骨精神をポップかつポジティブに昇華し、熱く激しい音と姿で観客の心をまっすぐ掴んでいく。ときめきとどきどきで満ちた時間だった。
3番手は今回の出演者では唯一のガールズバンドである、ねごと。彼女たちとcinema staffは4年くらいの仲で、1曲目【ループ】からこの日のライブも音楽や仲間への純粋な愛や尊敬が伝わるものだった。4人全員が身体いっぱいに音楽を吸収して笑顔で楽しむ姿は、多くの人々の目にも眩しく映ったのではないだろうか。【アンモナイト!!】では歌詞を〈OOPARTS今日は楽しまないと〉と変えてコール&レスポンス。三島がわたしの横でねごとのステージを観ていたのだが、その瞬間の彼は表にはあまり出さないとはいえ、やはりかなり感慨深そうだった。蒼山が「SAKANAMONの【drama】のカヴァーはずるいよね(笑)」と語り、cinema staffのカヴァーを用意してこなかったことを悔しがると、澤村が【西南西の虹】のイントロのドラムを叩き出し、場内を沸かせた。ラスト【憧憬】では力強く固まったグルーヴを見せ、フロアを圧倒した。
cinema staffのメンバーは全員、すべての出演者のライヴをしっかりと観ていた。特に三島は出演前にもかかわらずいち観客、いちリスナーとしてライヴを楽しんでいることが伝わってくる(彼はどのライヴでもそうなのだが)。イベントの折り返し地点に登場したのは、「RO69JACK 2014」で優勝し、岐阜在住の若手バンドのなかでも特に頭角を現している鳴ル銅鑼。SEはクラシックをオケにした演劇で、ギターヴォーカルの三輪和也は和傘を持ってステージに登場。和や歌謡曲に合った演出を用いる。人懐っこい色気は天性だろうか。ダンスナンバー【阿】では三輪が高く上がる観客の手を左右に振らせたり、シンガロングやクラップを求めるなど、観客をスマートにエスコートするようにライヴを展開していく。三輪の「岐阜には何もないけれど、ここにいる人たちにはcinema staffがある」という発言に場内は大きく沸いた。あとで三島に話を聞いたところ、三島と三輪は付き合いも長いらしく、三輪の言葉も長年の信頼関係あってこそだったのだと思った。「僕にとっては優しい曲」と言い演奏されたラストの泣きのバラード【アステロイド】も一音一音が透き通るように美しかった。
イベントも後半戦。18時30分ごろ、ステージには今年2月に開催されたcinema staffの自主企画ライヴにも出演したPOLYSICSが登場。SEにもなっていた【introduction!】には、聴き間違いでなければヴォコーダーで「OOPARTS」と言う声が入っていた。彼らにとって実に7年ぶりの岐阜でのライヴ。アッパーな名曲キラーチューンを揃えたセットリストで、尋常じゃない気魄をもって全力で体当たり。ハヤシは汗だくでフロアを煽りまくり、ベードラの太いボトムで魅せる。なんて衰え知らずの若々しい音だろうか。だがキャリアを積んだバンドだからこその逞しさやプライドを感じさせる。MCではcinema staffと競演するたびに飯田がハヤシの「TOISU!」を真似するのだが、それがどう見てもオードリーの「トゥース!」だという話で場内を沸かせた。どんどん加速する迫真のステージングはフロアを一気にトランス状態へ導き、最後までそのテンションを切らすことはなかった。
その熱気が冷めやらぬなか、トリ前に登場したのは飛ぶ鳥を落とす勢いで人気急上昇中の04 Limited Sazabys。cinema staffとのちゃんとした対バンは初めてだという04LSだが、転換リハでGENがcinema staffの【ニトロ】を歌い、GENとHIROKAZがcinema staffのグッズのTシャツを着てステージに立つなど、敬意を示す。感情のかたまりを豪速球で何百発と打ち込んでいくような荒々しさを持つメロディック・パンクはカーチェイスさながらにスリリング。直情的なサウンドは非常にフレッシュで、そこに乗るちょっぴり切ないメロディが琴線に触れる。「今年初めて岐阜に来ました。最高な形で岐阜に上陸できてうれしい」と語るGEN。2008年に名古屋で結成したときには、岐阜にすごいバンドがいるという噂で、cinema staffの存在を認識していたという。「本気で、馴れ合いじゃないライヴをしましょう」という言葉の通り、一切手抜きなしのアクト。ラストでの名曲【Terminal】【swim】の畳みかけは、多くの若者が目を輝かせながら彼らを見つめる姿も印象的だった。
>>そして7組目、大トリのcinema staffがステージに登場!