空きっ腹に酒ゆきてるの「酒でも飲まなきゃやってられん」第9回～檸檬

Posted by 田中幸輝 | On 15 6月,2019 | In Column

空きっ腹に酒ゆきてるの「酒でも飲まなきゃやってられん」
第9回　檸檬

酒を飲まないと酔わないから思考が纏りすぎて自己解決してしまい、コラムに提起する前に問題が消化されて満足するということがこの一ヶ月の悩みです。
くはぁ！贅沢な悩みだな！
しかし必ずしも健康な状態だけが人生を豊かにするのかと言われればそういうことでもないのかも知れません。
二日酔いなんかは非常に辛いですが迎え酒はとても心地よく、同じ飲酒でも身体や精神に及ぼす影響は様々なのだなと素面なら側から見て面白がっていられますが、酔った当人はそれどころではなく、しかし我々はそれどころではない状態を求めて飲酒をするわけです。
その結果引き起こした頭痛には人生の滋味深さがあるのではないかと、私はそう思います。
表裏一体。
恋愛の裏には失恋があり、平和の裏に戦争があり、富裕の裏に貧困があって、酩酊の裏には二日酔いがあるのです。
「何言っとんねんコイツ気持ち悪い」
と思ったそこのあなたは今とても正常に物事を判断出来ていますよ。
僕はレモンサワーが飲みたくて気が狂いかけていたのです。
夏やさかい。

でも自分は禁酒を始めてからもよく飲み屋に出かけるんです。
そこで酔った人達と素面で話しているととても面白い。
寧ろその状態が楽しくて自分から友人を頻繁に誘っては飲み屋に出かけるようになりました。
酔った人は必ずと言っていいほど同じ話を何度もしますね。
何度もするうちに大袈裟になっていき、最終的には全く別の話になっていたりして、でも本人は恰も初めて話すかのような顔でペラペラと話す。酔って頭は働いていないはずなのに創造力は逆に活性化されるのか、盛られた話の方がよっぽど面白いです。こっちとしては正直その話が真実だろうがフィクションだろうが面白ければそれでいいのでお酒がなくても烏龍茶だけで充分楽しませていただいております。

いや、飲みたいよ！？
レモンサワー飲みたいよ！？
やっぱり！
烏龍茶て！

すみません、取り乱してしまいました…。
禁酒の何が辛いって酒が飲めないことですね。はは、真理。

そんな私は今風邪をこじらせてポカリスエットを飲んでいます。
コラム〆切り当日の午後三時。
布団の中で冷や汗かきながら、朦朧とした頭で書くこのコラムの文章が果たして纏まっているのかどうか定かではありませんが、この風邪っちゅうのは皮肉にも酩酊状態に似ているなぁと呑気に考えております。ちっとも楽しくねぇのを除いてほぼ酩酊状態です。身体も熱いし頭もぼんやりします。
くあ、節々が軋むんだが。陰茎は溶けたんかいうぐらいフニャフニャやし。
やべぇ、目の前がフワフワしてきやがった。ずっと液晶画面なんかと睨めっこしてるからこんなことになるんだ現代の泥め。
とかなんとか悪態吐きながらふと窓の外に目をやると青空と大きな入道雲。
鳴いてないけど蝉の声。
たまに網戸を通るそよ風が初夏の清々しさを完璧に演出していて、僕は心がスゥっと軽くなるような気がしました。
あー、こんな天気の日は山や川に出かけてのんびり散歩したいよな。
小さな滝の見えるお土産屋みたいなとこで、奥の座敷かなんかに座って柿の種で焙じ茶かなんかズルズルするのもいいなぁ。山独特の少し湿った香りが僕はとても好きなんだけど、君は？　いや、誰もおらんねんけどね。ほほほ。あ、ヒヨドリが飛んでる。
で、日が暮れて少し肌寒いくらいに涼しくなったらぶらぶら歩いて帰路につく。でもなんかそのまま帰るのも物足りないなってことで、片っ端から友人に連絡して居酒屋に呼び出したら、唐揚げ食ってレモンサワー百杯飲みたいそんな私はお粥食ってポカリスエット百杯目。へへ。ばたんきゅう。

酒を飲まないと酔わないから思考が纏りすぎて自己解決してしまい、コラムに提起する前に問題が消化されて満足するということがこの一ヶ月の悩みです。

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