cinema staffワンマンライヴ体験記~遊戯王好きが初めて自主的にロックバンドのライヴに行ってきた

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行ってきました。cinema staff ワンマンライヴ at 渋谷club乙。

姉の影響でcinema staffがどういう方々で、どういう音楽をやられているかは漠然と知っていたけれど、ちゃんと聴くきっかけになったのは『遊☆戯☆王 ARC-V』のオープニングテーマ【切り札】でした。あの歌は本当に、決闘者(と書いてデュエリストと読む)として、本当に心から「何て素晴らしいんだろう!」と思う歌でした(そのことに関してはMV Watcherの【切り札】記事で書いております)。

僕は日本のロックバンドをあまり聴かないんです。嫌いではないし、かっこいいとも思うんですけど、聴きたいと思う欲求が低くて、姉が聴いているのを聞き流したりするぐらいでした。でも【切り札】を生で聴きたいなぁ!と思うようになってから、生札が聴きたいと悶々とする日々。聴きたい……生札が聴きたい……ライヴ、ライヴに行こう……出来たらワンマン……ワンマンライヴを探そう……ツーマンばっかりじゃないか!!!! と思ったりしてたところに、姉から今回のライヴのことを聞き、連れていってもらうことにしました。


cinema staff「切り札 / deadman」MV(Special Edit)

今回のライヴハウスのサイズが小さめというのもあり、チケット争奪戦だったとメンバーさんがMCでお話されてて、「おお……この会場にいるのは選ばれたcinemaファンの方々なのか……まるで初代『遊☆戯☆王』でペガサス(人名)が住んでるペガサス島で行われた、『決闘者の王国(と書いてデュエリストキングダムと読む)』に招かれた選ばれしデュエリストたちみたいだ……。スターチップ集めなきゃ……」と思ったりしつつ。そのあとのMCによると「今回のライヴはいつもと違った趣向で行う」とのことで、その内容とは「メンバー4人が個々にコンセプトを決めて、それに沿った3曲を演奏する」というもの。すごく面白いアイディアだと思いました。従来のファンの人にも新鮮だっただろうし、初心者の僕には「○○さんはこういうテーマでこういう曲をセレクトするんだなぁ、あとで曲を改めて調べて聴きなおしてみよう」という楽しみ方ができました。

ドラムの久野洋平さんとベースの三島想平さんは自分の担当楽器がかっこいい楽曲を選出。久野さんのテーマは後付けだったようですが、僕、久野さんのドコドコ叩くドラムが好きで、そんな久野さんが選ぶ3曲が知れて感激です。三島さんが選んだ3曲のうちのひとつの【いたちごっこ】はこの日初めて知り、cinema staffにはこういう4つ打ちのダンサブルな楽曲もあるんだー、と驚き。三島さんは楽曲と歌詞をほとんど手がけてる方だからか、ベースがかっこいいというくくりのなかでも、cinema staffの3つの顔が見える選曲でした。

ギターヴォーカルの飯田瑞規さんが「コンセプトはメルヘン」と言っていて「あ、これ、エグいのがくるフリかな!?」と内心思いました。なぜならば姉から飯田さんは腹黒お兄さんだと教え込まれてたからです(沖さやこ注:そこまで教え込んでいません)。でも蓋を開けてみたら確かにメルヘンだった……。【さよなら、メルツ】のメロディーライン、ポップでキャッチーで可愛いですもんね。歌詞も御伽噺っぽい言葉選びだし……と思ったんですけど内容はなかなかエグいから、あ、やっぱり飯田さんって腹黒お兄さんなんだなって……。ギターの辻 友貴さんは漢字3文字の楽曲を選曲していて(3曲選曲だから3とかけてたのかな?)、その辻さんが選んだ【待合室】のほうがメルヘンだったもんな……。

僕は後ろのほうでライヴを観るのが好きです。理由は会場全体の雰囲気が楽しめるから。そんな感じでこの日も後ろから見ていたんですけど、シネマファンの方々の熱さというか真っ直ぐさというか、cinema staffに真摯に向き合いつつ楽しんでる感が印象的でした。あと、ウェーイってなって悪ノリする人がいないなぁって。僕の横と左前のほうにいらっしゃった男性は、ステージ上で派手に動く辻さんに釣られるように動いてたり、時々「変身するの?」という動作をしてましたけど、気にならなかったです。なんだかんだで周囲の人にぶつからない範囲で動いてて、器用だなぁ~。


cinema staff 「theme of us」MV(major 2nd full album「Drums,Bass,2(to)Guitars」opening track)

冒頭でも書いた通り、僕は【切り札】からcinema staffを聴くようになったので、ファンとしてはとても若いです。まだアルバムを全部聴けていないし、ライヴ中もどれがどの曲でどのアルバムに入ってて、ということもわかっていなくて。それでもcinema staffのライヴを観ていて「良い音楽って、知識がなくても、体が自然と動くし楽しい気分になるんだなぁ」と改めて感じました。そして横で観ていた姉に「この曲かっこいいね、どれに入ってるの?」と聞いたりして、なんだか子供の頃にゲームの攻略方法を友人に聞いたり教えたりしてたときの楽しさを思い出しました。そして、これは当たり前なんですけど、曲を知ってるともっと楽しめるんだろうなと。「もっと楽しみたい」と思える気持ちっていいですよね。

初心者向きではないセットリストだったようですけど、初心者なりにとても楽しかったですし、cinema staffは曲を知らない人でも楽しめる安心感と安定感のあるプレイをするんだなという発見もありました。ワンマンだと自分たちのことが好きな人たちしかいないからちょっとダラける?バンドもあるのかなと思うんですけど、cinema staffはそういうのもなく、1曲1曲真摯に観客に届けていて……。背筋のピンと伸びてるメリハリと清潔感のあるステージというか。メンバーの皆さんの「まだまだ、もっともっと」という、キャリアを重ねてこそ出せる前向きな成長思考がフレッシュだなと思いました。


cinema staff「eve」初回限定盤 LIVE DVD digest movie

cinema staffというバンドは音楽に対して実直で誠実。それは観客に対して同様で「自分たちの音楽を伝える」という気持ちがガラスのように透明で、曇りがなくて、受け取るファンもその気持ちに共鳴しているようでした。ここまでバンドもファンも心の背筋がピンと伸びてるように感じるライヴも珍しいなぁ。ここにいるみんながcinema staffという存在に真面目で、とにかく熱いんだなぁって。だから上のほうで書いた変身するの?的な動作をしてる人がいても気にならなかったのかな。cinema staffの音楽と向き合ってるからこその動きだから、会場とバンドの一体感的なものがあって、ノイズになってなかったんだろうなと思います。

途中MCで久野さんが「今日【great escape】やらないけどね」と言ってて、あ……これは……【切り札】やらないかも……今回はいつもとセットリストが違うって言ってたしな……仕方ないか……と半ば諦めていたところに【切り札】が始まり、その途端に決闘者(と書いてデュエリストと読む)は大興奮ですよ。思わず小声で歌っちゃいましたよ。歌いながら「ジャック VS 遊矢 戦のクライマックスで、デュエルを観ているみんなが遊矢と一緒に口上言ってた瞬間の気持ちって、こんな感じだったのかな」なんて決闘者(と書いてデュエリストと読む)は思ったわけですよ。

こんな感じで、初めてのcinema staffのライヴはとても居心地が良い空間でした。

ライヴを観終えてあの日を思い返してみて、cinema staffというバンドは素直で純粋で、とにかく堅実で、勢いで上り詰めるタイプではなく一歩一歩着実に歩み進めていくタイプなんだろうなと思いました。有無を言わさぬ勢いでメインストリームにのし上がり、一気にてっぺんへ駆け上がった先輩バンドもいますが、cinema staffは作品を出すたびに課題点や成長点を見つけて、着実に精度をあげるタイプという印象がある。だからこそファンも安心してついていけるんだと、初心者ながらに思いました。そういう基盤がしっかりしてるからかな、初めてのライヴでも安心して見れたし、「初めて」というアウェー感がなかった。振り落とされない感というか。


cinema staff/1st Live DVD digest movie(2014.9.3OUT!)

ライヴスタイルも各々マイペースでやるべきことが確立していて、メンバーみんな自分がやることと他のメンバーがやってくれることを把握してて、安心して音楽を生み出してるんだなと感じました。正直ヴォーカルがセンターではないと聞いたとき「え?」とも思ったけど、ライヴを見てるうちに、ああ、飯田さんは上手(かみて)で歌うのが居心地良さそうだなと思ったし、辻さんがセンターである理由もわかった。ヴォーカルはバンドの花形ではあるし、飯田さんにもその華やかさはあるけど、飯田さんはヴォーカルには珍しい謙虚さがあって。そのぶんセンターを務める辻さんの騒々しい、もといアグレッシブな演奏がそこを埋めていて、バランスがとれてるなと感じました。cinema staffは4人でcinema staffというひとつの生き物というか。4人が同じ線上にいて、それぞれの静かな自己主張と個性がうまい具合にとれている。それでいて見てる方向が同じ感じがして、安心感がありますね。

当日のセットリストを見ながら「あの曲はこのアルバムに入ってるのかー」と、初心者なりに音楽を追いかける楽しみを感じております。またシネマのライヴ行きたいな。(沖 丈介)

 

2016.8.3 at 渋谷club乙
『two strike to(2) night 特別編 -KINOTO 15TH ANNIV!-』

01 Talking Machine(9mm Parabellum Bullet カヴァー)
02 theme of us
03 希望の残骸

久野洋平選曲(テーマ:ドラムがかっこいい曲)
04 シンメトリズム
05 境界線
06 cockpit

三島想平選曲(テーマ:俺がかっこいい曲)
07 Boys Will Be Scrap
08 A.R.D
09 いたちごっこ

飯田瑞規選曲(テーマ:メルヘン)
10 明晰夢
11 さよなら、メルツ
12 どうやら

辻 友貴選曲(テーマ:漢字3文字)
13 待合室
14 時計台
15 青写真

16 切り札
17 白い砂漠のマーチ
18 exp

encore
19 西南西の虹
20 Poltergeist

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