16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」第21回~デストロイはるきちはピュアな人

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16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」
第21回 デストロイはるきちはピュアな人

 

[1]緊急停止ボタン

現在2025年10月12日21時40分、名古屋から大阪に向かって走る近鉄特急が突然止まりました。乗客同士が喧嘩して、緊急停止ボタンが押されたみたいです。駅員さんが喧嘩した人同士を引き離そうとしていますが、頭から血を流した人が大声で罵倒しながら凄みを効かせて離れようとしません。恐らく、血を流している人が車内で騒がしくしすぎて喧嘩になって殴られたようです。

ため息をつきながら、僕は今日のイベントを振り返っていました。今日は、ガストバーナーのギターボーカルであるデストロイはるきちさんと、ギター加納さんの弾き語りユニット【はるきちとやすのり】がワンマンをするというので、売り子として手伝っていました。実際はほぼ、楽しんでいるだけでした。

ライブを見ているうちに、二人の音楽へのピュアな向き合いに対して、同じメンバーながら徐々に感動してしまい、その余韻をもってライブ終わりのはるきちさんに、「このコラムの原稿、もうすでに別の内容で書いてしまったんですけど、今の感情を大事にしたいので全部書き直して投稿します!!」と伝えて、興奮気味に電車に乗ってパソコンを開いたら、乗客同士の喧嘩です。はぁ、現実。

今、乗客の罵倒を聞きながら、ライブの余韻を何とか保ってコラムを書いています。だってはるきちさんに宣言しちゃったんだもん。今回は、ガストバーナーのギターボーカルであり、2020年2月に解散した“みそっかす”のギターボーカルでもあったデストロイはるきちさんとのお話です。なんでこの人とバンドを組み、そして、本日10月16日にフルアルバムを出すことになったのか。そんな話をしてみたいと思います。

 

[2] 月とスッポン

はるきちとやすのりの弾き語りワンマンは、加納さんによるセトリの組み方の妙で、みそっかすとガストバーナーの曲が大筋で交互になるように組まれていました。僕にとっては「はるきちさんと一緒にバンドを組む前(みそっかす)⇔バンドを組んだ後(ガストバーナー)」を行き来するセットリストだったので、過去と今をシャトルランのように思い出さざるを得ない内容でした。

思いを馳せます。名古屋のバンド“みそっかす”を知ったのは2011年のこと。大阪は堺、ライブハウス三国ヶ丘FUZZのステージ前室、ライブ10分前という特異な瞬間でした。そのころ僕は大学から一番近い三国ヶ丘FUZZをホームとしてEmu sickSというバンドを組んでいました。なぜかメンバーがライブ直前のステージ前室で、みそっかすの「ム〇ンライト伝説」のMVをスマホで流し始めたのです。

映像を見た僕はメンバーに「なにこれ?」と言いました。とにかく、奇妙でなんだか腹の立つ(これは大阪でいうところの誉め言葉)MVだったのです。そして、その言葉と共に「サウンドに隙間があって癖になる」とも感じました。いかんせんライブ直前だったので、みそっかすの音楽を咀嚼する前にEmu sickSのライブ出番が来てしまいました。僕のみそっかすとのファーストコンタクトは、なんだか変な感じだったのです。

翌年、同じ三国ヶ丘FUZZにみそっかすがやってきました。僕はなんとなく見に行きませんでしたが、当時通っていた大学がライブハウスの近くだったので必然的に噂が回ってきました。どうやら見たこともないくらいFUZZは人でパンパンだったみたいです。(調べてみると出演者が、KANA-BOON / みそっかす / the unknown forecast / キュウソネコカミ / 理科室コーヒー実験ブレンド / The denkibranでした。当時のシーンぎゅうぎゅう詰め!って感じがしますね。そりゃパンパンだよね)

(当時のライブハウスのブログを見つけました)
https://fuzz.officialblog.jp/archives/1650557.html

そのままバンドとして接点を持たないまま、みそっかすの規模はどんどん大きくなっていきました。当時の関西では邦ロックDJとバンドを融合したイベントが特に盛んで、その流れから発売したコンピアルバムにみそっかすが入っていたり、Emu sickSから見ればみそっかすは「手の届きそうで全然届かない名古屋のすげーバンド」だったのです。普通に難波のレコードショップでみそっかすの『アメリカと中国と静岡』を買ったりしていました。

ダメ押しに2014年にみそっかすは「マッドシュリンプス」という曲を発表しました。その時もEmu sickSメンバー経由でMVを見せられ、「うわー! やられた!!」と思いました。今をときめく名古屋のみそっかすと、鳴かず飛ばずの大阪のEmu sickS、間違いなく月とスッポンのような関係だったと思います。

 

[3] 二信八疑

みそっかすとEmu sickSとが初めて接点を持つようになったのは2017年10月、Emu sickSが結成10年目にして初のフルアルバム『夜明け前のジーニアス』を発売したことがきっかけになります。

このアルバムは、今は閉店してしまった京都GROWLYの店長、安齋さんの個人レーベルから発売させてもらっていたもので、安齋さんが気を利かせてみそっかすにアルバムを送ってくれていました。

ある日、安齋さんの元にいくと、「みそっかすというか、はるきちがアルバム聴いてくれて反応良いから、対バンできるかも知れんで!」との話。僕は嬉しかったのですが、正直「本当?」と半信半疑でした。アルバムには自信がありましたが、まず、聴いてくれるとも思っていませんでした。

しかし、はるきちさんは律儀に聴いてくれて、しかも反応が良い、対バンしてくれるかもしれない、となれば、あまりにも話が良すぎます。半信半疑と書きましたが、配分としては二信八疑くらいでした。

けれどあっさりそのままEmu sickSのツアーファイナルでの対バンが決まり、しかもツアーファイナル前にみそっかすの主催するイベント「みそフェス2018」にも出演させてもらったり、平たく言えば「良くしてくれる偉大な先輩」となってくれました。今思い返しても、なんでこんなに目をかけてくれたのか不思議ですが、はるきちさんは今も昔も「良いと思ったものは良い」を貫いているので、まぁ、そのまま純粋に良いと思ってくれたのだと思います。

 

[4] 家に帰ろう

そうこうしているうちに、2019年1月にEmu sickSは活動休止します。休止1本前のライブがこれまたみそっかす主催の「みそフェス2019」でした。これではるきちさんにしばらく会えないな、なんて思っていました。

その後、僕は新たにZOOZというバンドをはじめ、そのZOOZがコロナで全国的にライブができなくなる直前、名古屋へライブに行ったことをきっかけに、お客さん経由で再びはるきちさんの耳に僕の情報が入り、2020年ガストバーナーに誘われる運びとなったのです。

長々と昔話をしてしまいましたが、時を2025年10月12日に戻します。はるきちとやすのり弾き語りワンマンでみそっかすの曲が演奏されるたびに上記のことが脳裏によぎって、そして交互にガストバーナーの曲が演奏されてまた、今バンドを一緒にやれている不思議な縁に浸らずはいれませんでした。はるきちさんも、加納さんもとてもピュアな表情で音楽をしていて、こんな二人と一緒に僕はバンドしているんだなぁ、という気持ちになりました。

運命に導かれるように加納さんにも出会い、ベースコーラスの辻斬りっちゃんにも出会い、紆余曲折を経て1stフルアルバム『TAROT』がリリースできたことは、ますます感慨深いと感じています。紆余曲折と書きましたが、実感としては紆余紆余紆余紆余曲曲曲曲曲折折折折折折折くらいです。

かなり癖のある人たちがカッコいいものを目指して一つの作品を形に残せたことは、人生においてかなり上位の貴重な経験なんだと思います。

そしてちょっと僕は今、ハラハラしています。それは、今乗車している名古屋から大阪に向かう近鉄特急の約2時間でこのコラムを一気に書き上げているのですが、件の乗客同士の喧嘩が原因となる緊急停止のせいで、絶妙に終着駅の大阪難波から家に帰るまでの終電がないかもしれないということです。

いや、それはそれでハラハラしているのですが、1stフルアルバムを完成させたガストバーナーが、更にカッコいいものを目指すことができるのか、というハラハラ感もあります。まぁ、いくらハラハラしていても、達成しなきゃ楽しくないし、バンドやっている意味もないからやるんですけどね。

現在23時15分。よし、大阪に着くまでに書き上げることができました。乗客同士の喧嘩には驚きましたが、はるきちさんへの宣言は達成できたようです。あとは、家に無事に帰るだけです。良ければ、ガストバーナー1stフルアルバム『TAROT』聴いてみてくださいね。そこには、はるきちさんはじめ、加納さん、りっちゃんとの数奇な出会いからくる沢山の感情とヘンテコな化学反応の数々が詰まっています。感動は、そんなところから生まれてくるのかもしれません。

 

16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」一覧

 

◆Live Information

《ZOOZ》

2025.10.19 (日) 大阪 扇町para-dice
「ニューウェーブコンサート2025」
ZOOZ / Mrs.PoohScratchLove / RobotMeetRobo

2025.11.1 (土) 京都 木屋町DEWEY
DEWEY 14周年「I sway」
ZOOZ / ヨアケノユメ / Noranekoguts / NA/DA / ウサギバニーボーイ

2025.11.23 (日) 京都nano
Year After Year pre. 「Here to Everywhere Season 1」
ZOOZ / Year After Year / EAT NIGHT LUNCH / How to draw A castle / 藤山拓

2025.12.13 (土) 京都 木屋町DEWEY
「しあわせのつどい」
ZOOZ / ふつうのしあわせ / Pink Zaphod Magical Beeblebrox / SuperBack / / / sheeve / 中村響太郎(モラトリアム)
FOOD:喫茶室ラハト

《ガストバーナー》
2025.10.26(日) 名古屋・新栄CLUB ROCK’N’ROLL
YOWLL x WTSKZ 「CHILDISH TOUR」
ガストバーナー / YOWLL / WTSKZ / SHARON

2025.11.15(土)名古屋・新栄CLUB ROCK’N’ROLL
ANABANTFULLS pre. 「THINK & ROLL RELEASE TOUR」
ガストバーナー / ANABANTFULLS / the twenties

2025.12.7(日)周南 RISING HALL 他全2会場
「SHUNAN Orbit」
アルカラ / ΛrlequiΩ / UNFAIR RULE / ガストバーナー / 至福ぽんちょ
Chanty / ゼロカル / 月追う彼方 / パキルカ / BOYAKI / 丸竹夷
桃色ドロシー / 夜の本気ダンス / LOCAL CONNECT
空きっ腹に酒 / ジ・エンプティ / ビレッジマンズストア / ミズニウキクサ

〈ガストバーナー 1st Full Album “TAROT”ツアー〉
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