コントユニット・モノスグランデ小山耕太郎の「コラマず」第2回 ～私立恵比寿中学の難～
コントユニット・モノスグランデ小山耕太郎の「コラマず」
第2回「私立恵比寿中学の難」
私立恵比寿中学、通称エビ中。僕が唯一ライブに足を運ぶアイドルグループだ。
老舗のハロプロ、トップを駆け抜けるAKB系列、そこへ一石を投じる形で登場したのがももいろクローバーZ。全力パフォーマンスとあえてアイドル道を踏まないようにしてるかのような道のりを一気に駆け上がった彼女たちの妹分グループとして結成されたのが「私立恵比寿中学」である。
なぜエビ中が僕にとって魅力的なグループとなりえたのか、意外と考えたことがなかったので脳みそをぐるぐるさせてみた。まず、所属事務所であるスターダストプロモーションについてだ。この事務所は、柴咲コウや夏帆といった女優、または俳優がメインの事務所だった。
そのスターダストプロモーション所属の少女達がレッスンの一環としてアイドルグループを結成することになり、それが現在のももいろクローバーZとなった。つまり、本来はアイドルグループを育てるマニュアルを持たない事務所というわけだ。
これが一つ大きな要因となったはずである。つまり、魅せる力や切り開く力を止むを得ず付けなければならなかった為に、なんとか自分たちの居場所を探すため苦労を重ねる少女達の姿に、アイドルファンは感動した。日本人は好きなのだ。「おしん」みたいな感じが。
そうしてエビ中のお姉さんであるももクロは干からびた土地を地道に耕し、今の地位を得ることになる。しかし、エビ中にかせられた「ももクロの妹分」という肩書きは、実はあんまり効いていないのである。
ももクロファンがエビ中に流れてきたのは事実としてあるのだが、エビ中自身は先に書いた「おしん」的な系譜じゃない。あまりにもアイドルグループとしての質が違ったのだ。
僕は、エビ中を語るには「人見知り」を語らなければいけないと思う。そう、エビ中はむしろ、ももクロのアンチテーゼだった。
中でも、僕のアイドルに対する価値観を変えてくれたメンバーが鈴木裕乃だ。僕は鈴木裕乃のパフォーマンスを初めて見た時、絶句した。ライブ中のダンスでも他のメンバーが90度腕を上げている中、30度くらいで勘弁してください的な感じだし、他のメンバーが足をかかと落としくらい上げてる中、スネ蹴りくらいの高さまでしか上がっていなかった。なんだったら歌も不安定じゃないか。
本来ならここで、プロとしてどうなのかと疑問に思うことだろう。しかし実際は違った。そう、鈴木裕乃は体が異様に硬かったのだ。ライブ前に柔軟をしても、それでもなんとかあの感じだと知った時は妙に愛おしく感じた。
それだけではない。スタッフの裏話やレッスン映像、インタビュー記事を見ると、彼女の心の強さや裏での努力、葛藤をひしひしと感じとる事ができた。鈴木裕乃は、あきらかに他のアイドルとは違う意識をもっていた。
自分を可愛く魅せる事に力を注ぐわけでもなく、ももクロのような全力パフォーマンスをするでもなく、努力は人に見せるもんじゃないと言わんばかりに、細くて小さな体の中に溜め込んだエネルギーを精一杯スマートに、プロとしてパフォーマンスしていたのだ。
勝手ながらそう解釈した僕は、その瞬間から心を撃ち抜かれていた。その弾丸は、今でもブローチにしてポロシャツにつけている。いや、本当は付けていない。比喩だから付けていないのだ。
鈴木裕乃を語るのに長くなってしまったが、実は当時の9人体制のメンバーのうち、鈴木裕乃を含む、瑞季、杏野なつの3人が女優にこだわりたいという理由で昨年4月に脱退(転校)している。当然、スターダストプロモーションは女優を育てることには長けている事務所だ。こうなることも当然ではあった。
エビ中の魅力は、なんといっても楽曲の振り幅にあります。中学生を前面に押し出す元気な曲、恋愛曲、メッセージ性の高い曲、ゆったりとした染みる曲、最新アルバム「金八」に収録されている曲の中にはMステに出たい。という気持ちを歌った曲や、早弁ラップ、ソーラン節をモチーフにした曲まであり、常に挑戦しているアーティストであると言っても語弊はないかと思う。こういった、常に全方位的にアイデアを出しているという部分は、僕のコントへの考え方にも近いものがあります。進化を求めるより、変化を求める方が実は進化への近道なのです。
振り幅がここまであると、当然ライブでは観客を飽きさせません。これも大きな武器となります。また、握手会やツーショット会といったイベントも彼女たちの魅力を感じるアイテムなのです。
とにかくメンバー全員が可愛い。こんなこと言うと馬鹿みたいですが、僕はビジュアルレベルはアイドル界でトップクラスだと思っています。そして全員腰が低い。性格の良さが伝わってくるのです。
中でも新メンバーの小林歌穂はエビ中の革命児でもある。人見知りで構成されていたエビ中に、ついに人懐っこいキャラクターの血が入った。同時期に入った中山莉子は、本当に彼女に助けられたと思う。入学当初、中山莉子の顔の引きつり方は本当にすごかったのだ。基本の顔が、漢字の谷みたいになっていた。そこに屈託のない笑顔を振りまくる小林歌穂が入ることで、メンバーの転校、入学という大きな山を越えるためのチームワークがスムーズに生まれたのだと思っている。もちろん残ったメンバーも中山莉子も、精神的・肉体的な疲労を乗り越えた本当にカッコ良い女の子たちなのだ。
僕は、彼女達を尊敬しているのだと思う。応援というよりずっとその方がしっくりくる。青春を犠牲にし、涙をぬぐいながら、その小さな体を精一杯駆動させている彼女たちは、僕にとっていつまでも憧れなのである。
ちなみに僕は28歳。推しは中山莉子14歳。僕が14歳の頃、28歳の大人の心を動かせていただろうか？ 僕が14歳の時28歳だっだ人は、ペヨンジュンだ。
当時の僕は、ペヨンジュンの心を動かせただろうか。
モノスグランデ小山耕太郎
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