音楽ライター×地方誌編集者のフェス論’15~ONE TONGUE SUMMIT #1

LINEで送る
Pocket

SDRandCo (36)

ONE TONGUE SUMMIT #1
音楽ライター×地方誌編集者のフェス論’15

東京と神奈川を中心に音楽ライターとして活動している沖さやこと、福岡で情報誌の編集をし、エンタメ界に幅広く精通しているふくこと福島大祐が、タイムリーな音楽事情を語り合うコラム「ONE TONGUE SUMMIT」をスタートします。今回のテーマは「フェス」。「フェスは楽しいもの」を大前提としたうえで、四大フェスのうちのひとつであるROCK IN JAPAN FESTIVALの話題をきっかけに、近年のフェスを取り巻く動き、今後フェスに求めることや未来予想図などを語り合いました。みなさんは今後「フェス」がどうなっていくのが理想でしょうか?

 

◆RIJF、今年の焦点は――

:5月中旬にROCK IN JAPAN FESTIVAL(以下RIJF)の第一弾出演者が発表されました。個人的にはSUMMER SONIC以上に何が出ても驚かないフェスNo.1で、REBECCAの出演にもまったく違和感がなかったです。

Perfume

ふく:たしかにRIJFはいわゆるロキノン系から大御所、みんなが観たい人気者までが集うフェスで、4大フェスの中でも一番敷居が低いですよね。今年はアイドルがどれぐらいブッキングされるかに注目しています。昨年、単独でステージに立ったのが9nine、チームしゃちほこ、東京女子流、でんぱ組、前田敦子の5組だけで、他のアイドルたちは6組が1ステージにまとめられる×2日間というバランスでした。これが今年はステージの規模含め拡大されるのか縮小されるのか、ロッキング・オン目線でのアイドルシーンの現状の縮図になりそうです。ちなみに、Perfumeをアイドル枠として捉えない場合、今年の第1弾発表でアイドルは0でした。

:これだけ市民権を得たアイドル文化をどう取り込んでいくのか、ですね。個人的には米津玄師さんの出演が大きなトピックです。彼にとって初のフェス出演ですし。去年のRIJFはVOCALOIDクリエイターが在籍するバンドがすべて、昨年DJ BOOTHから変貌を遂げたBUZZ STAGEでのアクトだったので、彼がRIJFに参加することで、そこが少し変わってくれたらいいなと期待しています。あとは、近年tofubeatsのような若きトラックメイカーたちの音楽が面白いと思うので、いちリスナーとしてはその界隈のアーティストがBUZZ STAGEをジャックするくらいだと痛快で嬉しいかな。BUZZ STAGEは今年は方向性が定まるのかな?というところも気になってますね。

米津玄師『YANKEE』(2014)

ふく:ボカロやネット発クリエイターで言うと、米津玄師は人気から見てもSOUND OF FORESTぐらいのステージが相応しい気がします。以前カラオケに行ったときに、全国でどれぐらいの人数がその曲を歌っているかが画面に表示される設定だったんですけど、米津玄師の【ゴーゴー幽霊船】はきゃりーぱみゅぱみゅのシングルと同じぐらいの回数歌われていましたからね。その場にいたアラサー集団は誰も知らないのに(笑)。若い世代に相当支持されているんだろうなと実感しました。あとはヒトリエも昨年は出演していますね。個人的にはこの手の音楽にあまり精通していないので、見本市のようにステージが固められても違和感はないかなと思っています。

:CD棚みたいにジャンルでかためられちゃうと、探しやすいぶん新たな出会いが少ないのが歯痒くて。先入観なく見られるステージ割だといいなあ……と思います。あと、JAPANは影響力がトップの媒体で、ここ数年はRIJFに出る/出ないでアーティストがいい悪いを判断する人もいるくらい、かなりブランド力が強くなっているなと思っていて。わたしはその風潮がどうも喜べなくて。フェスに出ていないいいバンドはたくさんいるし。でもJAPANやRIJF、COUNTDOWN JAPANにヴィジュアル畑出身のPlastic TreeやDIR EN GREYが出るようになって、そのバンドたちに理解を示すリスナーが増えてきたという事実もあるので、決して悪い影響だけではないんですけども。……でも出演者発表があるたびに合格発表みたいな感じで、その現象には違和感しかないというか。出られたフェスの本数=アーティストの価値、みたいなのもあるし。

ゲスの極み乙女。

ふく:僕はRIJFのラインナップやステージ割はある程度フラットに楽しんでいます。ゲスの極み乙女。やキュウソネコカミなんて去年はPARK STAGEですからね。今年は、特にゲスは一番大きいGRASS STAGEに出たってまったく不思議じゃないでしょう。フェスにいくつ出た、なんのフェスに出たとかで評価をしているのは、むしろファンよりもアーティスト側(事務所側)のような気がします。CDリリース時のプレスにも「フジロック○○ステージ出演!」とか「○○フェスで入場規制!」とか打ち出しているアーティストも多いですし。以前インタビューした、邦ロック好きなら誰もが知っている中堅バンドのフロントマンに「去年○○フェスで観たんですが、今年は出ないんですね。残念です」という旨の話をしたら、「いや、出たかったんですよ。“今年も出してくれ”って言いましたから」と話していたのが印象的で。そのバンドぐらいでも“選んでもらう”立場なんだなと。

:ああー。そうなんですね。中堅バンドぐらいの規模になると、運営側にしてみるとギャランティの問題も出てきそうですし。ふくさんの言った「アーティスト側のほうが意識してる」は言われてなるほど~と思いました。それがリスナーにまで伝染してるのかもしれないですね。

ふく:CDが売れなくてビジネスがライヴ中心になっている音楽マーケットの中で、フェスは大多数にアピールできる絶好の機会だから「とにかくフェスに出たい」というアーティストが増えてそうですよね。それではフェスにコンセプトや物語がなくなっていくし、フェスの均一化に繋がりそうです。ただ、似たようなラインナップのフェスが増えてきた=地方のフェスに行ってもある程度人気者が観られる、というメリットもあって。僕は福岡在住なので、大物バンドも観られる山口県のWILD BUNCH FEST.なんてとてもありがたい存在なんですよ。

:フェスの均一化は否めませんが、ふくさんのおっしゃることも勿論ですし、サーキットフェスには全国流通してないアーティストも出演するチャンスがあったりと、地方ならではのメリットがあると思います。なのでコンセプトに、その土地を生かしたものがあるフェスが強いと思います。土地を味方にできるかどうかが鍵だなと。

>> “おもてなし”精神が大事?

LINEで送る
Pocket

1 2 3
Tags:,