ニュースサイトはなぜアーティスト公式よりも“情報解禁”が早いのか
よくTwitterなどで、自分の好きなバンドの重要な発表を、公式アカウントよりも先にニュースサイトで知って嘆いている方々をお見かけします。「確かにそうかー。わたしも友達の結婚とか、友達の友達から聞いたら嫌やもんなあ。本人から直接聞きたいもんなあ。自分の大好きなバンドの情報は、いちばん最初にそのバンドから直接聞きたいよなあ」と思いました。公式アカウントからの発表よりもニュースサイトが先に発表したときに「フライングや!」と腹を立てている方々も見かけますが、そこにはちょっと反論したい。ニュースサイトさんはフライングではなく、時間を秒単位で守っているだけなのです。というわけで今回は情報解禁にまつわるコラム。アーティストの重大発表はどのように世間に公表されるのか。その仕組みをちょっとだけお教えしましょう。
◆
アーティストの告知情報は、事前にアーティストサイドからメディアへ、主にメールで送られることが多いです。そのメールをプレスリリースといいます。ニュースサイトにはプレスリリースが毎日じゃんじゃん届きます。
プレスリリースをデモンストレーションしたものがこれ(内容はフィクションです)↓
こちらを見ていただければわかるように、解禁時刻の記載がありますよね。これは言葉の通り情報を解禁していい時刻、すなわち「この時間になった瞬間にこの情報を出していいよ」ということです。
ニュースサイトはこの時刻をみっちり守ってらっしゃるんです。18時解禁なら18時になった瞬間、18時00分00秒にアップします。なぜなら、ニュースサイトは鮮度が命だからです。ニュースサイトはXX時XX分00秒にアップすることが専門分野ですが、アーティストサイドは時刻きっかりにアップするニュースサイトほどのスキルはお持ちではないので、どうしても18時00分10秒、もしくは同時刻の40秒、たまには18時01分や03分になることがあります。ここで解禁時刻のタイムラグが出てくるのです。
だからニュースサイトはフライングではない。アーティストサイドの告知が一歩遅いだけなんです。
とはいえファンの方々の立場からすると、アーティストの大事な発表はいちばん最初にアーティスト公式から聞きたいですよね。だからわたしはアーティストサイドさんに、アーティストサイドの解禁時刻とニュースサイトへの解禁時刻をずらすことを提案したいのです。
たとえばアーティストサイドが「明日18時にお知らせがあります!」と言えば、ファンの方々はその時間にスタンバるでしょう。その場合、ニュースサイトに送るプレスリリースの解禁時刻を18時15分にしてみたらどうでしょうか? 18時に発表しているのはそのアーティスト発信のものだけになりませんか? その告知が18時00分40秒だとしても、アーティスト発信のものがいちばん最初の発表になります。これなら「公式より先にニュースサイトで知ってしまった!」と嘆くファンの方々が減るのではないでしょうか。これを実行してるアーティストはたまにいらっしゃるんですけど、とはいえあまり根付いてない気がします。
ライヴで重大情報を告知するアーティストは多いですが、大体が「◯時解禁だからそれまでつぶやかないでね。この会場の人だけ特別だよ」というものだと思います。でも一例として空想委員会のニュース告知のやり方はちょっと面白くて、ライブで情報を発表するのは珍しくないにしても、ライブ中に「ライブが終わったらその情報をSNSで広めて」と言い、ニュースサイトよりも早くファンの方々の告知で広める方法を取っています。それはバンド側の「ひとりひとりが発信者になってほしい」という想いです。
これだけネットが普及した世の中で、ネットを切ってプロモーションや活動をするのは不可能です。だからこそ人の心を無視してはいけないなと思います。ニュースサイトはニュースサイトとしての使命を全うしているだけなので、ニュースサイトに空気読めと言うのは少し違うかなと。同じタイミングでないといけないこともあるのかもしれませんが、出来る限りはニュースサイトより先にアーティスト公式が発表したら、ファンの方々も喜べるのではないでしょうか。
余談ですが、プレスリリースには「即日解禁」というものもあって、それはもう公開してOKですという内容。このパターンの場合は、どこよりも早く公式が発表していることが多いです。(沖 さやこ)