沖 丈介の「おききになって!」第2回 ~Britney Spearsの巻~
沖 丈介の「おききになって!」第2回
~Britney Spearsの巻~
イラスト・文:沖 丈介
ワンタンマガジンではライターとしても活躍中の手タレ/モデル兼劇団員の沖 丈介の不定期連載コラム「おききになって!」。このコラムは「キャリアがあるアーティストの音楽を聴きたいけど、どこから聴けばいいのかわからない……」という方々の背中を押すのがコンセプトです。これを機に思い切ってそのアーティストにどっぷりのめりこんでみてはいかがでしょうか? キャッチーなテキストでオリジナルアルバムをリコメンドします。第2回目のアーティストは「Britney Spears」です。
◆Britney Spears(ブリトニー・スピアーズ)
90年代を生きた人で、彼女の名前を知らない人はいるの?というぐらい、世界のポップス界を牽引してきたポップスアイコン。デビューはアイドルの登竜門的存在のディズニーチャンネルで、同番組の同期は、今も第一線で活躍するJustin TimberlakeやChristina Aguilera等。
Britney Spearsは特別声量があるわけでも、喉が強いわけでも、通る声質なわけでもないのですが、それを補って余りあるのが「サイボーグヴォイス」と称される独特な歌声と、時折舌の粘りを感じさせるいうなネットリした歌唱方法を挟んでくるところ。そして何よりデビュー当時から曲の聴かせ方がズバ抜けて上手いんです。彼女のような聴かせ方、というか“煽り方”は彼女の唯一無二の個性だと思います。曲中での自分と聞き手との距離感の取り方が上手で、一曲の中で耳元で煽るように歌っているようなパートもあれば、背を向けて聞き手から離れながら歌っているようなパートもあったりと、一曲の中で様々なヒット・アンド・ランをするのが、彼女の一番の持ち味だと思います。
子役時代からショービズ界のトップで輝くものの宿命、というようにゴシップが後を絶ちませんでしたが、特に結婚して子供を産んでからの私生活の乱れっぷりと問題行動(パパラッチへの暴行、衝動的にスキンヘッドにする、Palis HiltonとLindsay Lohanの悪友たちとパーティー三昧、ノーパン姿をパパラッチされる等、他にもたくさん)でのネガティヴなイメージ、そして人気低迷を迎えるも、「息子たちのためにも立ち直らなければ」と気持ちを切り替え再スタートを切り、見事アルバム『Circus』で商業的にも完全復活。第二次全盛期を迎えてから今に至るまで、常に世界を賑わせてくれるエンターテイナーとして活躍しております。
余談ですが、ブリちゃん、かなりキレのあるダンスを踊れる、柔軟性に富んだ体を持っています。Madonnaとのコラボ曲【Me Against The Music】でのMJライクなダンスは必見ですよ!
★Jyosuke’s Recommend
『Femme Fatale』(2011年)
自分でも「ひねりがない!」と思う選抜なのですが、現行ポップスとブリちゃんの良さを併せ持った入門にピッタリな作品、と考えると、ここに着地してしまうのは致し方ない……というぐらい、ブリちゃんの押さえるところを押さえたアルバム。程よくブリンとしたエレクトロサウンドを混ぜ込んだ、ダンスライブ感溢れる【Till The World End】と【Hold It Against Me】、なんとも言えないダサさが最高にノレるエレポップの【I Wanna Go】(ちなみにシングルジャケではガイコツのミッキーがプリントされたシャツをブリちゃんが着ているという攻めっぷり)、Will.I.Amの大ヒット曲でブリちゃんが客演参加した【Scream & Shout】の前身的な楽曲で、Will製のー幾何学的なサウンドの中で美しいアンドロイドが歌っているような世界観の【Big Fat Bass ft.Will.I.Am】、そしてラストを飾るのが、MVは強盗カップルのBonnieとClydeがモチーフの、哀愁めいたギターが印象的な【Criminal】という、隙のない作りがニクい一枚。
★Pick Up
『Blackout』(2007年)
冒頭で書いたどん底時期の作品で、売り上げ的にはブリちゃんの中では失敗作とも言われてしまっているアルバムでもありますが、彼女の現在のキャッチコピー的な存在にもなっている「It’s Britney Bitch」のフレーズを世に送り出したバウンシーな楽曲【Gimmer More】を始め、ダークなビタースウィートサウンドでまとめた意欲作。このアルバムを出した時期とアルバムの作風を合わせて考えると、彼女のスタッフ陣も情勢をしっかり考えて作ったのかな、という印象もあり。ちなみにこのアルバムの後にリリースしたアルバム『Circus』でカムバックを遂げ、笑顔がとびきり可愛い息子二人が大好きというファミリー向けの人気アニメ映画『スマッフ』の主題歌【Ohh La La】を担当するほどにイメージも回復しました。それもこのアルバムが良いアク抜きになったからかも?
『Britney』(2001年)
脱アイドルでセクシー路線へ向かった作品。当時の恋人だったJustin TimberlakeがプロデュースチームのThe Neptunes(Pharrell Williams在籍)とブリちゃんを引き合わせた、ブリちゃんのターニングポイント的な存在のアルバムでもあります。ブリちゃんのネットリした歌声をジットリ聴かせてくれるアーバンポップな【I’m a Slave 4 U】、人気コメディー映画『オースティン・パワーズ ゴールドフィンガー』の挿入曲で、シンプル&ミニマルなサウンドがシニカルな【Boys ft.Pharrell】(映画にはブリちゃんもカメオ出演。そしてMVには主演のMike Myersがカメオ出演返し)等、無理なくブリちゃんの持つセクシーさを引き出したThe Neptunes製の楽曲たちが今なお光る名曲揃い。ちなみに大コケしたブリちゃん主演映画と同タイトルの主題歌【I’m Not A Girl,I’m Not A Woman】も収録されています。そしてセクシー路線にシフトチェンジしつつ、程よくまだそれまでの可愛げを残してる辺り、抜かりがありません。
※そして今回は番外編! ブリちゃんと言えばやっぱり奇抜で過激なヴィジュアル。丈介さんにベストMVを紹介していただきました! 次ページをチェック→