ビレッジマンズストア『正しい夜明け』

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MINI ALBUM(CD)
ビレッジマンズストア
『正しい夜明け』
2016/11/09 release
SPACE SHOWER MUSIC

耳を劈く爆音と、男気溢れる激情が暴れ狂う約2年半ぶりの新作

 

真っ赤なスーツの5人組、ビレッジマンズストアの約2年半ぶりとなる新作。2年半という期間、2015年はフロントマンの水野ギイが重度の椎間板ヘルニア、腰の不調からくる足の痛みと麻痺という症状のため緊急手術をし、一時期は水野不在でライヴ活動を行い、ゲストヴォーカルを招いたステージを披露をするということもあった。そんな逆境とも言える状況を乗り越えた5人の出す音は、以前以上に粘り強さが増した。前作以上にやかましいんじゃないかと思うほどにソリッドでキレがある。弱い部分もさらけ出してがむしゃらに走るような焦燥感。かっこよくあろうとするという虚勢から解き放たれたような印象だ。それゆえに、どの楽曲でもひとつひとつ素直に感情を吐き出せているのではないだろうか。溢れて止められないというほどに、彼らの激情や義理人情に厚い優しさや心意気が十二分に感じられる。

溢れて止められない音像ゆえ、この作品はできるだけCDで聴いたほうがいいと思うし、できるだけ大きな音で聴いたほうがいい。イヤホンなんて小さいスピーカーで抑えきれるものではないのだ。M2【WENDY】のMVなんてまさしく、イヤホンのなかから彼らの音楽が飛び出してしまう演出だから、彼らの爆音感をものすごくわかりやすく表現しているなあと感心した。と思ったらこのMVの監督は加藤マニ氏。さすがである。


ビレッジマンズストア “WENDY” (Official Music Video)

【WENDY】もぶん回すようなロックンロール×ガレージパンクなサウンドだが、特にM5【僕を撃て】はすべての楽器隊に見せ場がある目まぐるしい展開に、水野のしゃがれた絶叫が炸裂するゆえ、5つの爆竹を同時に食らうような感覚のサウンドスケープだ。M7【PINK】はそれ以上に、喜怒哀楽をすべて発散するような全速パンク。M3【スパナ】は全員が一丸となってひとつの音を出すような硬派な印象があるため、熱くてクールな音像が心地よい。M1【ビレッジマンズ】は太いドラムが作るビートと艶のあるメロディが自然と腰を刺激するビレッジ流ダンスナンバー。細かいギミックが随所で効いたベースがキュートだ。M6【帰れないふたり】はポップナンバーで、ちょっとシニカルな歌詞も軽快に響く。特に存在感を発揮していたのは、ブルージーなミディアムテンポのロックバラードであるM4【盗人】。夕焼けが目に浮かぶような音像で、男性ならではの強がりやセンチメンタリズムが滲む。自然とポケットに手を突っ込んでゆっくり歩きながら歌う水野の姿が思い浮かんだ。アルバムの真ん中にバラードが入るという構成も、CDバカ売れ世代のわたしにはたまらない。

とにかく大きな音で聴いてほしい。そうすると最も適している場所は、やはりライヴハウスだと思う。ビレッジマンズストアの場合、CDは作品という意味以上に、ライヴへの招待状のような気がするのだ。最初から最後までずっと「俺たちいまこんな音鳴らしてるんだ。今度お前の街でライヴするからさ、もし良かったら来ない?」と語り掛けられ、手を差し伸べられているようだった。今作から彼らは着の身着のままで体当たりすることを決心したのではないだろうか。ライヴハウスは誤魔化しのきかない場所。彼らはさらに勇姿やを見せ、我々と心を通わせてくれることだろう。(沖 さやこ)

 

◆Disc Information

Amazon:ビレッジマンズストア/正しい夜明け

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