空きっ腹に酒ゆきてるの「酒でも飲まなきゃやってられん」第3回~すっかり冬なので
空きっ腹に酒ゆきてるの「酒でも飲まなきゃやってられん」
第3回 すっかり冬なので
すっかり冬なので鍋でもしようか、といって最近は一人鍋セットみたいなのもよく売られていたりしますが、やはり鍋なら大勢とは言わずとも三人か四人程度で囲んで食べたいじゃないですか。で、鍋でもしようよって誘うと必ずそれを
「鍋パね」
と言い換えるんですよ、友人が。その度に僕ぁ後頭部がぎゅーーんと熱くなって
「パああああああああ!」
と言いながら右頬ないしは左頬に平手打ちを一発お見舞いしてやりたくなるんです。いや、実際にはしませんよ。負けますもん。してやりたくなるということです。
あのね、いやね、僕の言う「鍋でもしようよ」と「鍋パしようよ」では同じ鍋でもまったく意味が違ってくるということにお前らは一体いつ気付くんじゃこのカボチャ人間共があああ!って怒りが込み上げて来るんです。というのも「鍋パ」のパってパーティーのパなわけじゃないですか。でも僕はね、鍋がしたいんであってパーティーがしたいわけじゃないんですよ。あくまで鍋が主体でそれを囲むことによって他愛もない話で盛り上がれたらええねってことがしたいのに、それにパみたいなくだらんもんを付けることによって、鍋もするパーティーみたいな、パーティーが主体になってくるからそこがムカつく。
鍋ってのは特別豪華な材料を用意しなくても、例えば豆腐と白菜だけでも、囲めば自然と心の通いが生まれるとてもありがたく温かい食事なのです。そりゃカニ鍋、てっちり等々豪華な鍋は沢山ありますけど、湯豆腐だって立派な鍋で、それを囲み酒を飲み話す。中身が何であろうと身も心も温めてくれるのが鍋なんです。そんな鍋にわざわざパみたいなもん付けて騒々しくしてんじゃねぇぞこのスカタン!っていう旨をくどくどLINEで友人に伝えたら
「でも、どっちにしろ会えるんだし良いんじゃない? 楽しみー!」
と返信がきて、僕も鍋パに参加することになった。楽しみー!
まぁ、しかしこの僕のパーティー嫌いはバンドを始めた頃からずっと続いていて、今年はもう終わりましたがハロウィンなんかもそうだし、あとはクリスマスも心の底から楽しんだりイベントに参加したりした記憶がないんですね。でも例えば友人の結婚パーティーなんかは大変楽しみますし心の底から祝います。大切な人の誕生日パーティーなんかもやはり同様に。酔っぱらってやりすぎて
「頼むから帰ってくれ。俺の誕生日や。お前のじゃない。」
と言われたこともあるくらいです。自分に関係のある行事なら全然楽しめるんです。
でもね、クリスマスとかハロウィンって直接自分に何の関係もないじゃないですか。単なる「はしゃぐきっかけ」に過ぎず、冷静になって考えてみれば全く自分とは何の関係もない行事だということに気付いて、その瞬間もう全然楽しめなくなるんです。
で、特に近年顕著になってきたんですが、ハロウィンやらクリスマスを楽しめない勢の声が世間によく届くようになったなと思っていて、それはやはりSNSが復旧したからなんだろうけど、色んな工夫をこらした文章でなんとか行事を楽しむ人間を貶めてやろうとしているのがとても面白かったりします。極端に鬱屈した言葉をおもしろおかしく書いているのを見ると思わず笑ってしまいます。
でも多分その人たちはその人たちで行事を「楽しまない」という楽しみ方で過ごせているんじゃないでしょうか。仮装したりケーキを買って食べたりプレゼントを交換したりするわけではないけれど、それらを全て否定するような文章をツイッターに載せることによって行事を楽しんだ時に得る幸福度と同じ程度のカタルシスは得られているんじゃないかと思うんです。勿論人を傷つけるような書き込みは良くないことだとは思いますが
「クリスマス終了しろ」
程度のことだったり
「クリスマスにラブホだけ停電してカップル全員凍えとけ」
レベルのくだらないジョークを書き、そこに共感した人同士で笑い飛ばす。
多分ほとんどの「楽しまない勢」が誰かといちゃつきたいというよりは「何か面白いことを書いて皆に認めてもらいたい」という思考に切り替わってきていると思うんですね。それって一見不健康ではありますけど、ちゃんと捌け口があるだけまだマシな気もします。
で、そんなことを書いていたらなんだか自分まで鬱屈組の人間だと思われそうで嫌なので、そんなことないんだということを証明するべく今回はちょっとハッピーなお酒を飲もうと思いまして…用意しましたのはまさかのシャンパンです。
シャンパン。普段ならまったく手を付けないお酒です。他人が奢ってくれたり、強制的に配布された場合でないと飲んだことないかもです。どこか特別な空間でないと飲まないイメージがありますよね、シャンパンって。でも調べてみると実は意外と色んなツマミに合うらしく、おでんとシャンパンとかもイケるって書いてましたよ。ホンマかいな。おでん屋さんで食前酒としてシャンパンを提供してくれるお店もあるみたいですよ。なかには餃子なんかも書いてましたね。餃子…と言えばやはりビール!といきたいとこだと思うんですが、あくまで合う合わないの話ですからね…。でも餃子はさすがに嫌かなぁ(笑)
しかしこれも日本酒同様イメージが先行しがちではありますが、確かにスッキリして飲みやすいのでとんだパリピ野郎のお酒と言うよりは「特別な日に集まった様々なタイプに人たちが皆飲めるように」と考えられたとても優しいお酒なのかもしれませんね。それなら色んな食材に合うということも頷けます。自分は鬱屈組なのでシャンパンを飲んでいる場合ではないのだ!などと端から決めつけていたら、この優しさには気づけなかったかも知れません。いや、誰が鬱屈組や! 鍋パ行くような人間やぞ、わしゃ!
と言いつつ、普段滅多に飲む機会も無いので今回はスタンダードにチーズやらサラミをコンビニで買ってきました。げへへ。コンビニで買うツマミって美味しいよね。一番安いツマミのワンランクだけ上の値段の奴がとても好きです。ちょいとした贅沢。げへへ。
ああ、美味しいですねシャンパン。
というわけでとても飲みやすくスルスルと入っていくため自分でも何杯飲んだか忘れてしまいました。シャンパン。
…翌朝、僕はとんでもない頭痛でしばらく起き上がることすらできないんですが、それは優しさに甘えすぎた結果だということで受け止めることにします。
鍋パしてきます。さよなら。
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