やるからには結果を出したい――The;Cutleryが飽くなき挑戦のなかで掴んだ「生きる意味」

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thecutlery202202_1やるからには結果を出したい
The;Cutleryが飽くなき挑戦のなかで掴んだ「生きる意味」

[L→R]
福島裕太(Gt)
一二三ふみを(Vo/Gt)
Pino(Dr)
中山真之介(Ba)

 

いつなんどきも、結果を出すのは行動を起こした人間だ。このバンドも例外ではないだろう。
東京を拠点に活動するThe;Cutlery。2016年に結成後、より良い作品の実現と音楽を楽しむことを重点に置き、著名な映像作家とタッグを組んだり、クラウドファンディングやカメラを複数台用いた無観客配信ライブなど、濃度の高い活動を精力的に続けている。2021年はコロナ禍を逆手に初の自主企画ライブ「生きづらい;あなたへ」を4ヶ月連続で開催。空想委員会やaquarifaといったメンバーの尊敬するバンドや、AliAやMOSHIMOといった実力派、雨のマンデーズや明くる夜の羊といった同胞をゲストに招き、全4回で異なる趣のライブを見せた。
バンド史上最大規模のイベントを終えた4人は、現在どんなビジョンを見据えているのだろうか。これまでの歩みと「生きづらい;あなたへ」を振り返りながら、バンドの実態に迫っていった。

取材・文 沖 さやこ
撮影 TAMA @tm_livephoto

 

thecutlery_aphoto◆The;Cutlery(かとらりー)
2016年結成。一二三ふみを(Vo/Gt)、福島裕太(Gt)、中山真之介(Ba)、Pino(Dr)の4名によるバンド。ユニセックスな風貌と浮遊感のあるサウンド、ボーカルふみをの繊細かつエモーショナルな歌声、英語詞を用いて表現する世界観が特徴。好きな音楽ジャンルの異なる4人が感覚的に作ったサウンドは、シューゲイザー、ポストロック、UK系バンドとして呼ばれるようになり、激しいパフォーマンスからライブバンドとしても定評がある。 2016年12月、フジテレビパラスポーツ応援番組PARA☆DO!にて楽曲「and loop」がコラボ挿入歌として公開。2017年12月、映像作家青木亮二(logfilm)のディレクションによる初MV「no regret」を発表。2018年1月、1stミニアルバム『water; fall』をリリースし、同年11月に映像作家小嶋貴之がディレクションを務めるMV「Snow Bright Syndrome」を発表。2020年4月に残響レコードから1stフルアルバム『water;echo』をリリースし、夏と秋に無観客配信ワンマンを開催。2021年9月からは自主企画ライブ「生きづらい;あなたへ」を4ヶ月連続で開催する。
(Official : website / Twitter / Instagram / Facebook / YouTube

 

◆このバンドは「部活に本気で取り組んでいる」というスタンス

――The;Cutleryは2016年結成とのことですが、それ以前にも物語があるそうですね。

福島裕太(Gt) ふみをさんと僕が高校の同級生なんです。2年間同じクラスで。そんなに仲良くはなかったんですけど……。

中山真之介(Ba) 仲良くないんかい(笑)。

一二三ふみを(Vo/Gt) わたしは福島くんのことが大嫌いでした(笑)。

Pino(Dr) わかる~。わたしも大嫌いだった(笑)。

――福島さんの第一印象は良くなかったと(笑)。

一二三 高校2年生のときの調理実習で……。グループを組むときに、わたしはあぶれちゃって。まあいつものことだから気にしてなかったんですけど、わたしを含めた3人があぶれているのに気付いたクラスの目立つ女子が「福島、あそこ人数足りないから入って!」とグループが決まっている福島くんを無理やりぶち込んで(笑)。そんな寄せ集めのメンバーでピザを作ってたら、福島くんと女子ひとりが料理バトルみたいなのを始めたんです。「俺のほうがうまいし!」とか言い合ってて……それを見ていて嫌悪感が生まれました(笑)。

thecutlery202202_2

The;Cutlery
L→R 中山真之介(Ba)、Pino(Dr)、一二三ふみを(Vo/Gt)、福島裕太(Gt)

――そこからどんなふうに縁が深まったのでしょう?

福島 高校3年生のときに仲が良かったクラスメイトから、「女子が渡り廊下で歌ってるから見に行こう」と言われてついていったら、その女子のバックでギターを弾いていたのがふみをさんだったんですよね。ギターのうまさに感動して、もう部活も引退して暇だったから「ギター教えて」と頼んだんです。

一二三 そう頼まれたので「仕方ねえなあ」と(笑)。

福島 放課後に教えてもらうようになって、ふみをさんが歌っているのを初めて聴いて「歌もすげえうまいしかっこいい!」と思ったんです。高校卒業後に大学で軽音楽部に入って、そこでふみをさんを誘って、僕の大学の同級生のベーシストとドラマーでバンドを組んだんですよね。

中山 それがThe;Cutleryの原型って感じ?

福島 そうそう、前身バンドの前身バンド。そのバンドで「閃光ライオット」にも応募しましたね。でもドラムの子がフェードアウトしたので、そこで同じ軽音楽部のPinoさんに声を掛けました。

――Pinoさんはさきほど福島さんのことをお好きではなかったとおっしゃっていましたが(笑)、なぜ加入を?

Pino 福島くんはそんなに仲がいいわけではなかったのにめっちゃ関わってくるからウザいな~という空気を全力で出してたんですけど伝わらずで……(笑)。音楽の趣味もそんなに合わないけど、ドラムを叩く機会があるのはいいことかなと思ってOKしました。

thecutlery202202_3福島 僕は仲いいと思ってたんですけどね……(笑)。それで前身バンドとして動き出しました。でもライブをしたいけどライブハウスでライブをする方法がわからなくて、ひとまずいろんな音楽事務所の「音源募集」からデモを送るようになって。そしたらとある事務所から返事が来たんです。結局所属はしていないんですけど、それをきっかけに「せっかくだからちゃんと活動したい」という話でまとまったんです。そのタイミングでベースの子が抜けてしまって。それで同じ軽音楽部のあやさんを誘ったらOKをもらえたんです。

――それが2016年。The;Cutleryとしてのスタートが始まるということですね。ということは、送ったデモに入れたオリジナル曲が「生きづらい;あなたへ」のファイナル公演のラストで披露していた「いちばん最初に作った曲」ですか?

福島 そうです、そうです。あの曲をきっかけに曲作りをするようになって、ライブハウスでライブをするようになって。そしたらいろんなお客さんから「音源を出してほしい」と言ってもらうようになりました。知識がなさすぎて、音源のリリースも事務所に所属してからやるものだと思ってたんですよね……(笑)。それで2017年にちゃんとした盤を500枚作って自主で無料配布したんです。その年に初MVも公開しました。

――「no regret」のMVですね。映像作家の青木亮二さんがディレクションなさっています。

福島 2018年の1月に『water;fall』をリリースすることが決まっていたので、映像関係の仕事に就いた大学時代の友達にどうやってMVを作ったらいいか相談をしたんです。そしたら青木さんのことを紹介されて、その縁で撮っていただいたんです。


The;Cutlery「no regret」(from 1st mini album “water;fall” )

――お話を聞いていると、なかなか独特な歩み方をなさっている印象があります。

Pino もともとわたしたちは「○年でプロになる」とかそういう目的でバンドをやっていなかったので。楽しいことがしたくてバンドをやっていたんです。

福島 「部活に本気で取り組んでいる」というスタンスなんですよね。高校球児も全員が全員プロを目指しているわけではないけど、甲子園は本気で目指しているじゃないですか。それと似た感覚です。バンドで食っていきたいからバンドをやっているわけではないけど、やるからにはちゃんとやりたいし、結果を出したい。だからここまで続けてこれているのかもしれないですね。ただ、4人の音楽の好みがバラバラなので、CDを出すまでは遅いです(笑)。

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ベーシストの交代と残響recordへの所属で、楽曲の振れ幅が広がったThe;Cutlery。4人が目指す音楽の根幹を探る

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