16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」第23回~後悔とライブハウス

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16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」
第23回 後悔とライブハウス

 

[1] 親族をライブに呼んでみた

「すごかった! すごかった!!! 内臓が揺れた!! すごかったわぁー!!」

僕はこの日、初めて親族をライブに招待しました。亡き母の妹二人、僕から見て叔母にあたる二人をライブに誘いました。それは、2026年2月7日、ガストバーナー“TAROT”リリースツアー神戸編、“太陽と虎”での出来事です。

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そもそも「ライブハウス」という場所に来たことがない二人を、こんな爆音バンドのライブに呼んでもいいものか。気が付いたら甥っ子が「16ビートはやお」なんて呼ばれていることをどう感じているんだろうか。いい年齢で未だにこうしてライブを続けている僕を、どういう風に観ているんだろうか。

色々と思いを巡らせてはいましたが、「母にライブを見てもらうことが叶わなかった」という後悔が、僕を動かしました。呼ばないことのほうが圧倒的に後悔するだろうと結論を出して、叔母に声をかけてみたのです。

そうして「初めてのライブハウスだから、何時に行けばいい?」とか、「どうやって入ったらいいの?」とか「他の方が演奏しているときに中に入っちゃいけないかな?」とか、幾つもの初ライブあるあるを乗り越えて、ライブハウスに入場してもらったのでした。

ライブ後に叔母に声をかけてみると、「すごかった! すごかった!! すごかったとしか言葉にできないけど、すごかった!」と興奮気味に話してくれました。僕も意外と言葉は見つからず、「ありがとうね!」くらいしか言えませんでした。

自己満足ではありますが、僕は、叔母に「初めてのライブハウス体験」をプレゼントできたのです。今回のコラムは、少し特殊。「後悔とライブハウス」に焦点を当ててみたいと思います。

叔母をライブハウスに招待できたのは、後悔しないために取った行動ではあったのですが、この日の“太陽と虎”には、僕にとっての「後悔の結節点」が、幾つかありました。

 

[2] 還らぬ見栄を張ってしまった

先ほどちらっと書きましたが、僕は母にライブを見てもらうことが叶いませんでした。それは僕の見栄と甘えのせいです。「せっかく見てもらうんだから、たくさん人の居るライブハウスに招待したい」という見栄と、「母はいつまでも元気で生きているだろう」という甘えです。

自分の見栄を達成する前に、母は亡くなりました。どれだけ現実を認識できていても、母が亡くなるなんてことはないと、僕はどこかで思っていた節がありました。母が病床に伏していても、強い母ならきっと快復するはずだと、どこかで根拠なく信じていたように思います。結局、母は亡くなり、ライブハウスでライブを見てもらうことは叶いませんでした。

そうすると、残るのは後悔です。母親は癌が判明して1年くらいは自宅療養していましたが、仕事がなくなると暇を持て余してか、僕のバンドの動画を見漁っていたみたいです。母はMVにコメントを投稿しては、恥ずかしくなって数日後に自身でコメントを消していたのを、僕は見逃しませんでした。けれどそのことを母に伝えるわけでもなく、シャイでクールな母らしい出来事として胸にしまっていたのでした。

自宅療養する母と会うたびに、「まぁ、元気になって、足も良くなったらライブ見に来てよ!」と決まり文句のように話していた僕でしたが、今思えば、その言葉の裏には「絶対に回復してライブに来てほしい」と、半分くらい勝手な意地のような部分もあったように思います。

意地も見栄も張らなきゃよかったなぁと思いますし、甘えももっと早い段階で自認できていればなぁ、と今更思います。

その後悔から、先述の「叔母をライブハウスに招待する」という動機に繋がるのですが、叔母がライブ後に話した「生で見て、初めて音で内臓が揺れるのを感じた」という言葉に、「母がこの場に居れば、同じことを感じていたのかなぁ」という考えが脳裏を掠めたのでした。

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[3] 干支を一周して成仏する

「後悔とライブハウス」という言葉が今回のコラムの軸なのですが、2026年2月7日のライブハウス“太陽と虎”には、まだ幾つか後悔からくる出来事が詰まっています。

ガストバーナーのライブ本編が終わると、ありがたいことにお客さんからアンコールの拍手が起こり、僕が先陣を切って登場し、小噺的なMCをすることになりました。僕は、つらつらと「今日で体の半分が成仏しました」と話していたのでした。

この日はジラフポット、コンテンポラリーな生活、ガストバーナーという、平成から頑張って活動をするバンドマンが邂逅する一日だったのです。(一応、ガストバーナーは令和生まれのバンドですが。)

ガストバーナーを始める前から大阪でEmu sickSというバンドで長年活動をしていた僕は、過去にジラフポットやコンテンポラリーな生活とも対バンしたことがありました。

けれど、当時の僕は尖っていて彼らと仲良くなりませんでした。いや、少し違います。「尖っている」といえば聞こえはいいですが、実際は「自分に自信がない」「仲良くなるための一歩目の努力を惜しんでいる」「仲良くなるのなら勝手になるだろう」「カッコいいバンドに素直にカッコいいというのは恥ずかしい」という高慢と怠惰の賜物から、結局何もしなかったのです。

そしてその当時は、ジラフポット、コンテンポラリーな生活、オトワラシ、KANA-BOONという4バンドが「ゆとり」というライブイベントを組んでいて、大阪のムーブメントの一つとして、彼ら彼女らは目立つ存在でもありました。

僕はそれをSNSで、ただ羨ましく眺めていただけなのでした。羨ましいのであれば見に行くなりすればまだ何かあったかもしれないのに、行動もせずに、家でもぞもぞしていただけでした。

そんな記憶はすっかり薄れていたのですが、バンドを長く続けていると、羨望の思い出も昇華できるタイミングがあるものです。「ゆとり」主催の4バンドうち半数と対バンできたことで、当時の僕が半分成仏したのです。

ライブ後、みんなで小さな円を作って簡単な打ち上げをしながら話していましたが、「こんなに音楽が好きで、気さくな良い人ばっかりなのだから、もっと早くから仲良くなっておけばよかった」という後悔の念が沸々と湧いてきました。話のレスポンスや考え方、めっちゃこの人たち良いじゃん、面白いじゃん、なんで、僕は、当時、何もできなかったんだ……と成仏したはずの生霊がまた後悔を身にまとって現れてきそうでしたが、また対バンしよう、という未来に意識を持っていくことで、幾分か和らいだ気がします。また、対バンしましょうね。絶対ね、絶対。

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[4] 同窓生と会う口実

この日は、もう一つ。高校の友人がライブに遊びに来てくれました。高校生だったのは20年近く前の話になります。高校生活はとても、それはとても楽しかったのですが、卒業後、日常的に会う機会は徐々に少なくなり、今は疎遠になっていることが多い状態でした。

最近たまたま、高校で同じクラスだったグループの集まりや、高校当時所属していた陸上部数人、あとは音楽繋がりで仲良くなった友達からのお声がけ、ちらほらと少人数で集まる機会があり、かつ高校の先輩後輩から成る“空きっ腹に酒”とも周南のイベントで一緒になってはしゃいだり、思ってもみない頻度で母校である“東住吉高校”“ヒガスミ”と連呼する機会があったのでした。

“太陽と虎”では、陸上部で一緒だった二人が見に来てくれたのでした。二人とも個性を発揮しながら日常を奮闘していて、僕はいつも元気をもらいます。うち一人は今は絵を描いて暮らしていたりして、「みんな頑張っているから僕も」と頑張る動機を継続的に与えてくれる存在です。

僕はどうやら「今のライブを高校の頃の友達に見てほしい」という欲求が存外強くあるみたいです。挫けそうなとき、不思議と高校の話題が風のように運ばれてきます。お笑いにめっぽう強い高校だったので、先輩後輩がお笑い賞レースで結果を残していたり、先ほどの絵を描いて暮らしている友達だったり、警官や大学に入って一生懸命仕事をしている友達だったり、社会と向き合い奮闘している大切な友達たちの姿が多方面でよぎるたびに、もう少し頑張ってみるか、という気にさせてくれるのです。

そういった友達ともう一度邂逅する場として、僕は「ライブハウス」を選んでいるのかもしれません。これまでは、冠婚葬祭の「婚」の機会が比較的多くあったので、ライフサイクルの中で会う機会はそれなりにあったと思います。が、そういったイベントは一通り落ち着き、もうしばらく年月が経つと、「葬祭」に移っていくんだろうなと思います。

その間を埋めるかのように、バンドをしている限りは「ライブをするから会いたい」という口実を作ることができます。逆に、その口実があるうちに呼ばないと、後悔するという裏表の関係でもあるんだろうなと感じています。「ライブハウス」という場所は、今や僕にとって「後悔抑制装置」としても働いている側面があるのでした。

 

[5] 後悔と向き合う場としてのライブハウス

後悔とライブハウス。TAROTツアー神戸編“太陽と虎”では、「後悔となっていること」「後悔を昇華させること」「未来に後悔を残さないこと」色々な形で僕の後悔が立ち現れる結節点となっていました。

僕にはまだこういう“ライブハウス”という場所があって良かったと思います。後悔先に立たず、という言葉がありますが、僕にとっては“ライブハウス”という場所があるおかげで、後悔を先に立たせて、後から昇華させたり回収することができています。一方でより後悔を強めることもありますが、それは副作用みたいなものなのかもしれません。後悔を強く意識して生きる、というのも、未来のためには大事なのだろうと思います。

そして、ライブハウスがなかったら、早々にドラムを辞めていたら、この後悔はどうなっていただろう? とも思います。後悔を未来に昇華できない僕は、一体何を考え、どう生きているのだろう。過去に縋って、未来に希望を持てていないのかもしれません。全然違う人生だったのは間違いありませんし、このコラムも書いていなかったはずです。どうなっていたのかは、パラレルなので分かりませんが、こうして今はコラムを書いているのは確かです。

そして、ここまで読んでくださった貴方。ありがとうございます。貴方にも、良い角度で後悔と対峙できる場があれば良いなと思います。それが“ライブハウス”なのであれば、烏滸がましいですが一助になることができれば嬉しいですし、どこかそういう機会でお会いできれば嬉しいです。では。

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16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」一覧

 

◆Live Information

《ZOOZ》
2026.02.28(土)大阪・扇町para-dice
“Frame By Frame”
ZOOZ / She Side Ship / 霜降り猫 / 追い風、朝 / UNDER THE KLOUD / Shom

2026.04.05(日)大阪・扇町para-dice
ZOOZ pre.“Peace”
ZOOZ / moja / ORANGE STONES / Atomic stooges

2026.05.30(土)大阪・扇町para-dice
16ビートはやお pre. “やばいビート”
ZOOZ / 神々のゴライコーズ

《ガストバーナー》

2026.02.22(日)宮城・仙台 ROCKATERIA
ガストバーナーpre.“TAROTツアー”
VOLA & THE ORIENTAL MACHINE / カリカヌル女子子 / ガストバーナー

2026.02.23(月•祝)東京・下北沢 SHLTER
ガストバーナーpre.“TAROTツアー”
VOLA & THE ORIENTAL MACHINE / ガストバーナー

2026.3.7(土) 東京・下北沢 近松
め組pre.“めぐみズム 〜ガストニアフレ組のパン祭り〜”
め組 / ニアフレンズ / ガストバーナー

2026.03.28(土) 北海道・札幌 SPIRITUAL LOUNGE
ガストバーナーpre.“TAROTツアー”
鴉 / HERE / YOWLL / ガストバーナー

2026.03.29(日) 北海道・札幌 SPIRITUAL LOUNGE
ガストバーナーpre.“TAROTツアー”
鴉 / HERE / YOWLL / ガストバーナー

2026.04.04(土)名古屋・ 新栄CLUB ROCK’N’ROLL
神々のゴライコーズ レコ発名古屋編 “KO-GO-NO SANGOKUSHI”
神々のゴライコーズ / Burgundy / ガストバーナー

2026.04.19(日)大阪・寺田町 fireloop
ガストバーナーpre.“TAROTツアー”
フロアライブワンマン!

2026.04.25(土)東京・池袋 LiveGarage Adm
ガストバーナーpresents.“TAROT”ツアー
タロットで当日のセットリストを決めるワンマン!

2026.05.09(土) 名古屋・新栄 CLUB ROCK’N’ROLL
ガストバーナーpresents.“TAROT”ツアー
アルバム再現ライブ + 60分ワンマン!

 

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