傷をえぐるドキュメンタリー×センチメンタルポップス、現役大学生「リリィ、さよなら。」デビュー
【約束】は大事な気持ちがいくつもあって生まれた曲
――リリィ、さよなら。のターニングポイントは【約束】の配信リリース&MV公開だと思います。
前の事務所のディレクターさんがとてもパッション溢れる人で、「これで君は“リリィ、さよなら。”として誕生するんだ」と、その人がセッティングしてくれた大きなプレゼンライヴと同じ日に【約束】を配信リリースすることになったんです。でもいろいろあって事務所の契約は切れてしまって、そのディレクターさんも「お前がいないなら俺もこの会社を辞める」と言って……。でも【約束】を配信したことは決して無駄ではなかったと思っています。配信する前はTwitterのフォロワーさんも200人くらいしかいなかったんですけど、配信したあとには1000人超えて、いまは1700人くらいの人がフォローしてくれていて。あの曲を配信リリースしていなかったら、いまの俺はないと思う。下北沢の地下にあるカフェで、そのディレクターさんが「村上くんの初ワンマンで、最初に楽屋に入れてくれ」と言ったことをいまでも鮮明に覚えていて……(※涙ぐむ)。
――そんなことがあったんですね。
ディレクターさんもそうだし、アレンジャーさんとしても活躍しているカムロバウンスのejiさんもわざわざ俺のライヴを観にきてくれて、「思ってたよりロックじゃん、身を削ってるね」とアレンジを引き受けてくださって。MVを作ってくださった監督も「今年いちばん頑張った仕事」と言ってくださって……そういう大事な気持ちがいくつもあって生まれた曲だと思います。
――【約束】は、ヒロキさんが音楽をやるきっかけになった、初恋の女の子と別れてしまったときに書いた曲だと、さきほどおっしゃっていましたものね。
失恋して荒れ狂って、実家の裏にある川に落ちて……明け方ずぶ濡れで血だらけになった俺を、犬の散歩してたおっちゃんが見つけて通報してくれたみたいで、目が覚めたら熊本署でした(笑)。あのときの自分に「あの曲が世に出るよ」と言ってあげたいし、この曲を発表したことからリリィ、さよなら。としての活動が開けました。歌詞の〈伝えたい君にありがとう〉は、書いた当時はその相手だけに書いたものですけど、いまはいろんな人へのありがとうの代わりになっているんだなと思っていて。だからライヴで歌うときは大事に、ちゃんと歌うようにしています。俺は愛してもらえていて、だけどいつもそれに応えられなくて後悔して……。
――何言ってるんですか。応えられていますよ。
(笑)。愛されていることは自分でもわかっていて、いつも何かを返したい返したいと思っているんですけど……やっぱり俺は曲を書いて、歌うことしかできない。それしかできない。だから、いつまでもいつまでも音楽への愛とか、周りの人への愛とか――リリィ、さよなら。というアイコンはあるんですけど、いち人間としての自分がちゃんと存在していて。それを受け入れてもらえるアーティストになるために、精進していきたいと思います。