リリックは懺悔箱――DETOX・知弥が綴る「主人公ではない人間」の心の叫び

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detox_2002_1リリックは懺悔箱――
DETOX・知弥が綴る「主人公ではない人間」の心の叫び

 

横浜、THE NINTH APOLLO、94年式。ラッパー/ヴォーカルとベーシストの2人組・DETOXは、2018年の全国デビューから不思議なテンポで活動をしている。『生存者 後編』のあとに『生存者 前編』をリリースするし、「#secret3days」という名目で突如SNSにて3日間限定で新曲を配信したり、YouTubeに新曲のMVをアップしたりする。そんななか、去年の秋にヴォーカルの知弥から『ネグニン』と題された作品が届いた。あれだけたくさん新曲を発信していて、同作に収録されているのはたったの5曲。それは裏を返せば、それだけの精鋭たちということだ。DETOXにとって『ネグニン』とはどのような作品なのだろうか。そしてバンドのキーマンである知弥は、いったい今なにを考え、どんな時間を生きているのか。彼に話を訊いてきた。

取材・文 沖 さやこ
撮影 優作(Made in Me.

 

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2015年3月に横浜にて結成された、知弥(Vo)と肇(Ba)の2人組。知弥の日記のような歌詞と、肇の哀愁を感じさせるベースメロディが特徴的。地元を中心に精力的なライヴ活動を重ね、2018年6月にTHE NINTH APOLLOよりミニアルバム『生存者 後編』で全国デビュー。同年10月に1stフルアルバム『生存者 前編』、2020年2月に5曲入りミニアルバム『ネグニン』をリリース。知弥はファッションブランド・SANAGARAのメンバーとしても活動している。
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◆「俺らって全国流通して見事に失敗したバンドだよね」って(笑)

――DETOXは2018年にTHE NINTH APOLLOに所属し、2作品をリリースしました。その経験が知弥さんにどんな影響を及ぼしているのかを、まず教えていただけますか。

あー……俺とハジ(肇/Ba)で最近よく話すんですけど。「俺らって全国流通して見事に失敗したバンドだよね」って(笑)。

――えっ、いきなりなんてこと言うんですか(笑)。

(笑)。全国流通することに対して、俺とハジはなんも深く考えてなかったんですよ。「いちばん最初に声を掛けてくれた人についていこう」と思ってて、それが旭さん(THE NINTH APOLLO社長・渡辺 旭氏)だった。あの2作品は構成に取り掛かってから発売までの間がめっちゃ長くて、その間にめちゃくちゃ新しい曲ができちゃって。ライヴでのセトリもどんどん変わってっちゃって、作品に納得いってないわけじゃないんですけど、リリースした頃には「今湧き上がる熱」みたいなものが入れられなかったんですよね。


DETOX – 生存者 後編(Trailer)

――『生存者 後編』が先にリリースされたけれど、制作は『生存者 前編』が先だったんですよね。となるとたしかに新鮮味は薄れるかも。

メンバーがふたりだから、作曲スピードも速いんですよ。だから曲を作るたびにどんどん変わってっちゃう。もっと出した作品に対して「やべえ!」みたいなリアクションができてれば、バンドもまた違う方向に行けたのかなとは思っていて。で、今回の『ネグニン』は『生存者 前編』をリリースしたタイミングで出来ていた曲たちなんです。

――去年の7月に公開した【ドゥームズデイ】と、去年の大晦日に公開した【シガーキス】は、『ネグニン』には入っていません。

ぶっちゃけあの2曲のほうが『ネグニン』の曲より新しくて。『ネグニン』と今の自分たちとの帳尻合わせのためにアップしたっすね。「#Secret3Days」の曲もほとんど音源になってないし。……正直どういうペースで出せばいいのかわかってないんですよね、俺ら(笑)。そういうセオリーを知らないから。


DETOX – シガーキス

――THE NINTH APOLLOの方々からのアドヴァイスなどは?

自由奔放にやらせるスタイルなんで、俺らの「やりたい」というタイミングを尊重してくれてるんです。だけど方法がわからないから待ちの姿勢を取っちゃって。……けど、最近それが変わってきたっすね。全国流通が決まった頃の俺らはペーペーだったし、ちょっと浮かれてた部分もあったし。それがいろんな人に怒られて(笑)。

――「怒られる」って(笑)。

2019年は1年通して信頼してる人たちからすっげえ怒られたんです(笑)。でもこれだけ信頼してる人たちが怒るんだから俺がおかしいんだなと受け入れて、落ち着いてきて。そんな時に『ネグニン』みたいな音源を出せるっていうのも、タイミングなんだろうなと思います。『生存者』2作品を出した後にライヴで叩き上げてきた、ずっとスタメン張ってたような5曲だから、作ったのがちょっと前の曲たちでも最高の作品と言えるものになってる。3枚目にしてなるようにしてなったかな感はあります。

>> 次頁:バンドの代表曲【世紀末の詩】が生まれた背景とは

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