Brian the Sun/つばき/sumika/感覚ピエロ -2015.4.30 at 新宿LOFT

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Brian the Sun/つばき/sumika/感覚ピエロ

SHINJUKU LOFT 16th ANNIVERSARY新宿ロフト×Brian the Sun presents
SHINJUKU LOFT LIVE collaboration 2015~2016
supported by GO TO THE SHINJUKU LOFT 40TH ANNIVERSARY
2015.4.30 at 新宿LOFT

2000年代と2010年代のギターロックの邂逅が生んだ、愛と笑顔の一夜

取材・文:沖 さやこ
撮影:JUNKO YODA、沖 さやこ

 

2014年11月から2015年1月にかけて、渋谷CLUB QUATTROをはじめ東名阪ワンマンを含む全国ツアーを成功させ、春にはスペースシャワー列伝で全国を回ったBrian the Sunが、新宿LOFTのアニヴァーサリー企画と共同で行ったライヴ・イヴェントにお邪魔した。

3Z6A1408会場に入ると、“格下”ことBrian the Sunのベーシスト白山治輝がDJ中。HAPPY、04 Limited Sazabys、THE ORAL CIGARETTESと、共にスペースシャワー列伝を回ったバンドたちの楽曲を続けざまに流していた。列伝が彼らにとってとても大きなものであったのだと再確認する。バースペースには彼らの曲名と掛けて、ポップコーンやチョコレートブラウニー、Brian the Sunのドラムス・田中駿汰によるお手製たこ焼きなどが売られており、Brian the Sunの過去のアー写やライヴ写真、ポスターの展示が。ライヴスペースもバースペースも、開演前から大賑わいだ。

開演の18:30を過ぎると、治輝が観客に向けて「(トップバッターは)関西から来てるバンドなので、もうちょっと元気いいほうがいいかな。元気ですかLOFT!」と声を掛け、ステージに招き入れたのバンドは感覚ピエロ。2013年結成、今年の6月に初の全国流通盤をリリースする新星だが、結成直後に自主レーベル設立、精力的なライヴ活動に自主リリース、自主制作とは思えぬほどのハイクオリティのMVなども影響し、その名は既に全国区だ。彼らの登場にフロアも高騰。感エロのワンマンじゃないかと思うほどの盛り上がりである。

3Z6A1449ギターヴォーカルの横山直弘が「俺たちと一緒に遊べるか、準備はいいか!?」と煽ると1曲目は【A-Han!!】。ラップを盛り込み、クールな佇まいに皮肉のきいたユーモラスな歌詞、完成度の高い楽曲と卓越したライヴ力。初期のRADWIMPSを見ているようだ。横山が激情的に「かかってこいよ!」と叫び、妖艶なヴォーカルが映える【She say O.K.】。ダイヴァーも出現するなど、彼らの勢いに面食らう。ひたすらおっぱいのことをスタイリッシュに歌う【O・P・P・A・I】ではコール&レスポンスを巧みに用い、「気に入らないことばっかりだ!」「腑に落ちないことばっかりだ!」とBrian the Sunの歌詞を盛り込むなど、観客の心をがっちり掴んで離さない。こりゃ話題を集めるわけだ。その手腕に感心した。

横山の歌とギターで1番を歌いきってバンドインするミディアムナンバー【水槽の中で眠る君よ】から、鮮やかにダンサブルな【Japanese-Pop-Music】へつなぎ、ステージを締めくくる。まだ随所に粗さはあるものの、間違いなく彼らはこれから日本のロックシーンを賑わせていくだろう。

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バースペースに行くとBrian the Sunのギタリスト・小川真司がたこ焼きを食べていた。それはもちろん駿汰の作った、その名も“一口ブライあ~んタコ焼き”。駿汰流はソースではなく醤油がおすすめらしい。
「期間中にオフィシャルTwitterアカウントのフォロワーが一定人数超えなければスタッフ2名と駿汰が坊主になる」という企画があり、どうなることかと思いきや、期日前にめでたくノルマを突破。たこ焼きを作ってくれた彼に「坊主阻止できてよかったですね」と声をかけると、彼の隣にいた事務所の社長さんが「もともと(駿汰は)坊主みたいなもんですけどね(笑)」と笑わせた。そんなアットホームな空気が会場中に広がっていて、観客ひとりひとりが思い思いに楽しみ、LOFTは秘密基地のお祭りのようだ。

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バースペースであつあつのたこ焼きを頬張っていたら、ライヴスペースからSEが聴こえてきたので慌てて向かう。2番手は予想だにせず、今年結成15周年を迎えるつばき。2013年6月、一色徳保が病気から復帰して以降、つばきはサポートギタリストを招いてライヴを行っている。

563A17691曲目は切ないメロディを軽やかに届ける【ないものねだり】。一色はいつもゆっくりフロアを見つめて一言一言噛み締めるように歌う。アップテンポの【フクロウ】では他バンドのファンであろう観客からも高く腕が上がり、クラップも起こった。難しい言葉や抽象的な表現はなく、気持ちに素直に綴られた、まっすぐ核心を突いてくる言葉たち。彼のヴォーカルはどんどん説得力が増している。重く深く刺さるのだ。支え合うように響くシンプルな5人の眩しい音色が、混じり気なく沁み入る。その美しさに見とれた。

MCで一色は「Brian the Sunのリハを見てかっこいいなと思って。楽屋で勇気を出して“かっこいいですね”と言ったら、ヴォーカルの人(※森 良太)がニヤッと笑ってくれて。大迫(サポートギタリスト)の笑顔もめちゃくちゃ可愛いと思ってたんだけど、、レヴェルが違ったわ。めちゃくちゃキュートでびっくりした!」と語ると、場内は笑いに包まれた。

躍動感のあるサウンドでフロアが心地よくそのビートに身を委ねた【春の嵐】のあと、一色が「今日は初めての対バンで、しかも人気のある若いバンドということで、多少の緊張をしていたんですけど(笑)、みんな優しくて。ありがとうございます」と言うと、場内からはあたたかい拍手が沸く。そして最後に「9年くらい前、うまくいかないことばっかりで、大丈夫なのかな?と悩みながら、励ましながら書いた曲です」と【今日も明日も】を演奏した。5人の真摯な気持ちがLOFT中に溢れた、とても純粋な空間だった。

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3番手のsumikaは、イントロでまずコーラス・グループよろしくの華やかなハーモニーで魅了する【ソーダ】で幕開け。ひたすらハッピーが溢れるカントリー的な音色に、フロアには自然とクラップと笑顔が舞う。アップテンポの【イナヅマ】は手数の多いドラムとメロディアスなヴォーカルの相性が良い。彼らの音楽もライヴパフォーマンスも、ステージとフロアとの壁なんて概念が皆無と言っていいほど積極的で、笑顔に溢れている。

563A2037 コーラスとピアノが活きた軽快でロマンティックな【リグレット】から、合いの手が入るなど彼ら流のユーモアが効いたダンス・ナンバー【ふっかつのじゅもん】と、とても身軽な身のこなし。その晴れ晴れしく人懐っこい空気に酔いしれる観客多数だ。
ヴォーカルの片岡健太はギターを爪弾きながら、「LOFTもBrian the Sunも、昔は知らなかったから好きでも嫌いでもなかった。でもいまはこんなに大好きになっててさ。生きていけばいくほど“好き”が増えるのはめちゃくちゃいいことだなと思いました。どんどん“好き”が増えていけば、嫌いなものに押しつぶされることもないんじゃないかな」と語る。そして「“好き”が増えたり、“好き”がもっと好きになったり……今日がそんな1日になっていたらいいと思う」と続け、ラストは疾走感のなかに爽やかさと情熱が交錯する【雨天決行】。sumikaは最後までLOFTを幸福感で包み続けた。

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最後はとうとう、この日の主役であるBrian the Sunが登場。ライヴは【君の声】からスタートした。安定感のある駿汰のドラムに、楽曲の裾野を広げる治輝のベース、良太の力強いギターのカッティングとヴォーカル、そこに彩りを添える真司の優雅なギター。この四者四様、まったくもってキャラクターが違う音色で同じ景色を描くのがBrian the Sunというバンドだ。勢いを殺さずに【早鐘】へとなだれ込み、その転がるような音像に迸る熱量が心地よく肌を刺す。【彼女はゼロフィリア】では良太が観客にクラップを促し、【都会の泉】は憂いと鋭さで場内を圧倒。歌を大事にしたバンドでありつつも、綺麗にまとまったお利口さんの歌モノで収まらない。そのいびつな美しさが、彼らのロックンロールが生み出すロマンでもある。

563A2609563A2860563A3042563A2371良太がスタンドからマイクをはずし、ステージ前の柵まで身を乗り出す。「後ろのほう聞こえてますか!」と呼びかけ、コール&レスポンスをしてブルージーな真司のギターがクールな【Noro】。良太がムードのある歌声で引き付けると、抑制できない想いが華やかに溢れ出す【Sepia】、エモーショナルなミディアムナンバー【白い部屋】と畳み込む。感受性のかたまりとも言える私的な良太の楽曲は不安定で、その等身大の彼の感情すべてを音にして、メンバーがくみ上げて支えているようだ。そんな信頼関係あってこそのサウンドスケープは、心の奥の敏感な部分に響いてくる。

MCでも良太の感受性は爆発。それを治輝がより万人に伝わりやすくするという図式ももうお馴染みだ。長々話す良太に治輝が「(曲までの)振りが長い!」とツッコむと、良太が「これぐらいの振り我慢でへけんかったら、女の子と付き合われへんで。女の子が本題話すまでどれだけ話す思てんねん」と一蹴、会場も大爆笑。根っからの感覚派と、周りのことを思いやれる視野の広い頭脳派、両極端のふたりだからこそ高校時代からバンドをやっているんだろうな、とぼんやり思う。その後【神曲】【Sister】と代表曲2曲で本編を締め、歯車がしっかりとかみ合ったアンサンブルで、迫力のあるグルーヴを生んだ。

アンコールでは良太が「スペースシャワー列伝に出てから、めっちゃ有り難いことにお客さんが増えて。……戸惑っとるんですねえ(笑)」と素直な気持ちを吐露。それから「人の好きなとこと嫌いなとこ、長い間一緒おったら同じくらい出てくるんですよね。その全部まるっと許して受け入れて、愛し続けることができれば素晴らしかったのにな……という歌です」と語り、映画『ハッピーランディング』の主題歌である【Absolute Zero】を披露する。癒えない傷から滲む悲しさとあたたかさが、人生の重みそのもののようだった。

「俺、頑張るのめっちゃ嫌いなんですよ(笑)。でもね……やらなあかんときはやらなあかんねんな、ってめっちゃ思ったんすわ。俺なんて歌ってギター弾いて曲書いて、まだラクに生きてるほうですよ。じゃあ何せなあかんゆうたら、みんなのこと元気付けることしかないと、すごく身に染みて思う」。良太がそう前置きして演奏された【ロックンロールポップギャング】は、いままで「気に入らないことばっかりだ」と不満を撒き散らしていたものから、「この世の中は気に入らないことばっかりだから、俺たちはもっとこうしていきたい」という決意表明の楽曲へと変貌を遂げた瞬間だった。とてもポジティヴな力強さに溢れていて、バンドもとても大きく見える。この先、彼らがどんな音でどんな景色を描くのか、その興味と期待がさらに高まった。

最後にジャンケン大会を行い、イヴェントは大盛況のうちに終了。すべてのアクトをじっくりと堪能し、ライヴハウスはバンドの夢と未来が膨らむ、掛け替えのない場所であることを改めて感じた。この距離と空間でないと感じられない想いがある。それは演者も観客も同じだ。

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Brian the Sun Official Site
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