amazarashi 【スピードと摩擦】

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amazarashi 『スピードと摩擦』“Speed and Friction” |「乱歩奇譚 Game of Laplace」OP曲

amazarashiの8月19日にリリースされるシングル曲【スピードと摩擦】のMV。「死にたい」というツイートを、樹海にプリントアウトするインスタレーションMVの【穴を掘っている】、レーザーカッターで切り出された生肉の歌詞を、一人の女性が喰らいつづける【季節は次々死んでいく】という直近2本のMVを手掛けた本山敬一氏が、このMVのクリエイティブディレクションを担当しています。今回は「4000文字以上の文字をくりぬき、光の歌詞を映したトイレの中で、コンテンポラリーダンスを展開するフィジカルインスタレーションMV」。

女子高生役は若手女優の月岡果穂さん。このダンスの振り付けを担当した川村美紀子さんは、映像にも出演しています。トイレの制作には「第12回文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門優秀賞の受賞者でもある齋藤達也氏がテクニカルディレクターとして参加しているそうです。

バンドの中心人物である、ギターヴォーカルの秋田ひろむさんはオフィシャルでこう発言しています。「命のあまりの早さに対して戸惑う気持ちが摩擦。人が命を実感するのは、死に直面した時。つまり命を理解するという事は、自分の終わりを想像できたという事でもある。その時初めて命のスピードを知り、”焦り”が生まれるのではないか。命のあまりの速さと、それに対する僕らの焦り。それが摩擦して火花を散らすのが生きるという事なのではないか。」――そのコメントを読むと、あー、このMVはこれを表現してるのかーとも思うのですが、どうしても映像の奇抜さが先行してしまうのが勿体ないと思います。乱歩奇譚のOP曲だから学校のトイレが舞台になっているのだろうし、この閉塞的な空間でコンテンポラリーダンスは焦燥を表すのに相応しいと思うけど……。

過去作の【穴を掘っている】と【季節は次々死んでいく】のMVでも思っていたことなんですけど、【穴を掘っている】以降のamazarashiは、歌詞がイマジネーションにはたらきかけるものに変わってきてると思うんですね。そこにサウンド(アレンジ)が以前以上に寄り添って、その結びつきも強固になっている印象もある。ライヴも彼の生身を感じられるものにもなっている。タイアップ先の世界観を継承するのも大事だとは思うんですけど、継承の仕方に疑問を持つところはある。MVやMVの解説文の影響で、楽曲そのものの印象が歪んだり薄れてしまっていないかな? と思ったりしています。あと、「ピックアップする歌詞そこ?」と思う節もある。

わたしの価値観や美意識と合わないというだけ、と言えばそうでしょう。それだけの話だと思います。人間にとっていちばんの情報量である「視覚」。与えられた映像をそのまま摂取するだけではなく、曲の発している声を聴くことは、音楽にとってとても大事なことではないかな、と思うのです。(沖 さやこ)

 

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