リリィ、さよなら。-2015.11.12 at SHIBUYA duo MUSIC EXCHANGE

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DSC07039リリィ、さよなら。
リリィ、さよなら。レコ発ワンマン~ハッピーエンドで会いましょう~
2015.11.12 at SHIBUYA duo MUSIC EXCHANGE

これまでの出会いへの純粋な感謝が溢れた、過去と未来をつないだ日

取材・文:沖 さやこ

 

今年3月に全国デビュー、そして10月に2ndミニアルバム『ハッピーエンドで会いましょう』をリリースしたリリィ、さよなら。が、同作のリリースを記念してSHIBUYA duo MUSIC EXCHANGEにてワンマンライヴを行った。今作収録の【フラッシュバック】が「首都圏ラジオ7局スーパープッシュ」に起用され、様々な世代にその知名度をじわじわと高めていることもあってか、この日のライヴは多くの観客で大盛況だった。

ステージに現れたバックバンドの演奏を出囃子に、リリィ、さよなら。=ヒロキが登場。彼がエレキを持つとライヴは【流星ドライブ】からスタートした。スピード感と清涼感のあるギター・ロックにフロアからは自然とクラップが沸き、ヒロキは笑顔で「ありがとう!」と声を上げる。パフォーマンスは少々硬いようにも見えるが、一言一言を大切に歌う姿は目を見張るものがあった。山手線各駅での路上ライヴを2日間で行うなど、精力的なライヴ活動も影響しているのだろう。【ジュブナイル】のあとには未発表の新曲を披露。思いがけないサプライズに観客も軽やかなクラップで応戦する。

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MCで観客にこの日の感謝を伝えると感極まって泣きそうになるヒロキ。たくさんの人が集まったフロアを見て「ミュージシャンになった気分」と言い、その場を笑わせる。そんな彼は「2015年ははじまりの年だった」と語り、彼が「はじまりの曲」だという1stアルバム『リリィ、さよなら。』のリード曲【snow~君がくれた物語~】と、昨年彼が超特急に楽曲提供をした【EBiDAY EBiNAI】を披露した。原曲はアップテンポな【EBiDAY EBiNAI】はミディアムテンポに姿を変えてヒロキがピアノで弾き語りをする。日本的なメロディの美しさと、いまにも泣き出しそうな痛みを伴う歌声が混ざり合い、その音楽に会場中が聞き惚れた。

独特のトークを展開したあとはまたもや新曲を披露。「清純派が売りなのでピュアピュアすぎる曲を歌いたいと思う」という言葉とは裏腹に、歌謡曲×ジャズテイストというアダルティな楽曲だった。マイクスタンドで歌う姿も、色気のあるファルセットを効果的に使うところも彼にとっては新機軸だ。壮大なバラードの【未送信のラブソング】で魅せたあとはアコギを抱え、アコースティック編成で【君の匂い】と【君がいなくなっても】を歌い上げる。曲によって様々な見せ方ができるのも多才なシンガー・ソングライターならではだ。再びバンドメンバーが全員登場し、幻想的な導入から始まった【流星群の降る丘で】は背景に星空が現れ、楽曲の持つドラマ性をさらに引き出したステージ。もっと大きな場所で聴いたらさらに映えそうだ。

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後半戦は座席に座っていた観客たちもヒロキの案内によって半ば強制的に(笑)立ち上がり、軽快な【時間よ止まれ】を助走に【美女も野獣】【ナイト・トレイン】などアッパーな楽曲を3曲たたみかけて頼もしく会場をドライヴ。そして演奏をバンドメンバーに一任し、マイクスタンド1本で名バラード【約束】をしっとりとしっかりと歌い上げた。〈伝えたい君にありがとう〉という言葉は特に強く響き、これまで出会ったすべての人への真っ直ぐな気持ちが伝わってくる。「いろんな人に支えてもらいながらこうやって音楽をさせていただいてるんだな……ということに気付けた」「おじいちゃんになるまで走り続けていきたいと思います」と語った彼は、楽曲にかけた想いを語り「僕のいちばんいちばん大事な曲を聴いてください」と言い【フラッシュバック】を届ける。別れを歌った楽曲だが、この日の彼が歌うと人の背中を押すような頼もしさがあった。この曲に描かれた痛みを完全に乗り越えたわけではないかもしれないが、これまで自分に向けられたすべての優しさを素直に受け止め、自分の力に出来るようになったのかもしれない。

アンコールのラストでは「今日の夜をきっかけに突き進んでいきたいと思うので、粘着質に応援してください」と笑わせ、「“いま”に感謝しながら最後の曲を歌いたいと思います」と告げると【恋愛進化論】。高校時代に書いたというピュアでひたむきな気持ちに溢れた楽曲を聴きながら、改めてリリィ、さよなら。の楽曲は悲しみを歌いながらもハッピーを信じているものばかりだと思った。“ハッピーエンドで会いましょう”というタイトルはいまのリリィにとってはまだ切ない言葉かもしれないが、今後は人の愛を受け取ってあたたかい音楽を、ハッピーを作っていけるアーティストになるのではないだろうか――。そんな期待が高まる、想いに溢れた2時間超えのライヴだった。

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