意味のないことはしたくない――湯冷めラジオがひずんだサウンドスケープで灯す祈り

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――湯冷めラジオがひずんだサウンドスケープで灯す祈り

 

昨年結成したばかりなのにもかかわらず、興味深い動きをしているバンドがいる。それが東京を拠点に活動する4人組の湯冷めラジオだ。バンドでありながら現時点ではライブ活動を行わず、効果的にSNSやメディアにて発信をし、サブスクリプションサービスを活用。さらには謎めいたバンド名とアート性の高いコンセプチュアルなアートワークも手伝って、2022年12月にリリースした初作品となる1stデジタルシングル「残照」は国内外より注目を集める。
その約2ヶ月後には2ndデジタルシングル「EMDR」、さらにその1ヶ月後となる3月22日にはシングル2曲に新曲「あの日、第4学舎3201教室にて」を加えた3曲入りEP『灯芯 e.p.』をリリース。その精力的な行動の裏には、バンドを立ち上げた緋乃 白(Vo/Gt)の「自分の追い求める景色をこの目で見たい」という強い信念があった。4人が目指すバンド活動のかたちとは一体どんなものなのだろうか。緋乃と、主にアレンジを担当する五木田大介のふたりに訊く。

取材・文 沖 さやこ

 

◆湯冷めラジオ(ゆざめらじお)
yuzameradio_ap_202304日本の4人組バンド。2022年結成。世界の抜き差しならない切実さをはらんだ、どこか陰を帯びた空気感が特徴。2022年12月に初作品となる配信限定シングル「残照」をリリース。REC、MIXにはココロオークションの大野裕司を迎えている。ロック、シューゲイズ、オルタナを中心に据えながらも、年代・ジャンル・カテゴリーに捉われない独自の世界観で自由に楽しく楽曲を制作していく。

 

 

 

◆見たい景色をこの目で見るために、出来ることは全部やりたかった

――湯冷めラジオは2022年に緋乃さんを中心に結成されました。そこに至るまでにはどんな経緯があったのでしょう?

緋乃 白(Vo/Gt) 私は音楽をはじめとする文化を介して、人種や国籍などを飛び越えて人と人とが通じ合う瞬間にいちばん心がときめきます。そのことを教えてくれたすごく大事な人に、「あなたがわたしにくれた種がどんな花を咲かせたのかを見せたい」というのがいちばん大きな理由です。ずっと昔からそれを信念にいろんなことにトライしてきたんですけど、あらためて立ち止まって「どうしたら夢を叶えることができるだろう?」と考えて、自分で音楽を作ってみるか……という結論に至りました。大学時代に軽音楽部のコピーバンドでギターをやっていたので、アレンジを考えてくれるメンバーと楽器が弾けるメンバーを探して組んだのがこのバンドです。

五木田大介(Gt) 彼女の求めているメンバー像や、やりたいバンドのイメージが最初からすごくはっきりしていたんですよね。バンド経験があって遅刻しない人を探していたみたいで(笑)。

緋乃 あははは。経験者であってほしかったけど、テクニックというよりは人柄を重視していました。

五木田 バンドはどんなに楽しくていい曲ができたとしても、メンバーの気持ちがないと続かないからね。僕もこれまでバンドを組んでは解散して組んでは解散して……とふらふらしていて。サポートとしてギターを弾く人になろうとしたこともあったんですけど、音楽表現としてバンドという形態が好きなので、信頼できるメンバーと一緒に長いことできるバンドに落ち着きたいなと思っていたんです。彼女の話を聞いて「この子はマジでバンドをやる気だな」と感じて、ぜひ一緒にやりたいと申し出ました。

緋乃 わたしのやりたいことに賛同してくれた3人なので、そんなメンバーと出会えたことが本当にラッキーです。これまで積んできた徳の成果か?!(笑)。

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湯冷めラジオ

――湯冷めラジオは、緋乃さんの夢を叶えるための計画が綿密に練られているのも特徴的ではないでしょうか。2022年11月に始動してから、インターネットを経由した発信に力を入れていますよね。

五木田 ライブも自分たちのやりたい表現のひとつではあるんですけど、特にコロナ禍に入ってからは、ライブから活動を始めるのは悪手なんじゃないかとは思っていました。ライブハウスで演奏していれば聴いてもらえるという時代ではない。「ライブは音源をちゃんと出してある程度聴いてくれる人がついてきてからでも遅くないよね」という話はメンバー間でもしていて。

――まずはできるだけ多くの人に自分たちの曲を聴いてもらうことを第一に。

緋乃 冒頭で話したやりたいことを実現するためにも、国内だけでなく海外にも届く動き方をしていきたいんです。

五木田 僕は昔から中国の古典や昔の中国文化、中華料理が好きすぎて、大学も中国文学科を卒業したんです。音楽をやるにしても世界でいちばん人口が多い国なので、リスナーが増えてくれたらいいなと期待もしています。

緋乃 それこそ冒頭で話した私に夢を持つきっかけをくれた人は中国の方なんです。大介くんが中国文化に関心があるという事前情報なしに一緒にバンドを組むことになったのは、ほんと縁だと思っていますね。今後全編英語詞の曲や、全編中国語詞の曲も書きたいです。もちろん日本語独自の表現もすごく好きなので、どちらも発信していけたらなと思います。

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湯冷めラジオが今の時代にシューゲイザー/オルタナを鳴らす理由

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