感傷ベクトル田口囁一とLyu:Lyuコヤマヒデカズが語る、表現者の苦悩と信念(後編)

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◆作品を人に見せるのはコミュニケーション

――漫画は読者にストーリーをわかりやすく伝えることも鍵になってきますから、ミュージシャンがやることと方向性は変わってきますよね。

田口が別冊少年マガジン(講談社)にて連載中の『フジキュー!!! ~Fuji Cue’s Music~』

田口 特に少年漫画は基本的に自分を出すものではないから、描いてる最中に「ウケ狙いのために嘘をついてるんじゃないか?」と疑う瞬間がある。本当にやるべきことは自分の信念に嘘をついていないながらも、それを上手に人に伝えるために言葉を選んでいくという作業をしなければいけないはずが、「伝わりやすい」ということにとらわれすぎて根本的に言いたいことが捻じ曲げられてないか……? と思う瞬間は多々あって。そのボーダーラインがわからないんですよ。伝わるように描こうとしたら、下手すると薄くなっていく。

コヤマ 俺も曲を作っているときにそれに陥ることがある。「本当のことさえ言っていればそれでいいのか?」というとそうでもない気もするし、「誰に理解されなくても誰に伝わらなくてもこれは本当のことを言っているんだ」と言うならそれを人に見せる意味は何?とも思う。やっぱり人に見せる以上はわかってもらう配慮や努力をすべきだと思うけど、そればっかりに意識が傾くと「わかりやすいけれど、だから何?」ということにもなってくる(笑)。わかりやすさを追求しすぎると曲のなかに自分がいなくなる。

田口 ……それ、人付き合いと同じですよね。作品を人に見せるのはコミュニケーションなんですよ。でもコミュニケーションが苦手な俺らが……ってナノウさんも勝手に一緒にしちゃいましたけど(笑)。

0M4A5420コヤマ ははは、一緒で問題ない(笑)。

田口 人と会いたくないから漫画家始めたような人間が、結局人に作品を伝えていくためにコミュニケーションの腕を磨かなければいけない。人間の世界で生きていくって……つれえな!(笑)

一同 はははは!

コヤマ 楽曲制作もライヴも、突き詰めると人と人との話になる。例えば演奏もある程度はうまくて当たり前なんですよ。「歌えます、楽器も弾けます、曲もまあまあいいです。じゃあ何がお客さんの心を掴むのか? 自分は一体何を残せるんだろう?」と考えると、人との関わりの話になってくる。そもそも人と関わるのが嫌で音楽を作り始めたはずだったのに、結局人と関わらないといけないという……(笑)。

田口 そこから逃れようはないんですよねえ……(笑)。いまは時代や音楽業界の状況も相まって本当に個人に寄ってきてるなと。

コヤマ むかしは作者が作ったものが受け手に届くまでに相当な距離があったから、作者は謎に包まれていた。でもいまはSNSなどの影響で、ダイレクトに届けられるぶん距離が近くなっているから、取り繕ったものは簡単にバレちゃう時代だと思っているんです。だからこそ嘘がないものを出していかないとと余計に思っている。そこで最低限自分に嘘のないものを出せていれば、距離が近かったとしても臆せずいられる。

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田口 ……「自分に嘘をつかない」は自分も常々思っていて。結果、迷っていることも隠さない!(笑) でも「飾らないことが良し」を突き詰めた結果、自分自身に信頼を置いてないことまで包み隠さず出してしまっているんですよ。まあ、「音楽をこういう感じにやっている人間もこの程度には迷っているから、この程度迷っていても取り敢えずは生きていけるぜ」ということを人前に示すことができてるかなと思うんですけど、カリスマはどんどん失われている(笑)。んー、もういいかな、カリスマゼロで!

一同 はははは!

>> みんながどこからどう見ても「いい」と思うものを作りたい

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