等身大をさらけ出すリリィ、さよなら。の攻勢――成長を続ける楽曲たち

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等身大をさらけ出すリリィ、さよなら。の攻勢
――成長を続ける楽曲たち

取材・文:沖 さやこ
撮影:森脇 梢
協力:LIVERALLY

 

今年2月に晴れて全国デビューを果たしたリリィ、さよなら。が早くも2ndミニアルバム『ハッピーエンドで会いましょう』をリリースした。前回のインタヴューでも「生産性のあるメンヘラになることが目標」「音楽業界をガタガタ言わせていく」など独特のキャラクターで楽しませてくれたが、今作はそんな彼の人間性や思考が前作以上に色濃く出た作品になっている。今回は等身大をさらけ出す私小説とも言える、彼の楽曲の背景にスポットを当てて話を訊いてみた。

 

lily_sayonara_aリリィ、さよなら。
作詞、作曲、ヴォーカル、ギター、ピアノ、バイオリンを手掛けるヒロキのソロプロジェクト。2013年より活動を開始。2013年11月【約束】を配信リリース。同時にYouTubeにて同曲のMVを公開。ライヴ活動など表立った活動がなかったにもかかわらず1週間弱で約3,000回再生を記録する。2014年7~10月に放送されたテレビ朝日『musicるTV』内コーナーの音楽作家塾に出演。その時に制作した【EBiDAY EBiNAI】が超特急のシングルとして2014年11月12日にリリースされ、作家としてデビュー。オリコンウィークリー7位を記録する。2015年2月25日に自身初の全国流通盤である1stミニアルバム『リリィ、さよなら。』をリリース。文化放送「LISTEN? Live 4 Life」2月度後期エンディングテーマとして再度起用されるなど、各所で評判を呼ぶ。3月21日渋谷gee-ge、3月29日熊本B.9 V3で行われたワンマンライヴは両日共にソールドアウト。等身大のリアリティ溢れる私小説のような詞の世界観は、早耳のロックファンやSSW系、ニコ動系などジャンルにとらわれず様々なシーンから評価が高い。11月12日にSHIBUYA duo MUSIC EXCHANGEでのワンマンライヴが決定している。 オフィシャルサイト/Twitter(本人スタッフ)/Facebook

 

◆「まだまだやれるんだな」という音楽的な視野が広がった

――リリースなさって、現在の心境はいかがですか?

ナーバスですねえ……(苦笑)。前作リリースしたときもキャンペーン中にあんまり体調が良くなかったんですけど、1発目というのもあってバタバタしてて考える余裕があんまりなかったんです。けど今回は考える余裕が出たぶんいろいろ悩んじゃって。パーソナルな部分が出た、さらけ出した作品になったので「こんなものを世に出していいんだろうか!?」とか考えてしまって……。

――ははは。

実は今回、選曲が難航して。スタッフさんと僕でバチバチに戦ったんです。「俺はこの曲はそんなにいいと思わない」という曲がCDに入っていたり、僕が入れたいと思った曲がボツになったりとか……(笑)。レコーディングの直前まで収録曲が決まらなくて。アレンジャーさんも僕もディレクターさんもみんなバタバタしてて「これ間に合うのか!?」みたいな状況でレコーディングに入った作品だったので、いよいよリリースという1週間前くらいから心配になりすぎて具合悪くなって考えすぎてリリース前の土日に寝込んじゃいました……(苦笑)。これが売れなかったら引退しようと。

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リリィ、さよなら。 ヒロキ

――出ました、リリィ、さよなら。の“引退しよう”(笑)。

「大丈夫かこれ!?」ってすごく弱気になっちゃって! 今回はアルバムのリリースの2週間前に先行配信をしたんですけど、それがJ-POPチャートで5位まで行ったりと好調だったので。うれしいんですけど全然実感がないというか、その現実に全然自分がついていけなくて。心配なこととかうれしいこととかがリリース前に一気に押し寄せて具合悪くなりましたね……。リリース前はそんな感じでした。リリースを終えたいまはワンマンとか、次の作品はどうするのかとか。いろいろ考えて考えて疲れてしまうので、最近は仕事以外のときはギターに布をかけるようにしています……(笑)。もう見ないようにしようと思って!

――ああ……だいぶキてますねえ。

だいぶキてます! 音楽のことをできるだけお仕事のとき以外は考えないようにしようと思って。心を安らげるためにアニメをみています……。それで心をどうにか落ち着かせるようにしています。ギリギリですね。

リリィ、さよなら。 『ハッピーエンドで会いましょう』(2015)

――選曲に難航したとのことですが、それについて詳しく教えていただけますか?

【恋愛進化論】(M-6)だけが高校生のときに書いた曲なんです。それ以外の曲は僕が上京してから書いた曲なんですよ。【恋愛進化論】は書いた当初は「名曲だろ! 俺天才だろ!」と思ってたんですけど、まだスレてないときに書いた曲なので、あまりにも歌詞や曲の持つ世界観がピュアピュアすぎて、これだけ異色すぎてアルバムのバランスが取れなくなっちゃうんじゃないか……と思って反対したんです。僕はこのアルバムのタイトルになっている【ハッピーエンドで会いましょう】という曲を書いたんですよ。四つ打ち入れて、ハッピーな感じの曲なんですけど……「歌詞はいいんだけどね~、これがアルバムの締めだとちょっとね!」みたいにボツくらって(笑)。でも【恋愛進化論】もアレンジャーさんから「こういうアレンジにしたらアルバムの締めくくりによく合うんじゃない?」という説得を受けて。最後の最後まで渋ったんですけどそのアレンジが素晴らしくて、そこにうまくヴォーカルとかがハマったりしたので……結果オーライという感じで(笑)。

――その道で腕を極めてきたプロの手によって高校時代の楽曲が蘇った。

ディレクターさんとかレコーディングチームの人たちがすごいなと思ったのは――僕はやっぱり制作者なので自分の作品に対する視野が狭いんですよ。だけどアマチュアのときと違って、プロの人たちが関わってくることによっていろんな視点で僕の楽曲を見てくれるから……この曲を今回収録したお陰で僕としても「まだまだやれるんだな」という音楽的な視野は広がりました。

――とはいえ【恋愛進化論】は話し言葉と手紙風の歌詞で。とても面白いアイディアだと思います。

マセガキでしたね(笑)。歌詞カードも文章みたいな表記にしているので、そこにもこだわりました。歌詞カードを見ながら聴いてほしいです。

>>飽和してる音楽のなかで自分にしかできないことをやりたい

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