千客万来のみかん祭-2016.3.19 at TSUTAYA O-EAST

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LUNKHEAD 20160319_1LUNKHEAD
千客万来のみかん祭
2016.3.19 at TSUTAYA O-EAST
w/藍坊主、ひめキュンフルーツ缶、NoGoD

活動のなかでつながった、音楽のジャンルを超えた人の縁

取材・文:沖 さやこ
撮影:高田真希子

 

2000年代、日本のバンドシーンは閉鎖的だったと思う。ロックバンドがTV出演する機会も極端に減り、ヴィジュアル系バンドとそうでないバンドが同じ雑誌に載ることもほとんどなかった。だが2010年代に入り、異種格闘技戦とも言える対バンが増えた。俗に言う“ロキノン系”に分類される人気バンドがX JAPANへのリスペクトを公言したり、ロックフェスに出演するバンドは様々なジャンルにわたり、アイドルの姿も見えるようにもなった。かつてはリスナーが他ジャンルの文化に対して嫌悪感を抱くことも少なくなかったが、最近は「バンギャルはこういうノリ方をする」「アイドルファンはこんな感じ」など、相互理解も増えている気がする。良い時代だと思う。

LUNKHEADが企画する「みかん祭」シリーズ、今回はジャンルの壁を取り払ったラインナップとなった。そこには縁が大きく影響している。たとえばNoGoDの場合、去年LUNKHEADがフェリーでたまたま同じくツアー中だったNoGoDと遭遇し、意気投合して夜通しUNOで遊んだことがきっかけだった。ひめキュンフルーツ缶は同じレコード会社に所属し同郷、そしてリリース時期も近かったことが縁で去年対談企画が組まれたのが出会いだった。それからNoGoDもひめキュンフルーツ缶も、自身の主催ライヴへLUNKHEADを誘い対バンが実現。今回はLUNKHEAD側からのオファーでみかん祭に出演することになった。

ここ最近とあるきっかけで知り合った2組とは逆に、藍坊主とLUNKHEADは知り合って10年。以前藍坊主の沖縄ライヴにLUNKHEADが誘われ、「わざわざ沖縄に来てもらうのだから」という藍坊主の計らいで「ダブルワンマン(※2組ともワンマンの量のライヴをする)」を行ったのだそうだ。それ以来競演の機会がなかったが、去年のLUNKHEADの日比谷野外大音楽堂ワンマンにベースの藤森真一が(ライヴ自体には間に合わなかったらしいが)行ったことで、今回の対バンも実現したようだ。転換DJを務めたピストルディスコも、何度かイヴェントにLUNKHEADを招聘している。すべては縁である。

開演前はピストルディスコのDJと、LUNKHEADのメンバープロデュースの模擬店が盛況。「おだか食堂」では小高芳太朗の手作りカレーを本人が振る舞い、ドリンクカウンターには「GDA BAR」が並立され、合田悟プロデュースのカクテルを飲むことができる。「純喫茶ヤマシタ」は山下壮自らコーヒーを販売。メンバー自ら身体を張ってファンサービスをするところもLUNKHEADの繋いできた縁のひとつかもしれない。

LUNKHEADメンバー全員と各グループの代表が集まり開会挨拶をしたあとは、すぐにトップバッターのNoGoDが登場。団長の小気味よいトークで、アイドルファンもバンドファンももれなくNoGoDの世界へと連れていった。いつ見てもヴィジュアル系のファンの女子たちの舞いは楽曲とのシンクロ率が高く、指先まで美意識が通う。ヘドバンが起こるとシャンプーのいい匂いがするところもヴィジュアル系のライヴ独特の光景。決められたノリをする人もいれば、自由に音楽を楽しむ人もいる。それはどんなアーティストのライヴも同じだ。着物とスーツをマッシュアップしたメンバーのステージ衣装もハイセンスで、ヴィジュアル系のライヴを生で観たことがない人にも刺激的だったのではないだろうか。

小高と山下によく似たアメリカンアコギデュオ、ヨシモン&ソーファンクルがサブステージで来日ライヴをしたあとメインステージに登場したのはひめキュンフルーツ缶。まゆりんこと奥村真友里がインフルエンザのため欠席だったが、4人のフォーメーションでも堂々としたパフォーマンスだった。激しいダンスにも可憐さを残し、全身で気持ちを伝えようとする姿はとても勇敢である。自虐ネタを交えながらも笑顔を絶やさず積極的に観客とコミュニケーションを取り、叩き上げアイドルの底力を見せつけた。

DJ団長は白塗りの顔に大きくみかんの絵を描き、DJみかんと名乗る。この日の出演者のなかで最もみかんをネタにしていたのは団長だった。こういう細やかな気遣いが人の心を掴んでいるのだろう。LUNKHEADファンに合わせてくるりやナンバーガール、THE BACK HORNなど90年代後半から00年代前半の楽曲を中心に届けた。そのあとメインステージに登場した藍坊主は安定感のあるスケールの大きなサウンドスケープで魅了。フロアからは高く拳が上がることもしばしばで、胸倉を掴むような熱い音色に聴き入った。

ピストルディスコのDJのあとの大トリは主役・LUNKHEAD。1曲目【スターマイン】からメンバーのテンションも高く、気合いが入ったフレッシュなステージを届ける。それに導かれるかのように観客もエネルギッシュに。【果てしなく白に近づきたい青】の〈反逆の歌を今/さあ、鳴らせ〉という歌詞が彼らのモードに合致していたように思う。血が揺れるような生々しさ。【インディゴ】は宵の青が歌われたものだが、この日は午前中の雨を吹っ飛ばした晴れバンドのLUNKHEADらしい、青空のイメージが強かった。

TVアニメ「うしおととら」エンディングテーマに起用された【決戦前夜】も初披露。真っ赤に染まった照明と共鳴するように情熱に満ちた赤い音色を轟かせる。いつも青を放っているLUNKHEADは、アニメの世界観を活かした書き下ろしの歌詞やサウンド制作のコラボレーションを経て赤を手に入れたのかもしれない。【闇を暴け】も溶岩のような脈打つ赤を感じさせた。新たな刺激とまだ見ぬ一歩を踏み出す興奮が如実に表れていたステージ。初夏の東名阪ワンマンも発表し、バンドは新たな期待を胸にしていた。これまでの活動のなかで出会った仲間と迎えた、まさしく“決戦前夜”とも言うべき夜。多くのパワーを手にしたLUNKHEADの新たな戦いが始まる。

LUNKHEAD 20160319_2

 

◆Release Information

NEW SINGLE「決戦前夜」
2016/5/11(水)Release
¥1,204(税抜) TKCA-74356
【収録曲】
01.決戦前夜
02.ユキシズク
03.決戦前夜 [TV OA ver.]
04.決戦前夜 [Instrumental]
05.ユキシズク [Instrumental]

◆More Information
LUNKHEAD official site

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