THE NOVEMBERS-2016.11.11 at 新木場STUDIO COAST

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20161111_coast_topTHE NOVEMBERS
11th Anniversary & 6th Album Release Live “Hallelujah”
2016.11.11 at 新木場STUDIO COAST

11年の歳月が導き出した、永遠に疾走し続ける爆音の祝祭

取材・文:柴 萌子
撮影:Yusuke Yamatani

 

2016年、THE NOVEMBERSはバンド結成から11周年を迎えた。バンド名が示す「11月」ゆえ、彼らにとって11という数字の意味は深い。5月を皮切りに毎月敢行された主催ライヴではキャリアを問わず錚々たるバンドと共演し、9月には6枚目となるフルアルバム『Hallelujah』をリリース。その後ワンマンツアーを行い、11月11日に新木場STUDIO COASTにてツアーファイナルを迎えた。事あるごとに雨を呼び寄せるバンドとしておなじみの彼らだが、案の定当日は雨が地面を打ちつける空模様。ついに雨までも彼らに祝辞を贈ろうとしていたかのようだ。

20161111_coast_3新木場STUDIO COASTにてワンマンライヴを行うのは彼らにとって3度目である。この日のフロアは過去2回よりも観客の話し声で賑わいをみせていた。その隙間を縫うように映画館の開映ブザーのような音が鳴り響き、沈黙と暗闇がフロアを支配する。Jeff Buckleyの歌う【Hallelujah】をSEにメンバーが登場。奇しくも当日はこの曲のオリジナルを歌ったLeonard Cohenの訃報が届いた日でもあった。瞬く間にフロアの視線は4人へ注がれ、ライヴはいよいよ幕を開ける。ステージの中央から仄明るい光がメンバーを包みながら、ダイナミックに広がる音の群れを体感させる【Hallelujah】は、萌芽よろしく澄明で新鮮だ。まろやかに颯爽とフロアを駆けていく【風】のあと、清冽な音に身を任せるやいなや【1000年】。高松浩史の太くけたたましいベースを筆頭に、いとも容易く音像が空間を切り裂いた。その後も間髪入れず【!!!!!!!!!!!】【Xeno】と、目に焼け付くほどの鮮烈な照明、耳を劈く爆音は観るものの皮膚を一瞬にして引き剥がすようだ。

20161111_coast_4そして、再び静けさがフロアを走り、ミディアムテンポのナンバー【愛はなけなし】、無色透明の甘美な夢の如し【ただ遠くへ】と、先ほどまでとは一転、4人はがらりと場の雰囲気を変えていく。【時間さえも年老いて】【236745981】は吉木諒祐の強靭なドラムが跫音の如く脈打ち、【GIFT】【ブルックリン最終出口】【きれいな海へ】は柔和さを残しながら、以前よりも毅然さを纏っていた。なかんずく【きれいな海へ】では、乳白色に染まったスクリーンに揺曳する彼らの影が母胎の中の胎児を彷彿とさせる。スローテンポながらもフロアの熱量とステージの力量はせめぎ合っていた。しかし「これからどんどんいきますよ」というギターヴォーカル小林祐介の一言でその緊張は解け、いよいよ本編がクライマックスを迎える。

20161111_coast_2真紅で熾烈な光が一面を覆い尽くす【鉄の夢】、さらに【dysphoria】ではケンゴマツモトのギターが吶喊の如く獰猛にがなり立った。彼らの奏でる爆音は恐れることを知らない。【Blood Music.1985】【こわれる】では爆音と照明がフロアを丸裸にし、拳をつきあげ頭を振り乱す観客の姿がうかがえた。雷に打たれるような神聖さをも感じさせる【黒い虹】の轟音たるや圧巻もので、これぞまさしく彼らの作り上げる音の根幹にある美の姿そのものだ。それは生を反芻しながらかつ生の在り方を問い、また容赦なく襲いかかる死に屈服することのない、そのような価値観に裏付けされた命がけの美であろう。彼らのポリシーのすべてが凝縮されたと言っても過言ではない【美しい火】で本編の幕はおりた。

20161111_coast_1拍手が鳴り止まぬまま、小林がステージに再び姿を現した。ギター片手に奏でられる【あなたを愛したい】は、教会の賛美歌さながら豊穣の燦めく音の海へと誘う。その後メンバーが揃ったのち【いこうよ】が演奏された。スピードを失うことなくひたすら走り続けてきた彼らの11年間が走馬灯のように脳裏に蘇りながらも、果てしなく広がる眼前の未来へ飛び立とうとする姿がうかがえる。さらに急遽ダブルアンコールも加わり【今日も生きたね】が披露された。アンコール曲としてお馴染みのこの曲だが、11周年の節目を迎えた彼らが11月11日という「今日」を生きることは奇跡と等しいのではないだろうか。ステージの4人の呼吸が揃い、フロアの観客同士のわずかな隙間を音がすり抜けていく。双方の拍動が呼応する瞬間を肌で感じた。

今のTHE NOVEMBERSは、等身大かつ剥き出しの姿であり、何の衒いもない。〈あらゆる美しいものが僕の世界を変える〉という【美しい火】の歌詞が雄弁に語るように、バンドとして、また個々の人間として彼らを育んできた多くのものが彼らの原動力となった。そして、彼らの奏でる楽曲たちは赤子から今や2本足で立ち上がりどこまでも遠くへ疾走するエネルギーを持ち、その疾走は〈どんな醜いやつらも追いつけやしない〉ほどの力強いスピード感に溢れている。11年の歳月が築き上げた矜持、そして決して驕り高ぶることのない愚直なまでの愛を前にし、思わず「ハレルヤ」と叫びたくなる衝動にかられた。彼らは世界に祝われ、同時に世界を祝っていたのだ。

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◆2016.11.11 at STUDIO COAST SET LIST
1.Hallelujah
2.風
3.1000年
4.!!!!!!!!!!!
5.Xeno
6.愛はなけなし
7.ただ遠くへ
8.時間さえも年老いて
9.236745981
10.GIFT
11.ブルックリン最終出口
12.きれいな海へ
13.鉄の夢
14.dysphoria
15.Blood Music.1985
16.こわれる
17.黒い虹
18.美しい火

En1.あなたを愛したい
En2.いこうよ

En3.今日も生きたね

◆Special Information
2016年11月11日の新木場STUDIO COAST公演を美しい映像で残すクラウドファンディングを実施中(※2016/12/11 23:59まで)
詳細→https://camp-fire.jp/projects/view/12463

◆Disc Information

Amazon:THE NOVEMBERS/Hallelujah

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◆More Information
THE NOVEMBERS official website

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