FOX LOCO PHANTOM-2017.10.10 at代官山UNIT

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FOX LOCO PHANTOM/アルカラ/HERE/リムキャット
祝10周年 FOX LOCO PHANTOM主催 感情X線スペシャル
2017.10.10 at代官山UNIT

自由奔放な狐たちの10周年を祝す爆音と狂乱の祭典

取材・文 沖 さやこ
撮影 RIMU

 

今年結成&全国デビュー10周年を迎えたFOX LOCO PHANTOM(※以下FLP)。彼らの活動は、2011年1月を境に趣が異なる。これ以前の彼らは僅か約3年で5枚のミニアルバムと1枚のフルアルバムをリリース。驚異的にハイペースな活動だった。その結果、バンドは限界に達する。ロックバンドの登竜門とも言われる渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライヴのあと、彼らは活動を休止した。

その1年後、オリジナルメンバーである依田達義(Vo)、猫田ヒデヲ(Ba)、泉田吉伊(Gt)の3人が集結し、バンド活動を再開する。再始動の活動ペースは休止前とは対極的。“冬眠”と称し休みを挟みながらライヴ活動を行い、再始動後初作品となるフルアルバム『誰がために音は鳴る』は、活動休止前にリリースされた『GARDEN』から約3年ぶりの作品となった。

そんな紆余曲折のあったFLPの10周年を祝う自主企画イヴェント『感情X線SPECIAL』。活動初期から付き合いのある同世代バンドのアルカラとHEREに加え、そしてFLPのローディーであるクマ率いるリムキャットがオープニングアクトとして登場。FLPへのリスペクト溢れる熱演が繰り広げられた。

リムキャットは、ラウドロックを基盤にキャッチーな歌メロ、エレクトロ、男女ツインヴォーカルなどを織り交ぜ、自称する“カオティックエレクトロロック”を鳴らしていく。尊敬するバンドが揃うなかでクマは「返せることは自分たちの芸術であなたたちを楽しませることだと思っている」と話し、オープニングアクトを堂々と務めた。

HEREは獰猛さと優しさを併せ持つ音像と、持ち前のハイテンションぶりで観客をあたためる。メンバーのプレイスタイルによる派手なステージングもダイナミックだ。依田とアルカラの稲村太佑(Vo/Gt)のリクエスト(?)もあり【ギラギラBODY&SOUL】を披露すると、ステージもフロアも“BODY&SOUL!”の掛け声&振り付けで大いに盛り上がった。

アルカラはのっけからシリアスで感傷的、ひりついた音像で圧倒する。つんのめるような衝動性はまさしくエモーショナルの極みだった。MCで稲村は「初めて九州に行ったのはFLPがツアーで連れていってくれたから」と過去の恩に感謝を告げる。ラストに【半径30cmの中を知らない】を爆音で叩きつけた。稲村は去り際にFLPの新譜『心臓ディストーション』を告知し、ライヴベスト盤のDISC 2には神戸ART HOUSEでFLPとアルカラが対バンしたときの音源が収録されているというエピソードを(そのとき出演していたa flood of circleがなぜかホテルを淡路島に予約していたことも交えて)語る。アルカラもHEREも、10年以上の仲ならではの祝辞的ステージを捧げた。

トリはこの日の主役であるFLP。久石 譲の【Kids Return】をSEに依田以外のメンバーがステージに、そしてフロアの後方から観客をかきわけて拡声器を持った依田が登場する。彼が1と0を指で作ると、『百花繚乱』収録の【キリカ】からライヴはスタート。続いての【東京ロックス】でステージを暴れ回るオリジナルメンバーたちの様子はかなり痛快だった。依田はピンヴォーカルならではの華を持ち、コードを巻いてマイクを手に持つ姿も様になる。ソングライター/バンマスの猫田と彼のWフロントマンっぷりも、このバンドの大きなアクセントのひとつと言っていい。2016年からドラマーとして加入した佐々木 創のエネルギッシュなドラムは、弦楽器隊の発射台のようだ。

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再始動後のFLPの面々は、冬眠中に溜め込んだエネルギーをライヴで放出し、同時に新たなエネルギーを得ているように見える。抜群に音楽を楽しみつつも、生ぬるい要素はない。本人たちは「セミリタイアしているからそんなに(体力が)もたない」「腰に負荷が掛かっていて昔みたいな激しい動きができない」と言うが、失われない攻撃力の高さ、久し振りのライヴだとは思えない爆発力の大きさには感服する。

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曲中で演奏を止め観客をその場に座らせ、選出した観客に“マリー”と叫ばせるのがライヴの定番になっている【水槽のマリー】。この日は観客に加え、2008年にFLPでドラムを叩いていた元メンバーをフロアから呼び寄せるという10周年仕様で、ここを境にバンドは完全にギアがトップに入ったようだった。佐々木のドラムから依田が“BODY&SOUL!”をカマして【しゃれこうべ】へとつなげ、パンキッシュな【OUTSIDER】になだれ込む。いちリスナーとして彼らを観てきて思うのは、彼らは10年間音楽に手抜きをしてこなかったということ。それが如実に表れているのがステージ上だ。技術に甘んずることなく全力で演奏し歌う姿はとても美しい。本編ラストの【青いライオット】では猫田がフロアに降りてプレイ。5人の衝動は最後の一音まで燃え上がっていた。

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アンコールは「10周年だからとにかく(タオルなどを)回し続けろ!」と依田が叫び、【妄想ガール】。曲中に依田はシンバルをフロアに持ち出し、「We are FOX LOCO PHANTOM!」と叫ぶ。メンバー全員がすべての力を絞り出すように音を鳴らし続ける、フィナーレに相応しい、この日いちばんの狂乱だった。ひとりステージに残った依田は「10年振り返って……途中休んだり、いろいろあって活動ペースもとんでもない勢いで落ちて。それでもこれだけ集まってきてくれてうれしいです。今日はぐっすり眠れそうです」と感謝を告げる。一本締めでこの場を締め「サンキュー10周年!」と言い残しステージを後にした。

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FLPは11月頭で年内のライヴ活動を終了するとアナウンスしている。この日先行リリースされた『心臓ディストーション』の楽曲がライヴで聴けるのは来年になるだろう。10周年記念ライヴでたくさん栄養を蓄え冬眠に入るわけだから、11周年の狐の勢力はさらに増すのでは? 10年の集大成というには未来が見えすぎた2017年の感情X線SPECIAL。彼らの心臓の行方をこれからも追いたい。

 

祝10周年 FOX LOCO PHANTOM主催 感情X線スペシャル
FOX LOCO PHANTOM setlist
01 キリカ
02 東京ロックス
03 midnight sky walker
04 DISSECTION
05 水槽のマリー
06 MOGURA DIVE
07 しゃれこうべ
08 OUTSIDER
09 群青バタフライ
10 青いライオット
encore
11 妄想ガール

◆Release Information
2CD(新曲6曲+ライヴベスト音源20曲)
『心臓ディストーション』
2017.10.10 先行リリース
税込2,800円

◆More Information
FOX LOCO PHANTOM official website

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