amazarashi 【空に歌えば】

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amazarashi『空に歌えば』“Singin’ to the Sky” Music Video|「僕のヒーローアカデミア」OP曲

なんて感動的なMVなのでしょうか。amazarashiの歴史を見てきた人間としては、エモくならずにはいられないです。【空に歌えば】という曲を聴いたときにもそれは感じたんだけど、映像と一緒になるとさらに感動が増すなー……と視覚の効果を痛感しています。

これまでamazarashiのMVはアニメーションによるアート性の高いもの、楽曲を美しく彩るもの、言葉は悪いけれど話題作り的にフロントマンの秋田ひろむをアイコンとして用いるもの……あとはちょっとグロテスクでショッキングで奇抜なものもちょこちょこありましたね。彼らが姿を明かしていないということを重々承知したうえで、amazarashiの音楽は秋田ひろむという人のパーソナルな部分が前面に出ているものなのに、MVと音楽に乖離があるなあと思っていました。だけどこの【空に歌えば】のタイミングで、満を持して、完全に彼といまのamazarashiにフィーチャーしたMVができたというのは、もういままでのもやもやが吹っ飛ぶほどに胸に迫るものがありました。

MVの撮影は8月中旬に地元青森と都内某所で行われたそうです。公式サイトから引用すると「青森の駅前、街並み、青森凱旋公演の会場など、人がいるはずなのに無人であるという違和感あるシーンのなかで、誰にも声やメッセージが届かなく、共感してもらえなくても、それでも空に向かって孤独に歌いつづけ、足掻きつづける秋田ひろむの姿をシンメトリックな世界観、空に描かれる光のタイポグラフィーでドラマティックに表現している」という内容。そこに映る彼の姿は、間違いなくライヴで紗幕越しに見る彼そのものでした。歌詞がMVに映し出されるのは彼のMVによくある手法。ですが今回は文字を見せるというよりは文字を「光」に見立てたというデザイン性が高い。つまり歌詞の文字をはっきり映さずとも、彼の歌で言葉は伝わるからできたことだと思います。途中で過去のMVを彷彿とさせるシーンが出てきたり、TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』のオープニング主題歌というのもあって、主人公のデクくんのノートが出てくるところもいい演出です。

楽曲自体もamazarashiの歴史が走馬灯のように見えるものなので、青森と東京を舞台にした映像や、雨のシーンと青空のシーンがあるところもドラマチック。なにより〈雨は上がっていた〉のあとのラスサビになった瞬間に初の青森凱旋公演の映像とライヴ音源に挿し変わるところはもうぞくぞくするくらい感動的でした。地元青森にあれだけたくさんのひとが集まるところを見て、「彼は何度も挫折をしながら、苦しみながらも、ずっと彼の気持ちや考え、彼のなかの世界を歌い続けてきた。だからこそこれだけのひとから愛される音楽になっているんだな……」とあらためて痛感しました。何度見ても感嘆の溜息が零れ、涙腺が緩みます。

このタイミングでロゴが変わったのも何か意味があるのでしょうけど、今後のお楽しみにしておきます。【空に歌えば】はゴールテープを切ったのにそのまま走りまくってる曲だと思う。すごくエネルギッシュだし、自分もそういうふうに生きたいなと鼓舞されました。雨が上がった、それはもしかしたら、自力で雨雲を突き抜けたってことなのかもしれないですよね。背中からのカットは、間違いなく前を見てまっすぐ進んでいる男の姿でした。(沖 さやこ)

 

◆Disc Information

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