流行に乗るよりは生み出したい――現在のバンドシーンに違和感を覚えるMade in Me.の“なるべくしてなる”論
◆たぶんこの3人は、ヘイトのベクトルが同じ
――『solitaire』はMade in Me.単体としては久しぶりの音源リリースです。
彦 どんどん曲ができているので、曲が大量に渋滞を起こしていて(笑)。この録音をしてくれた中村リョーマくんと出会った時期でもあったし、解散してしまったTEDDYのじゅんちゃい(川口淳太)が手助けしてくれたりして、音源を作ることになって。だからある意味受動的で。取り敢えずまず解き放つかー……と選ばれた3曲が『solitaire』に収録されています。
優作 【大停電の夜に】は前のドラムがいたときには出来ていた曲で。【屋上へ~feel so good~】は1年くらい前、【終電DJ】は去年の6月くらいに作っていた……という感じで。
彦 ワンコーラスやサビだけの曲が超あるんですよ。でもこの3曲はそのなかでも先が見える曲で、完成させられそうだったし、「いまやりたいな」と思える要素が多く入っていたんです。
Made in Me. 3rd single 『solitaire』 trailer video
――お話を伺っていると、「ここで音源を出すためにこういうスケジュールを組もう」というよりは、そのとき自分たちの目の前に起こった出来事の流れに乗っていくスタイルなのかなと。
彦 運命に委ねている感はありますよね(笑)。“ケ・セラ・セラ”みたいなところがあるから。結局弱っちいからそう言うしかないんですけど。……そういうのを自分は“べくってる”って言うんですよ。
――“べくってる”?
優作 初めて聞いた言葉だよ(笑)。
彦 そう? 結構「べくりまくってるわ~」とか言ってるよ(笑)。今回のシングルは方向性のまったく違う3曲から共通点や異なる点を見出していって、フォーカスしていきました。
――それが“solitaire”というワードに集約されたと。
優作 俺がちょうどその頃じゅんちゃいと一緒に『孤独と不安のレッスン』という本を読んでいた時期で、“孤独”というひとりでなにかに没頭する、誰にも依存しないひとりでいる良さ――そういうのをマイブームにしていたんです。僕なりに3曲の解釈をして、登場人物がふたりいるなと思った。でもふたりいても「あ、こいつと合わねーかも」と思った瞬間に孤独を感じるし、ケンカした瞬間にも孤独を感じるし、だれかと一緒にいるからこそひとりの時間に孤独を感じるし――誰も知らなかったら孤独という言葉すらわからない。それもあって「“孤独”という言葉でいいんじゃない?」と提案したんです。
彦 最初は「“avec”か“レトロ”がいいんじゃない?」という案が出ていたんですよ。“孤独”とは対照的な言葉だけど、バグったことがしたいから、まあ“孤独”でいいかなって(笑)。英語の“solitude”はなんとなく嫌だから、ゲームの名前でも知られてる“solitaire”にしました。
優作 やっぱりちょっと変わったことがしたいじゃないですか。最近流行りの漢字2文字系のタイトルにはしたくないし。
彦 流行りに乗るよりは生み出したいから、周りが「あ~こういう感じね」と思うようなものはやりたくないですね(笑)。キモいと思われるくらいがちょうどいい。
――奇を衒う、まではいかない感じ?
彦 奇を衒いすぎるとイタいじゃないですか(笑)。奇を衒うやつも嫌いだし、流行りに乗りまくってるやつも嫌いだし……とか言ってる自分がいちばんサムイのかもしれないですけど、自分的にはこの感覚を信じていたい。こういうポジションにいるやつはあんまりいないから、ここを守って攻めといたほうがいいなと思う。
優作 “ぶれぶれ”というぶれなさだね(笑)。
彦 それは昔から変わらないところですね(笑)。大自然を感じるような世界観も好きだし、神道やエスニカルなものも好きですけど、テッカテカのサイバーパンクも好きだし、どっちも好きだから混ぜちゃうし(笑)。「絶対にこっちが優れている」みたいな考え方が本当に苦手なんです。だから自分的にそういう位置にはいたくないなって。
――ヘイトだらけですね(笑)。
彦 ほんとそうっすね(笑)。それがないと曲が書けない。たぶんこの3人は、ヘイトのベクトルが同じなんですよ。だからバンドがやれてるんだと思います。
優作 いまのバンドシーンになにか“違和感”を覚えている3人ではあるよね。
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世の中を反面教師にして我が道を行くMade in Me.
彼らがバンドシーンに感じる違和感とは?