流行に乗るよりは生み出したい――現在のバンドシーンに違和感を覚えるMade in Me.の“なるべくしてなる”論

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mim_201803_1流行に乗るよりは生み出したい――
現在のバンドシーンに違和感を覚えるMade in Me.の
“なるべくしてなる”論

L→R
彦(Vo/Gt)
ゆかり(Dr/Cho)
優作(Ba/Cho)

昨年からワンタンマガジンでもピックアップしているMade in Me.との対面インタヴューが実現した。BlackBlankとのスプリットアルバム『Reincarnation』のリリースとレコ発ツアー、地元の仲間と作るイヴェント「SMDR」の開催と、さらにフットワークを軽くしている彼らが3月にタワーレコード限定店舗&ライヴ会場で3曲入りシングル『solitaire』をリリースする。ドラマーゆかりの加入により音楽性に変化が生じ、次々に新曲を生み出す彼らは、いまいったいなにを見ているのだろうか? 彼らが独自の道を行く活動をする現在のスタイルに至ったのには、バンドシーンへの疑問点も影響していた。

取材・文 沖 さやこ
撮影 nishinaga “saicho” isao
取材協力 東放学園音響専門学校

 

mim_a_photoMade in Me.(めいど・いん・みー)
2015年3月に彦、優作、当時のドラマーで結成。バンド活動に疲れた者同士、のびのびと活動をしていたが、全国ライブハウス共同企画『仁義なき戦いツアー』より本格的に活動を開始。2016年10月にDr.ゆかりが加入。2017年5月は主催フェス「Made in Fes!!!」、夏から秋にかけてBlackBlankとともにスプリットツアー「Reincarnation tour」&クリエイターとコラボしたイヴェント「HEDGEHOGS」を開催し、2018年月には3rdシングル『solitaire』をリリース。「孤独のレッスンTour 2018」は「C.A.M TOUR 2018」と裏レコ発「Made in Night!!! vol.2」とsealfとの共同サーキットイヴェント「MASEGAKI FESTIVAL!!」を内包する。アイディアに富んだライヴ活動を精力的に行っている。(websiteTwitterInstagram

 

◆人間の個性、性質によってバンドが大きく変わったことを感じられた

――2017年は主催イベントも多数開催したり、ツアーに回ったりと、動きの多い年になったのでは。

優作(Ba/Cho) なにより大きかったのは、ゆかりが正規メンバーになって丸々1年経ったことだなと思っていて。やっとバンドとして動けた年だったかなと思います。

(Vo/Gt) そう考えると、やっぱりバンドは人間力がいちばん大事ですよね。メンバーがひとり変わっただけで、こんなにも変わるんだなと。自分のクセは変わらなくても、相手の出す音によって、自分の行動も変わってくる。そういうなかで、自分の鳴らしている音を身をもって体感しました。「女の人が叩くだけで華がある」と言われるとそれを意識したり、ナメられそうだなと思ったり――それによって音も変わるし、曲も変わってくる。人間の個性、性質によってバンドが大きく変わったことを感じられましたね。

――ゆかりさんの加入にはどういう経緯があったんですか?

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Made in Me. ゆかり(Dr/Cho)

ゆかり(Dr/Cho) Made in Me.の前のドラムが抜けたときにちょうどわたしがやっていたバンドが解散して、そのタイミングで誘ってもらって。もともとわたしが高校生の頃から知り合いで、Made in Me.も普通のお客さんとして通っていたし、ふたりは憧れの先輩って感じだったんです。これはチャンスだ!と思って勢いで飛び込んじゃいました。

優作 決まっているライヴを残して前のドラムが脱退しちゃったんですよ。それでゆかりに「行ける?」と聞いてみたら「行ける」と言うので、「じゃあ来い」と……。東名阪のツアーがゆかりを入れての初ライヴでした(笑)。それが2016年の9月です。

 でも実は、俺は女とバンド組むのが嫌だったんですよ(笑)。まじで嫌だったんですけど、なかなかドラマーが見つからなくて……メンバー探しに労力を費やすモチベーションもなかったので、これはもうしょうがないなと。これでだめだったらもういいや、みたいな惰性だったんです。でもバンドを解散するつもりはなくて。もともとバンドに疲れたもの同士で組んだから、メンバーが見つからなかったら優作とふたりでやるか、くらいの気持ちでした。

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Made in Me. 優作(Ba/Cho)

優作 ゆかりがドラムとして入ってくれたはいいけど、戸惑いはありました。My Hair is Badみたいなガツガツ系のバンドをやっていた頃の僕らを観て憧れていたけど、ゆかりが加入してから俺らはスローテンポな曲が増えてきて。

 でもそういうバンドじゃなくなったのも、ゆかりのせいなんですよ(笑)。

――というと?

 俺はやりたい音楽をやっている……というよりは“仕方なし”が選択した方向へ行くんですよ。それがある意味巡り合わせなのかなと思っているんですけど。ゆかりが入ったことでコーラスワークを考えながら曲を作ったり……みたいに、ソングライティング面が超変わったんです。スリーピースでは実現不可能なサウンドスケープも、声を楽器のひとつとして見立てて重厚に聴かせたり――昔「こういうものも入れたいのにな」と思ったものが入れられるようになって。前のメンバーとだったら、絶対に【19hours】はできてないと思う。

優作 うん。無理だね。


Made in Me. – 19hours (Music Video)

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Made in Me. 彦(Vo/Gt)

 俺は量子力学というものが好きで。その基本的な性質である“重ね合わせ”や“不確定性原理”をさらにバンドで感じるようになったんです。箱のなかに粒子があって、箱が閉じているときは箱のなかのどこにでも粒子があるけれど、箱を覗き込んだ瞬間に箱のなかのどこにあるかが確定する――ゆかりが箱を覗き込んだ瞬間にMade in Me.はまったく違うものになってしまった。同じコード進行でも重ね合わせるコーラスによってまったく違うパラレルなものができあがる。そこから自分の好きな世界観に寄った気がします。……俺は優柔不断だから、量子力学を持ち出して自分を肯定して(笑)。

優作 よく彦は「別の世界の自分がああいう曲をやっているだろうから、俺はやらなくていいや」みたいに言ってますね。俺も高校時代から彦を知っているから、そこから見ていっても最近の楽曲は全然違うものだなと思います。昔の曲は“普通にいい曲”というか。でも今回の『solitaire』を含め、本当に彦の好きなものや思想、彦という人間性が曲に詰め込まれている気がしますね。

――ドラマーさんの脱退がいい方向にはたらいたということですよね。

 元ドラマーは中学校からのツレだったから、できればずっと一緒にやっていたかったですけどね。でもあいつがバンドから離れた瞬間にこうなって、自分のなかにこういう志があるんだなというのを感じられた。やりたいことを狭めていたんだなと思いました。

優作 すべてがいいように動いていくんだなと思います(笑)。その出来事が起こった当時はきついけど、あとあとになってみれば良かったかもな……と思うことばっかりですね。

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solitaire=孤独というシングルタイトル
なぜ孤独? なぜsolitaire? そこにはとある思考が関係していた

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