妄想デザイン室特別編-2019.10.22 at 三軒茶屋GRAPEFRUITS MOON
佐藤静奈アコースティックトリオ/ペパーミント/小田和奏×HAZE/大宮洋介
「佐藤静奈の妄想デザイン室 特別編」supported by ONE TONGUE MAGAZINE
2019.10.22 tue at 三軒茶屋GRAPEFRUITS MOON
作品展×ライヴイヴェント
1年間のアートワーク連載の集大成の一夜
取材・文 沖 さやこ
撮影 アンザイミキ
2018年11月から1年間ワンタンマガジンにて連載されたシンガーソングライター佐藤静奈によるアートワークコラム『妄想デザイン室』。その集大成を記念し、三軒茶屋GRAPEFRUITS MOONにて作品展&ライヴイヴェント「妄想デザイン室 特別編」が開催された。イヴェントは連載第1回ゲストの小田和奏、第3回ゲストのペパーミントを招いたスリーマン。親交のある3人ならではのアットホームな空間が繰り広げられた。
ペパーミントはサポートギタリストとともに登場。1曲1曲について丁寧に語りながら、最新作『AKA.TO.AO』収録曲を中心としたセットリストを届ける。ボサノヴァ風の【春でした】や、秋をイメージして制作したという【せっけんのにおい】など、キュートとセクシーを兼ね揃えた歌声は、歌詞に綴られている想いを情感たっぷりに紡ぎ出していった。
彼女が『妄想デザイン室』に提示した「コーヒー&恋愛」「ほろ苦いのにまた欲しくなってしまい抜け出せなくなるような、コーヒー、そして恋の中毒性みたいなものをテーマにした女性目線の作品」というテーマに近い楽曲という理由で披露された【Chocolate】は、まさに甘さと苦みのある空気感。《とろける》という一節の歌い方は、まさにとろけるチョコレートそのもののようだ。伸びやかな歌声を響かせたラストの【うたになる】まで、色とりどりの可憐な歌声で空間を彩った。
小田和奏はドラマーのHAZE/大宮洋介を招いた2人編成でのパフォーマンス。晴れやかなピアノの音色が特徴的な【colors of life】から、爽やかで力強く雄大なサウンドスケープを広げていく。【コーディの苦悩は今日も続く】でのジャズテイストのアプローチや、お互いのメンバー紹介をしながらソロ回しへとスマートにつなげていく手腕はさすがだ。
楽しい夜を経ての二日酔いを題材にした【higher grayer】のあと、ソロとしては2年半ぶりの新作をリリースした旨を語り「2年半あるといろんなことが変わっていく」と心情を吐露する。「静奈さんともペパーミントとも久し振りに会ったんですけど、いろんなことがちょっとずつ変わって、それでもまた会えるというのは、いいなあと思います」と前置きしてからの【さよならドリーマー】は、センチメンタリズムと力強さがない交ぜになった演奏と歌声が観客のハートをしかと掴んだ。ラストはエモーショナルで透明感のある歌声を響かせる【ターミナル】。7曲を通して長きにわたる音楽人生を感じさせるステージだった。
本日主役の佐藤静奈は、パーカッショニストの髙盛陽子とキーボーディストの宇川祐太朗を招いての「佐藤静奈アコースティックトリオ」として登場。このライブは『妄想デザイン室』ありきということで、それぞれで制作したジャケットのアルバムに収録されていそうな曲でセットリストを構成し、結果3曲新曲を書き下ろしたとのこと。本編はCDリリースしていない楽曲のみを披露するという異例の試みとなった。
小田の出した「この秋から冬に向けての季節を踏まえた、アナログレコードにしたくなるようなジャケット」というお題に合わせ選曲された【déraciné】では緊迫感のある音色で激しさと優雅さを演出し、【ガラスの向こう側】では顔色を変えないシンセの音色と激情的な歌声のコントラストで観客の意識を引きつける。ペパーミントの出したお題に合わせて披露された【嘘とカフェオレ】は重い愛情を吐き出すようだった。
和メロのギターロック【春の祈り】、のどかなムード漂う【necropolis】を演奏すると、Migimimi sleep tightの宮川依恋と松本誠治が考案した架空バンド・おとぎやの楽曲をこの日のために書き下ろしたと語る佐藤。どうやら松本は「最終回なら楽しく終わるのがいいんじゃない?」と考えておとぎやというバンドを想像したとのこと。【おとぎやのテーマ】と題された同曲もそのマインドを継承した軽快な楽曲で、本編をハッピーエンドで飾った。アンコールは最新作の表題曲【フーカ・リッカ】。この日に生まれたあたたかい空気感をもれなく豊かに含んだからこそのサウンドスケープとヴォーカルだったと言っていい。晴れやかな締めくくりは、『妄想デザイン室』のエンドロールにぴったりだった。
挑戦だらけの初連載に、時間を縫って計画した初自主企画ライヴと作品展。アイディアと連載場所を提供し、ページを作成する程度のお手伝いしかしていないONE TONGUE MAGAZINEがこんなことを言うのは差し出がましいが、『妄想デザイン室』が彼女のアーティスト人生において掛け替えのないひと枠になっていたら、ウェブマガジン冥利に尽きる。1年間お疲れさまでした。そして完走おめでとうございます。
◆佐藤静奈 Information
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連載「佐藤静奈の妄想デザイン室」(全6回)