KOTORI 【RED】

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KOTORI 「RED」 Official Music Video

読者さんやアーティストさんからおすすめしていただいたMVを毎日紹介する「紹介されたMV紹介チャレンジ」もとうとう最終日。DAY39は、ようこさんからおすすめしていただいた、KOTORIの2019年公開のMVです。

2018年12月にリリースしたミニアルバム『CLEAR』に収録されており、MV用に音源を再録。MVはギターヴォーカルの横山優也さんの故郷・宮崎と、現在の東京を想って制作されたとのことです。

横山さんが「葬式で流したい」とおっしゃるのは、きっとこれまで生きてきた人生が詰まった1曲だからだと思います。故郷の宮崎と現在の拠点である東京を扱った映像も、東京やバンドのシーンは動画だけど、宮崎のシーンに動画と写真が使われているところに「過去を焼き付けている」「故郷は大事な記憶がたくさんある場所で、いまでも帰ってこれる場所でもある」という意味があると思う。

地元と言える場所がないわたしにとって、この曲で吐き出される感情や感覚は正直わからないんです。居場所がないぶんどこにでも行けるけど、どこにいても余所者のような気がしてしまう。フリーランスライターという仕事もそういう感覚が強いです。おまけに小さい頃から東京も身近な場所だったので、東京というものの存在の大きさもわからない。だからやっぱりこういう作品に触れると真っ先に「地元持ってる人いいな~」と思うし、それがわからない自分に対して寂しさや人として欠落した感覚を覚えます。

cinema staffの三島想平さんにインタヴューをしたとき、地元を愛する理由を尋ねると「“どういう場所に生まれた”というよりは“人”だと思う」という返答をいただきました。大事な人と出会い、過ごした街だからこそ、その土地を好きになるのだと。なるほどと思いました。 このMVの横山さんの宮崎の映像や写真からも、横山さんがこの小学校で友達と遊んだり勉強をしたり、このお店に買い物に来たり雰囲気が伝わってきますものね。そこには必ず「その場所で出会った人」がいたんだと思います。

まったく違う環境の宮崎と東京だけど、それでも真っ赤に染まる夕焼けはいつの時代もどの場所でも同じ色をしているし、自分の人生は途切れることなくずっと続いている。宮崎で出会えなかった仲間たちと、東京でバンドをやっている。夕焼けを背負って音楽を鳴らすのは、いままでの人生すべてを背負っていることと同義なのでしょう。楽曲のアレンジや音色にも、これまで生きてきたなかで影響を受けたバンドのエッセンスが感じられます。

漠然と「上京ってロマンチックだな」とずっと思っていたけれど、その正体はその人が人生を自分の手で動かしていく重要なポイントだからなんでしょうね。「挑戦」という言葉に置き換えられるとも思います。上京するときは敵地に乗り込んでいくような感覚だったかもしれないけれど、東京の街でいろんな経験をしていくたびに、故郷では感じられなかった素敵な想いをして、少しずつ少しずつ居場所が生まれて、居心地が良くなっていくのかな。すると必然的に故郷でしか味わえなかった出来事や思い出も浮かび上がってきて、故郷も特別な場所になっていくんだろうな。

全部想像でしか語れない自分がとても寂しいけれど、知らない人間にも強く響いてきた。それは強い想いがないとできないことですし、この【RED】は知らないのに知っているような錯覚さえ起こりました。横山さんの人生が心のなかに真っ赤な炎として宿ったのかもしれません。ロックバンドってロマンチックだな……とあらためてしみじみ。ようこさん、おすすめありがとうございました!(沖 さやこ)

 

◆Include Album on Spotify

Artist Page – KOTORI

◆Artist Information
http://kotori-band.com/
https://twitter.com/kotori_band

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