indigo la End『夜行秘密』

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ALBUM
indigo la End
『夜行秘密』
2021.02.17 release
WARNER MUSIC JAPAN/TACO RECORDS

 

大切なものとの埋められない距離

 

これまで幾度となく、indigo la Endの秀でている点、特筆すべき点を挙げてきたという自負はある。ゆえにこれまでに書いてきた、楽器隊それぞれの卓越した表現力やバンドとしての強度、メロディの美しさ、歌詞の世界などについて論じるのは敢えて控えようと思う。そんな人間がなぜこうしてキーボードを叩いているのかというと、『夜行秘密』で或る重要な事実に気付いたからだ。

indigo la Endの音楽が表現しているのは“距離”だ。“隔たり”と言い換えてもいいかもしれない。【夜行】の《行かないで》、【たまゆら】の《遠くへ遠くへと追いやった》など、大切なものが離れていく様や、手の届かない場所に思いを馳せる様――この11年間ずっと、作品ごとに新たなチャレンジを重ねながらも、あなたとの間にどうしても存在してしまう距離と、そこに存在する空気を丁寧に音楽へと昇華しつづけているのだ。彼らの音楽が「夜」や「雨」というワードと親和性が高いのは、「隔たり」という共通項ゆえだろう。

我々人間は、ひとりぼっちの集まりだ。自分の思っていること、感じていることを100%相手に伝えることはできない。ゆえに人はすれ違う。この気持ちを伝えきれないことに、あなたからの気持ちを掴み切れないことに心を痛めてしまう。だがそのなかで生まれる揺らぎが、新たな豊かさや幸せへと通ずる道を照らすことも確かだ。それらの事象が起こるのは、根幹に存在するものが愛情だからだろう。

ソングライターの川谷絵音は「ひとりぼっち」を肯定も否定もせず、魅せられているものとの距離を想うことで湧き上がった感情や空気感、景色といった「ただそこに浮かび上がる事実」をただただ真摯に音色と言葉で描き続けている。それをメンバーがそれぞれ自分なりにかみ砕くことで、新たな視点や色味、多角性が生まれ、ひとつの楽曲が完成する。冬の夜に闇と星と月明かりと冷たい空気が佇むのと同様に、異なる色とかたちを持つ4人が着かず離れずの距離感で描く空気感も、心地よさの理由だろう。すべてがとても自然で誠実だ。

せつなくて、あたたかくて、寂しくて穏やかで、だけど激しくて、どこまでも遠くまで続いていくような奥行きを孕んだindigo la Endの音楽は、様々な人間の思想がひしめき合い破裂寸前の現代社会で、聴き手をひとりぼっちにさせてくれる。つまりそれは一人ひとりの心に光を灯すことと同義だ。愛おしいものと接することで生まれた傷から零れてきた様々な想いを、一つひとつ拾い上げるように気付かせてくれる。今作とともに、自分さえ知らなかった秘密を手にするような、離れてしまった大切なものが秘密に包まれるような、心のなかに広がる夜の旅に出てみてはいかがだろうか。(沖 さやこ)

 

◆Release Information
indigo la End『夜行秘密』
2021.02.17 release
WARNER MUSIC JAPAN/TACO RECORDS
[track list]
1. 夜行
2. 夜風とハヤブサ
3. 華にブルー
4. チューリップ
5. 左恋
6. たまゆら
7. フラれてみたんだよ
8. 夜漁り
9. 不思議なまんま
10. 晩生
11. さざなみ様
12. 固まって喜んで
13. 夜光虫
14. 夜の恋は

Details:https://indigolaend.com/discography_album.php
linkfire:https://indigolaend.lnk.to/yakohimitsu

◆Spotify

Artist Page|indigo la End

◆Official Information
https://indigolaend.com/
https://twitter.com/indigo_la_End
https://www.instagram.com/indigolaend_official/

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