未完成VS新世界・澤田健太郎、七転八倒のバンド人生が導いた「リスナーに届けたい気持ち」

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mikansei_aphoto_202105未完成VS新世界・澤田健太郎、
七転八倒のバンド人生が導いた「リスナーに届けたい気持ち」

 

未完成VS新世界というバンドの歩みを知れば知るほど、とても壮絶なバンド人生に絶句する。苦難が訪れるたびに立ち上がるタフネスはどこから来るのだろうと思っていた。だが今回、フロントマンの澤田健太郎に実際会って話を聞いてみると、“バンド”という概念や“未完成VS新世界”という場所が、彼に懐いているように見えた。その両者の関係は腐れ縁にも似たフラットさ――ケンカをしてものちに自然と仲直りしたり、しばらく連絡を取らなかったけれど会えばなんの違和感もなく会話が弾む、気の置けない友人同士の空気感にも似ている。それはこれまでの様々な紆余曲折がもたらした結果なのかもしれない。
約8年振りの新作は、2017年の再結成直後に制作された「とっておきの夜のこと」と、2020年の再始動後に生まれた「2021年5月17日の未完成VS新世界」の2曲。今作に至るまでのバンド模様と、「いつバンドが終わってもいいようにしておきたい」という澤田の心理を、彼のソロインタビューで探った。

取材・文 沖 さやこ

 

◆未完成VS新世界(みかんせい・ばーさす・しんせかい)
澤田健太郎(Vo/Gt)、海藤祐司(Gt)、安田強太(Ba/Cho)によるロックバンド。2005年夏、札幌にて澤田と安田含む3人の弾き語りミュージシャンで結成。2007年に初めて東京でのライブを行い、2008年夏に上京。2009年春、『夕暮れ狩り』で全国デビュー。2011年5月、澤田が階段から滑り落ちた際に左手薬指を切断するという大事故に見舞われる。1ヶ月半の入院を経て活動を再開し、2012年5月にミニアルバム『誰にも知られずに消えていった誰かの歌みたいに』をリリース。翌年7月にミニアルバム『未完成の商業音楽』をリリースするも、2014年はライブ活動が行えない状況に陥り、2015年2月に解散。2017年にキーボーディストを入れた4人編成で再結成。2018年8月、サポートドラマーの青山友樹(ex. nano.RIPE)が逝去し、事実上の活動休止に。2021年5月、約8年ぶりの作品『とっておきの夜のこと / 2021年5月17日の未完成』を配信リリース。安田は2019年より療養中のため、リズム隊はサポートメンバーが務めている。
(official:websiteTwitter

 

◆週に3、4回会うくらいのすごく仲のいい友達がいなくなったのに東京にいる意味あるの? って

――今日はよろしくお願いいたします。

澤田健太郎(Vo/Gt) お願いします。インタビュー久し振りだから緊張する!(笑)

――わたしも10年くらい前から存じ上げていて、ライブも何度か観ているバンドのフロントマンさんにインタビューなので、とても緊張しています(笑)。未完成VS新世界は少々特殊な活動遍歴なので、まず近年のことを振り返られればと思うのですが。

澤田 はい。大丈夫です。

――未完成VS新世界は2018年8月から活動休止に入り、2020年2月にドラマーを募集なさっています。この1年半の期間のバンドや澤田さんのモードから教えていただけますか?

澤田 まず、活動休止になった理由としては、サポートでドラムを叩いてくれていた青山友樹が死んじゃって(※2018年8月21日に急性心不全で逝去)。いろいろあって解散して、そこから2017年に再結成して、この先も活動をしていこうと思っていたなかで起きた出来事だったんです。そのタイミングでキーボードがバンドを辞めて、友達が死んでしまったうえに、ここからまたメンバーを集めるのか……と考えたら、ちょっとバンドやりたくねえな、と思っちゃって。

――青山さんが亡くなったこと以外にも、さらにいろんなものが重なって。

澤田 そうっすね。僕、よく「音楽やめたい」と言ってるんですけど、心底やめようと思ったタイミングのひとつでした。青山はサポートメンバーであり、なにより週に3、4回会うくらいのすごく仲のいい友達だから、そいつがいなくなったのに東京にいる意味あるの? って。でも俺とは反対に、ベースの安田だけはずーっとバンドをやりたがってたんですよ。


未完成VS新世界『未完成の商業音楽』

――安田さんは2019年に体調を崩されていましたが、お身体の具合はいかがでしょうか。

澤田 いまだに全然大丈夫じゃないですね……。いきなり意識が飛んで倒れてしまう病気なので、休養前はライブ中に演奏が止まることも多々あって、仕舞いにはステージ上で倒れちゃうんですよ。それだと誰も幸せにならないし、安田がこの状態である限り一緒にステージに立つのは難しい。でも安田は僕よりバンドに対するやる気があるし、バンドをやりたがってるんです。

――安田さんの熱意が未完成VS新世界を再び動かした。

澤田 僕自身もずっとやめるやめると言い続けて、やめようと決心するといつも「この先の人生なにをして生きていけばいいんだ?」という疑問にぶち当たって、「本当に音楽しかやってこなかったから、やめる必要もないのかな」という結論に至ってきて。ずっとバンドをやるかやらないかで悩んで、でも安田を東京に連れてきたのは俺だし、そんなメンバーが続けたいと言うならやろうかなって。あいつが治ったときに、戻ってこれる場所は残しておきたかったんですよね。なんとか無理やりにでもバンドを続けることにしたんです。

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再始動が決まったなかで爆発した、メンバー間の仲違い。
サポートメンバーを招いた3ピースでレコーディングを済ませたあとに、澤田が感じたこととは?

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