求めてもらえるから生きていける――FLiP活動休止から5年半、より自由に躍動するSACHIKOの音楽欲
◆「歌うことを辞めたら死んでしまうんじゃないかな」と思うくらい、歌うことは自分にとって大事
――コロナ禍の「うたつなぎ」で、SACHIKOさんが新曲と、そのあとにおまけとしてFLiPの曲をメドレーで歌った動画をアップしていました。活動休止以降、公の場でFLiPの曲を歌ったのはあれが初めてでしたよね?
SACHIKO そうですね。それまでは避けてました(笑)。でもFLiPの曲たちが大切であることに変わりはないし、「うたつなぎ」ではFLiPの曲を歌ってもいい気がしたし、喜んでくれる人がいっぱいいる気がしたんです。ひとりで考える時間が多いときほど、音楽は必要だと思っていて。「うたつなぎ」では歌声が光になっていたと思うから、光をちゃんと灯している人が多ければ多いほど、勇気づけられる人は増えますよね。わたしにとっても「うたつなぎ」は、「こんなに聴いてくれてる人がいるんだ!」と知れた、とてもいい機会でした。
――「いまの自分を見てほしい」というSACHIKOさんは、FLiPの引き出しに鍵を掛けていた。そこからじょじょに、その引き出しを開閉できるようになっていると思うんですよね。MindaRynさんの楽曲にはFLiPを彷彿とさせる楽曲も多くて。
SACHIKO マイちゃん(※MindaRyn)のディレクターさんがFLiPを知ってくれていて、活動休止ライブも観に来てくれていたんです。マイちゃんのデビューに当たって誰に楽曲を頼もうか考えているときに、ふとわたしのことを思い出してくださったみたいで。すごくうれしかったですね。「FLiPテイストの楽曲を作ってもらいたい」と言っていただいて、求められていることには全力で返すのがモットーなので、喜んで作っています。なかでも『転生したらスライムだった件』は大好きな作品なので、そのオープニングテーマを書けるとなったときはすごいテンション上がって「やった~! めちゃくちゃかっこいい曲作ります!」って(笑)。
MindaRyn – Like Flames
(TVアニメ『転生したらスライムだった件 第2期』オープニング主題歌 第二弾) | Music Video
――ははは。MindaRynさんは日本のアニソンが好きな海外の方ですし、FLiPで日本の要素と海外の要素が混じったロックを作ってきたSACHIKOさんと相性がいいと思われたのかもしれないですね。
SACHIKO FLiPも活動休止してある程度時間も経っているし、マイちゃんの曲をきっかけに「SACHIKOっぽいメロディの節回しだな」や「懐かしいな」みたいに感じてもらえたらいいな。これはわたしのエゴだけど、いまもSACHIKOが生きていることを、音楽で伝えられたらなと思うんです。
――活動休止からある程度時間が空いていたのもあって、「FLiPテイストの楽曲を」というオーダーにも新鮮な気持ちで向かい合えたところもあるのかもしれないですね。それにしても、活動休止から数年経って、おまけに表向きな活動が控えめな時期にオファーが来るって、まず有り得ない気がします。
SACHIKO いろんな人から言われます(笑)。ここ1、2年、とてもいいタイミングでいろんなことが回っているし、少しずつ作家のお仕事をいただけるようになって、ただただありがたくて。LYSMの楽曲提供も、Twitterで提供した楽曲の告知をしたあとに「めっちゃいい曲作るので、楽曲提供のお仕事ください」とつぶやいたことがきっかけで決まったんです(笑)。声を掛けてくださったLYSMのスタッフさんが、お願いできる女性クリエイター誰かいないかなと探していたときに、そのツイートを見て「SACHIKOちゃん昔からの知り合いだし、FLiPの曲も好きだからお願いしようかな」と思ったらしくて、すぐDMが来たんです。
――へええ。なんて神がかったタイミング。
SACHIKO 本当に! 普段そんなこと全然つぶやかないのに(笑)。求めてくれる人には、本当に感謝しかないんです。だからこそ、まだまだくすぶってはいるけれど、もっと返せるように頑張りたいんですよね。
LYSM – ネオンで花束を (Official Video)
――バンドという新しいスタートは頓挫してしまったけれど、楽曲提供が盛んになったことでSACHIKOさんが音楽の世界で精力的に活動していることが広まってきていますよね。
SACHIKO そうですね。いまは提供がメインになっていますけど、「歌うことを辞めたら死んでしまうんじゃないかな」と思うくらい、歌うことは自分にとって大事なんです。じつはいま、FLiPのSACHIKOという素性を伏せた歌手活動をしているんですよ。
――え!? そうなんですか!?
SACHIKO 提供をコンスタントにやるようになっていくなかで、このまま100%作家に振り切りたくはないな、ボーカリストとしてゼロからスタートしたいなという気持ちが湧いてきたんですよね。聴いてくれる人が「もしかしてこれSACHIKO?」と気付いてもらえるようになったら公表するかもしれません。
――SACHIKOさんはよくSNSに「歌がないと生きていけない」と書いてらっしゃるけど、そのわりにあんまり表立って歌わないな、弾き語り動画をアップしたり、新曲リリースもそこまで盛んではないし……と思っていたらまさかこっそり活動をなさっていたとは(笑)。
SACHIKO そうなんです(笑)。まだ全然バレてなくて、「この人の声、なんか前から知っている気がする」というコメントを見たときはちょっとひやっとしたかな(笑)。でも歌を楽しみたくて始めた活動なのに、別人格を作っちゃうと疲れるじゃないですか。だからもうちょっと自然体でその活動と向き合ってもいいかなと思っているところですね。SACHIKOを知らない人にも「声が好きです」と言ってもらえることが、すごく励みになっているんです。
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MAISON”SEEK”以来のソロ楽曲「little star」の制作とレコーディングで気付いた、音楽へのピュアな気持ち。現在の彼女と音楽の関係性とは