コロナ禍を逆手に新領域へ仕掛けるThe;Cutlery、「生きづらい;あなたへ」捧ぐ4ヶ月

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TheCutlery202110_1コロナ禍を逆手に新領域へ仕掛けるThe;Cutlery、
「生きづらい;あなたへ」捧ぐ4ヶ月

文 沖 さやこ
写真 TAMA(@tm_livephoto

 

「セミコロン(;)」――名のとおり「コロン(:)」の半分であり、ビジュアルや意味的にもピリオド(.)とカンマ(,)の中間的な立場である。表層的に捉えるとその存在は、曖昧で半端なものに感じられるかもしれない。だがコロン、ピリオド、カンマほどではなくとも様々な場面で使用される、文章をつなぐための大事な記号。セミコロンがあるからこそクリーンに受け止められる文章は数えきれないだろう。

この記号を屋号の中心に据える稀有なバンドがいる。The;Cutlery。2016年に結成された、東京を中心に活動している4人組だ。2017年12月に映像作家・青木亮二(Logfilm)のディレクションで初MV「no regret」を発表。2018年は1月に1stミニアルバム『water; fall』をリリースし、1stフルアルバムを制作するためのクラウドファンディングでは121%を達成する。2020年4月には初の全国流通盤となる1stフルアルバム『water; echo』を完成させ、同年夏と秋には無観客配信ライブを行うなど、時代の潮流を巧みに乗りこなしながら、自身の音楽をより多くの人へと届けるべく奮闘している。


The;Cutlery 無観客配信LIVE

メンバー4人はそれぞれ好きな音楽ジャンルが異なるという。それゆえかThe;Cutleryの音楽は、シューゲイザー、エモ、オルタナ、UKロックなど様々な音楽性を内包し、主に英語詞で綴られた歌詞でありながらも、日本ならではのあどけなさのあるポップなメロディなどが瑞々しく佇んでいる。どこにも属さず、様々な音楽性をつないでひとつの音楽を成立させたバンドサウンド。つまり「;」は彼らの体現する音楽性を端的に表したシンボルでもあるのだ。

そんな4人が、2021年下半期に大きく動き出した。2020年8月に行った無観客配信ライブの公演タイトル「生きづらいあなたへ」を継承した、4ヶ月連続自主企画ライブ「生きづらい;あなたへ」の開催である。

ゲストアーティストはバンドと親和性が高くも幅広いラインナップが特徴的だ。9月26日(日)に開催された「第壱弾」にはAliAとMarmalade butcherが出演。10月21日(木)開催の「第弐弾」にはaquarifaとそこに鳴る、11月19日(金)開催の「第参弾」には空想委員会と雨のマンデーズと、ライブハウスシーンで活躍を続けてきたバンドが名を連ねている。全公演が生配信され、その映像を手掛けるのは映像作家の小嶋貴之。著名な実力派であることはもちろん、2018年公開のMV「Snow Bright Syndrome」のディレクションを務めているため、バンドへの理解度も高い人物だ。つまり「生きづらい;あなたへ」は現場も配信も盤石ということである。

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4人がこれだけの舞台を作れたことには、驚くと同時に腑に落ちる。活動初期から自主ながらに積極的に行動を起こし、様々なシーンへとコネクトしてきた。コロナ禍でもその足を止めることなく、逆境のなかで奮起しながら今できることをひたむきに追い続けていた。バンド史上最も大掛かりな企画が実現したのは、これまでの活動で培った行動力や精神力の賜物だろう。その勇敢な姿勢は、ライブにも表れていた。

9月に開催された第壱弾を配信でアーカイブ視聴した。ドラマチックなライブを繰り広げたAliAと、観客の前で演奏できることへの興奮を、淡々としつつもひりひりとした音像で伝えたMarmalade butcherのあと、主催者でありこの日のアンカーとして登場したThe;Cutlery。一つひとつの音色に集中力が通い、インターネット回線を通してもこの日に賭ける並々ならぬ思いが伝わってくる。

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プレイヤーにもフィーチャーし、臨場感だけでなく美しさも重んじた高画質のライブ映像は、バンドの本質をクリアに届けてくれた。壮大でシリアスなサウンドスケープでありながらもメンバーは全員自然体で、ライブタイトルにもあるようにコロナ禍で生きづらさを抱えている観客・視聴者の心のなかに渦巻く闇に、光を射すべく真摯に演奏に向き合っていた。邪念のない音と佇まいに、おのずと引き込まれてゆく。

ラストに披露した日本語詞の「and loop」で中山真之介(Ba)が軽くクラップを促すと観客も一斉に頭上で手を叩き、それを見た一二三ふみを(Vo/Gt)が「ありがとう」と笑顔を浮かべたシーンは、ステージと観客が素直な思いを通わせていることを証明していた。それはとても純粋で眩しく、この日の成功をなによりも物語っていたように思う。

大団円で4ヶ月連続自主企画の初回を終えたThe;Cutlery。おそらくこの企画は、バンドにとってこれまでにない刺激を数多にもたらすはずだ。つまりこの4ヶ月間を機に、バンドがさらなる進化をすることが予想される。怯まずに新しい挑戦へと突き進む4人は、この4ヶ月間で何を見て、何を掴むのだろうか。この先も注視していきたい。(了)

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◆Live Information

The;Cutlery 連続企画「生きづらい;あなたへ」

第弐弾
2021.10.21(thu)東京・新代田FEVER
OPEN 17:30 / START 18:00
Act : The;Cutlery、aquarifa、そこに鳴る
<Ticket>
Livehouse : ADV ¥2500 (+1drink) / DOOR ¥3000 (+1drink)
e+ https://eplus.jp/
Streaming : ¥1000
ZAIKO https://fever.zaiko.io/_item/343278
※購入可能期間9.28(tue)10:00~10.24(sun)20:00
※視聴可能期限 10.24(sun)23:59

第参弾
2021.11.19(fri)東京・新代田FEVER
OPEN 17:15 / START 17:45
Act : The;Cutlery、雨のマンデーズ、空想委員会
<Ticket>
Livehouse : ADV ¥3000 (+1drink) / DOOR ¥3500 (+1drink)
e+ https://eplus.jp/
Streaming : ¥1000

最終弾
2021.12.XX(詳細後日発表)

◆Recently Release
thecutlery_wecho_jkThe;Cutlery
1st full album『water; echo』
2020.04.22 on sale
残響record / ZNR-207
¥2,530(tax in)
[track list]
epilogue ; Miscanthus sinensis
01. 404 Not Found
02. melancholy room
03. You never know how “STRONG” you are until being strong is the only choice you have
04. no regret(album.ver)
05. Limit amplifier
06. my life is shit
07. snow bright syndrome
08. It’s not me
09. 目
10. Myosotis
prologue ; LIFE
Buy : https://zankyo.base.shop/items/28297537
Streaming : https://linkco.re/Quat9Zv0

◆Spotify

Artist Page|The;Cutlery

◆More Information
website the-cutlery.com
Twitter @thecutlery_com
Instagram @thecutlery_official
Facebook @thecutlery.f.a.s.y
YouTube channel -The;Cutlery

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