歓喜が生み出す「ポップな歌と破滅的な演奏」 ガストバーナーが切り開く独自の運命
歓喜が生み出す「ポップな歌と破滅的な演奏」
ガストバーナーが切り開く独自の運命
(L→R)
16ビートはやお(Dr)
デストロイはるきち(Vo/Gt)
辻斬りっちゃん(Ba/Cho)
加納靖識(Gt)
マイケルTHEドリーム(Producer)
ガストバーナーの2021年11月から始まるツアーのタイトル「開運ツアー」。一瞬目を疑うようなタイトルだ。当初は「昨年リリースされたミニアルバム『Happy』を受けて、よりそれを進化させたワードなのだろうな」と思っていたが、よくよく考えると「開運」なんて『なんでも鑑定団』以外そんなに気軽に使えるものではない。「このツアーをきっかけに、より運を切り開いていくぞ」という燃え滾る熱意と、「このツアーに来た人には幸運が待っている」という自信がなければ、こんな大層なワードを使えるわけがないのだ。
2020年秋からライブハウスでのライブを開始し、2021年に入ってからは新曲を多数披露している彼ら。現在のバンドのモードを確かめるべく「TOKYO CALLING 2021」に足を運んでその目で4人のステージを観てきた。4人とも飛び切りの笑顔で演奏しながらも、音は極限まで鋭利で殺気立っており、危うさとポップネスが猛烈な勢いでせめぎ合う。そんなサウンドスケープにのっけからノックアウトされてしまった。
2021年10月26日には1stデジタルシングル「ハロウィンパーティー」をリリース。より加速するタイミングをキャッチし、プロデューサーであるマイケルTHEドリームを交えた5人に話を訊いた。
取材・文 沖 さやこ
撮影 ガストバーナー&マイケルTHEドリーム
◆ガストバーナー
2020年3月、ex.みそっかすのデストロイはるきち(Vo/Gt)が中心となり結成。プロデューサーはex.みそっかすのキーボーディスト・マイケルTHEドリーム。同年6月にアルカラ主催のYouTube配信「おうちネコフェス」で初めて公のパフォーマンスを行い、9月に初作品『Happy』をリリース。寺院の境内にある蔵を改造した堺のレコーディングスタジオ・Hidden Placeにてオンラインワンマンライブを開催する。11月から有観客となる初ツアー「ガストバーナーpresents『Are you Happy?』」を開催し、2021年4月に渋谷O-Crestのアルカラとのツーマンライブ、京都GROWLYのスリーマンライブでファイナルを迎える。同年10月に1stデジタルシングル『ハロウィンパーティー』をリリース。翌11月から行われる東名阪ツアー「開運ツアー」のファイナルとなる名古屋公演は、バンド初のワンマンライブ。
(Official : Twitter / YouTube channel)
◆音そのものの主張が激しいから、マイケルが作ったフレーズでもそれぞれの色になる
――この1年強、SNSを通じてガストバーナーの動向を見てきましたが、本当にいつも楽しそうだしチーム全員仲良しですよね。
16ビートはやお(Dr) みんなガストバーナーが楽しくて、機材車もちっちゃくなってきてるんです。
――え、機材車?
辻斬りっちゃん(Ba/Cho) 「寂しいから出来るだけ近くにいたい」っていう理由で機材車が小さくなってます(笑)。
デストロイはるきち(Vo/Gt) ハイエースだと広いぶん距離が遠くて会話できないんですよ。移動中も音楽流さず、みんなで会話ばっかりしてます。
マイケルTHEドリーム(Producer) へええ。みそっかす(※デストロイはるきちとマイケルTHEドリームが以前所属していたバンド。2020年2月解散)はメンバー各自ヘッドホンやイヤホンで自分の好きな曲を聴いていたから、全然違いますね。
はるきち 座席同士の距離が近くて燃費がいいという理由で、最近の機材車はもっぱらレンタカーのプリウスです(笑)。
――へええ。セダンタイプの車にバンドの機材や荷物が全部乗るんですか?
加納靖識(Gt) このバンド、機材少ないから全然乗るんですよ。はやおくんはスティックだけだし(笑)。
はるきち 搬入と搬出のストレスのなさがヤバいよね。レコーディングやスタジオで4人なり、マイケルを入れて5人なりで話しているのも楽しいし、遠征も話してるうちに気付いたら目的地に着いてるんです。ライブ前の楽屋もライブ中も楽しいし、ライブ後はちょっと反省ムードになったりするけどずっと楽しいんですよね。なんでかわかんないんですけど。
――ライブでも楽曲制作でも、みなさんそれぞれにとってガストバーナーが飾らず、気張らず、だけど美学を貫ける場所だからでしょうか。
マイケル 僕も含めて、我慢しながら活動している人がいないんじゃないかな?
はるきち みんな思うことがあったら言ってくれるしね。曲作りでもそうで、『Happy』以降は全部最初のデモをマイケルが作ってくれて、まずそれが僕のところに届くんです。その時点でメロディに納得がいかなかったら自分で手を入れるし、リフやイントロ、構成が微妙だったらマイケルに修正をお願いして。マイケルは若干怒りながらやってくれます(笑)。
マイケル 修正依頼が来ると面倒なんですけど、なんだかんだ取り掛かると楽しいんです(笑)。それに、はるきさんの意見を汲んで作り直すと実際良くなるんです。まず曲を作る前に、カリスマはるきちさんが参考音源をくれるので、それを参考にして曲を作るとダメすぎる曲が出来上がって。そこで「やっぱり自分でテキトーに考えよう」って作り始めた曲をデモとして投げてますね。
はるきち ボツ曲を作って「俺はこんなもんじゃねえ!」と覆そうとしてやる気が出てくるんだね(笑)。
加納 だから僕ら楽器隊に届くデモは、マイケルとはるきちさんが納得したものだけなんです。その手順でいいと思ってますね。「これやりたくないな」と感じる曲が届くこともないし、バンドで合わせていけば作っていくうちに良くなってくるだろうとも思うし。
はるきち 加納くんはマイケルがデモに入れたギターを、何も言わずにがんがん変えるしね(笑)。僕はそれでかっこいいと思ってるから何も言わないけど。
マイケル 加納くんは作曲者側の意図を汲んでくれるというか、イントロとかかっちりしたフレーズはあんまり手を加えないんですよ。ギターソロはテキトーに入れてるから、僕としても全然勝手に変えてもらっていいんです。
――マイケルさんの変えてもいいところ、加納さんの変えたいなと思うところがしっかり噛み合っているということですね。
加納 僕はちゃんと美味しいとこ取りをしてます(笑)。0から1を作ってくれる人がいると、1をどれだけ100に近づけられるかに集中できるので気がラクだし、個性も出せるようになったのでありがたいですね。NGが来たら直しますけど、来なければ「これでOKってことだな」という認識でいます。
はるきち だからマイケルが僕らにインスピレーションを与えてくれてるんですよね。『Happy』以降でバンドのアレンジ力が上がって、楽器隊3人も音そのものの主張が激しいから、マイケルが作ったフレーズでもそれぞれの色になっちゃうんです。
マイケル うん。それがガストバーナーのいいところですよね。はやおくんがアレンジについて意見を言ってくれて、スタジオ中にどんどん曲が良くなることも多いから。
りっちゃん わたしはベースでごりごり弾ければ気持ちいいし、マイケルさんからもらったフレーズで、ベーシストとしての細かいこだわりを表現できればいいなと思っていて。それがガストバーナーに合ってるんだと思います。
はやお そうだね。僕らに届くデモははるきちさんの審査を通っているので、プレイヤーとしてどう曲のテンションを上げるかっていうだけなんです。やっぱり、このバンドで発信することに関しては、はるきちさんが納得することが重要というか。
――「はるきちジャッジ」がガストバーナーの根幹を担っていると。
はるきち そうなのかな。楽器隊のみんなにデモを投げる時も「この曲はドラムが全然ダメだから、はやおくんいいビート考えて」みたいにお願いはしてます。クオリティが低いもので楽しめるほど、ロックを諦めてるわけではない。かっこいい曲を作っていないとバンドは楽しめないし、かっこいい曲を作れているからバンドも楽しいのかなと思いますね。
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2021年に入ってから積極的に新曲をライブで披露している4人。最新シングル「ハロウィンパーティー」や既にキラーチューンとして成長している「ディストピア」に迫る