時代に埋もれることのない音楽を――Any、自主リリースの挑戦(前編)

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時代に埋もれることのない音楽を
――Any、自主リリースの挑戦(前編)

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大森 慎也(Ba)
工藤 成永(Vo/Gt)
高橋 武(Dr)

取材・文:沖 さやこ
撮影:TAKU(Instagram
撮影協力:東放学園音響専門学校

 

横浜出身の3ピースAnyが全国リリースとしては約4年ぶりの新作『視線』を6月24日にリリースする。2009年に初の全国流通盤であるミニアルバムをリリース以降、短いスパンでリリースを続け21歳になる2010年でメジャーデビュー。2012年にライヴ会場限定盤『抱擁』を携え、バンド最大規模の全国ツアーを回った。その後レーベルから離れるも、彼らはコンスタントにライヴ活動を続けてきた。その歩みが結実したのが、この『視線』という作品だ。彼らの音楽性は自由に広がり、音も言葉もすべてが生き生きしている、過去最高傑作と言っていい。筆者も彼らにインタヴューをするのは実に4年半ぶり。彼らの歩んできた活動を追いながら、最新作『視線』に辿り着いた真相を紐解いていった。その模様を前編と後編の2回でお送りする。まず前編では、メジャー在籍時代から今作までの活動の経緯を探った。

 

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工藤成永(クドウ ナリヒサ、Vo/Gt)、大森慎也(オオモリ シンヤ、Ba)、高橋武(タカハシ タケル、Dr)の3人組。2006年12月結成。メンバー全員1989年生まれ。2007年YHMF2007(横浜ハイスクールミュージックフェスティバル)グランプリ受賞。2008年4月、YHMF2007で出会ったドラム高橋が加入、現在のメンバーに。2009年5月1stミニアルバム『102』でインディーズデビューし、2009年9月にポニーキャニオンよりGREAT3の片寄明人プロデュースのもとメジャーデビュー。2012年9月に枚数限定で3曲入り会場限定音源『抱擁』をリリース。ライヴではサポートミュージシャンを招いたり、アコースティック編成で行うなど、様々な形態で自身の音楽を表現する。(オフィシャルサイトTwitterFacebook

 

◆やっていないことをやらないまま音楽をやめるのは馬鹿馬鹿しい

――Anyは2010年、21歳でメジャーデビューをし、約1年でシングル2枚、フルアルバム1枚、ミニアルバム1枚をリリースします。皆さんにとってこの期間はどういう時期でしたか?

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工藤 成永(Vo/Gt)

工藤:僕は結構盲目的な感じだったなと思う。まず曲を書くことが大前提で、レコーディングや〆切に追われて。あのときは新しいものにたくさん出会えていて、大学に通いながら音楽を世の中に出していく――そういう場所に身を置くと、それだけでうれしくて楽しくて、常に高揚していたような気持ちでした。だから当然「こういうものを作っていきたい」という意気込みは常にあって。いちばん最初はメジャーライクなものというか、メジャーというニュアンスを含んだ曲を作ろうという意識が強かったんです。でもそのあと自分が音楽活動しかり普段の生活しかり、いろんなことに悩んできちゃって。ミニアルバムの『記憶喪失』(2011年9月)は、フルアルバムの『宿り木』(2010年12月)と比べるとかなり暗いというか……一言ではなかなか表せないんですけど、メッセージが重たくなったなと思って。でも、『記憶喪失』も『宿り木』も自分だなとは思ってます。メジャーに身を置いている自分と、そこから離れて普通に音楽が好きな自分とのすれ違いが、あったような気がしないでもない。でも作品として自分が好きなものを作っていったつもりではあるので、それがあったからこそ、ああいう曲が生まれたという言い方もできるし。……武くんはどう?

高橋:僕はとにかく学ぶことが多かったです。今回のリリースにあたって「お店に回るときはどうしたらいいか?」とか「どうアレンジしよう?」みたいに、ちょっと悩んで自分の引き出しを開くときに、その1年間のなかから持ってくることが多いなと思って。勿論あのときから時間も経っているんで、やっている音楽も若干変わってきてるんですけど、いまだに学べることがたくさんある。そういう意味では濃い1年でした。

大森:当時は学生だったこともあって、初めて自分たちの音楽をCDという形にして販売していくことに、いろんな希望や「これからどうなっていくんだろう?」という期待もありました。当時は「自分たちなりにやれることをやれたらいい」という気持ちだったので。当時の作品を聴いて、当時の自分たちのプレイやバンドの雰囲気に新たな発見をすることもありますね。

――レーベルを離れた時期はバンドの状況はいかがでしたか。

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会場限定シングル『抱擁』

工藤:『抱擁』(2012年9月、会場限定シングル)を出してから、いちばん大規模な全国ツアーを回って、それを終えたあとに会社から契約解消の話があって。僕が曲を書いてて歌ってるので、それによってバンドの状況が変わることが切なくなったし申し訳なかったし、正直へこみました。でも「この先、音楽をやることはないのか?」「伝えたいことはないのか?」というと、全然そんなことはなくて。メジャー時代は、良くも悪くも自分たちをそのなかに押し込めてた気がして、いま思うと人との関わりももっと自分たちの手でちゃんとできてたはずだし。だからいまそれを学んでいるんです。インディー/メジャー関係なく、自分たちがやっていないことをやらないまま「音楽をやめる」とか「このまま続ける自信がありません」と言うのは馬鹿馬鹿しいと思って、契約が切れてから今回のリリースまでの間は、いろんな先輩のミュージシャンに話を聞きに行ったり、友達に「僕らはこんな状況なんだけど、みんなはどんな感じでやってるの?」と相談したり、社会勉強みたいな感じでした。その時間があったから、いまはあんまり怖いものがなくて。

――昔よりもアクティヴになりましたよね。

工藤:「あの人と会ってみたいな」と思ったら、試しにオフィシャルから連絡を取ってみたり。あんまり気負いしなくなりました。誰かが用意してくれた会に行ったとしても必ず「はじめまして」は言うんだから、それを自分発信でやってもいいかなと思って。いまはFacebookやTwitterとか、なんでもあるじゃないですか。だからつながりやすさは増してると思うんです。ちょっと興味のある人に声を掛けさせていただいて、「自分たちはこういうバンドで、こういう音楽をやっていて、こんなCDを作っています。聴いてもらえませんか?」という、当たり前のことから始めてて……それがすごく楽しいんです。

――とても素晴らしいことだと思います。

工藤:Anyの音楽がヒットしない人もいると思うんですけど、ヒットしてくれる人もいるので、それは本当にありがたくて。自分たちがやった行動だから、自分で責任も取れるじゃないですか。誰にも文句を言わせないし、見返りを求めるなら自分が頑張ればいいし、「ちょっとつながりたいな」という気持ちも自分のさじ加減次第だし。……それはいままで人任せにしていた部分なので、それを自分たちで行動に起こせていることが、かなり僕らにとって革命的というか。だからいま、僕ら超かっこいいですよ(笑)。

――(笑)。間違いないです。わたしが工藤さんとサーキット・イヴェントの打ち上げでたまたまお会いしたのが、2013年の秋でした。そのときはもうだいぶ、いまのようなモードでしたよね。

s_DSC00427工藤:あー、でもここ最近の僕らからすると全然だよね?

高橋:まあそれは一生そうだと思うけどね(笑)。

工藤:そうだね(笑)。でも確かに、あのくらいからシフトチェンジして少しずつ変わってきました。会社を離れてからはホームページも自分たちでいちから支度したり、グッズを作るのも友達に相談して。近い人たちに相談しはじめたことで、いまいろんなことが回ってて。それが最高なんですよ。その輪はどんどん広がっていくと思うので、いまも自分たちが気付いてないなかで、これから1年2年先につながる何かが、ちょこちょこあるんでしょうね。

>>バンドの関係性が危うくなった瞬間もあった

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