16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」第9回～なんで音楽やってるの？

Posted by 16ビートはやお | On 16 10月,2023 | In Column

16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」
第9回　なんで音楽やってるの？

［1］なんで音楽やってるの？

なんで音楽やってるんでしょうね、僕。思い返せば音楽なんて好きじゃなかったのに。中学生の頃、音楽の先生は竹刀のような棒で床を突きながらテンポを取っていて怖かったし、全五人で構成される生徒会に入っていた僕は、全校生徒の前で「世界に一つだけの花」を歌うという、謎の強制的な出し物が苦痛で苦痛で仕方なくて仕方なくて憂鬱な夏休みを過ごしていたりしました。勿論生徒会長に登り詰めてからは一存で廃止しました。権力の行使。

「音楽なんて嫌いだ！！」そう思っていたのに、気づけば人生の半分以上音楽をやっています。音楽を中心に人生が流転している。しかも楽しい。あれ、おかしい、こんなはずじゃなかったはずなのに。おかしいなー、音楽が苦痛で苦痛で仕方なかった僕は一体どこにいってしまったのでしょう。

一人の人間が、何故こんなに音の魔力に惹き寄せられてしまったのか、少し根源的な欲求の部分を紐解いてみようと思います。哲学回です。

［2］認められたい

「認められたい」という欲求があります。人は「承認欲求」と呼ぶかもしれません。しかし僕の場合はバズるとか、影響力を持つとか、そういう虚無を孕んだ手っ取り早い承認欲求には興味がないようです。むしろ「自分の実力が相応に評価されている」ということが重要で、「不相応に評価されている」という状態にストレスを感じるみたいです。それは過大評価でも過小評価でもストレスを感じます。

数年前、研究職を目指す大学院の頃の同期と飲みに行き、「リスペクト」というワードが話題の中心に登りました。研究者も、バンドマンも、漫才師も、アイドルも、物事に本気で取り組んでいる人は美しいし、リスペクトをせざるを得ない、ということをお互い酔った頭であれこれ話していました。店を出てお互い頑張ろうね、と笑顔で話して別れてから幾年か過ぎ、僕は相変わらずドラムを叩き続け、ライブをし続け、音源を出し続け今に至りますが、一方で彼は研究に取り組み続け、論文を寄稿し続け、今年母校に講師として着任していました。本当に凄い。おめでとう。

ホームページに掲載された彼の着任の挨拶を読みながら、本気で取り組んだ先にある「認められたい」を達成するのは美しいなと感じています。その対象がたまたま僕はドラムでありバンドであり、彼は研究だったというだけです。

［3］チヤホヤされたい？

そんな同期の彼と飲みに行ったおよそ半年後くらいでしょうか、僕はZOOZというバンドを組みました。結成にあたって、改めて自分の欲求と向き合う必要がありました。バンドを組むということは、自分の人生や欲求の達成にメンバーを巻き込むことになるわけですから、なるべく自分の欲求を整理して分かりやすく、未来のメンバー候補に伝えて、同意を得るというプロセスが重要でした。

上述した「認められたい」の他に、「純粋な気持ちで音楽がしたい」「人気が欲しい」「チヤホヤされたい」という気持ちも当然あるわけで、そういった似通った欲求達を区別して、優先順位をつけながら、一緒にバンドやりませんか？と声をかけていきました。

僕の中では「純粋な気持ちで音楽がしたい」「認められたい」という欲求が圧倒的に真ん中にありました。モテたいとかも立派な欲求ですが、あくまで僕の場合は「自分達の音楽がカッコいい」という認識がしっかり存在しなければ、人気があってチヤホヤされていても中身は薄っぺらくてスカスカで虚しいよね、ということです。自分達の純粋なカッコいい音楽を表現し切った先にある「認められたい」を追求したい、というような事を話した気もするし、話していない気もします。が、ZOOZのメンバーはそういうニュアンスに少なからず共鳴してくれて、ちゃんとカッコよく有り続けてくれる頼もしい存在だと思っています。

［4］大きくなりたい？

もう一つ、バンドをやっていてかねてから抱えている謎があります。それは「でっかくなりてえ」いう欲求です。でっかいライブハウスで沢山のお客さんの前で演奏したいという気持ちです。

この「でっかくなりたい欲求」って不思議だな、といつも思ってしまいます。実力と人気は一定の相関関係にあるのは間違いないので、ライブに集う人の数というものは、実力も、人気も図ることのできる一定の尺度になるのでしょう。

でも「もっと人気者になってバンドをおっきくして、みんなをでっかいライブハウスに連れてってやるからよおー！」みたいなことをライブのMCで言われちゃうと、「ん？　なになに？」と不思議に感じる瞬間があります。これは批判とかではなく、その欲求の出所を僕はつい見定めたくなるのです。

バンドマンの口から「でっかくなりたい欲求」が溢れる瞬間、僕はその人の脳に目掛けて、その欲求は「認められたい」から出ているのか「チヤホヤされたい」から出ているのかすかさずチェックを入れます。

「自分の実力を高めてもっと認められたい」という所から出ている言葉であれば、おお同士よ、頑張ろうではないか、という気持ちになり、「とにかく人気が出てチヤホヤされて経済的に楽になりたい」から出ている言葉であれば、僕とは闘うフィールドが少し違うけど、それも素晴らしいから見守らせておくれ、という気持ちになります。そういったものがごちゃまぜになった言葉が「大きくなりたい」なんだろうなと思います。

［5］楽しいからバンドやるのよ！！！

もう一つ、僕が誘われてドラムを叩いているバンド、ガストバーナーはただ「楽しい」を追求に追求しています。とにかく楽しいことを求めています。「楽しくなければバンドじゃないじゃん！！」に尽きます。「認められたい」とか「チヤホヤされたい」とかも勿論あるのですが、そういう小難しいものを一旦全部ぶっ飛ばして「楽しいからバンドやるのよ！！！！！！」という境地で音楽に取り組んでいます。結成当初はそういったことをあまり意識していなかったのですが、メンバーの妙というもので、徐々に「楽しいこと」というものを真ん中におくようになりました。

こうなるとタチが悪くて、手がつけられません。全て「楽しい」か「楽しくないか」が判断基準になります。楽しい未来が見えるなら頑張るし、見えないなら無理しません。各々セカンドキャリアで組んだバンドが原点に立ち戻ってきゃっきゃやっているだけです。「戦略？　何それ楽しいの？」です。逆に長くバンドをやっている僕にとって、これだけピュアな気持ちでドラムを叩けるのはとても貴重なことかもしれません。

勿論ZOOZも楽しいからやっているんですが、ガストバーナーは「楽しいの追求」が余りにも突出していて、メンバー全員がその部分を物凄く大事にしています。逆に、メンバーがこれまで色んな経験をしてきたからこそ「楽しい」という感情を大切にしているんだと思います。

［6］みんな正しい

音楽をやっている人、それはもう千差万別で、どれが正しい、正しくないと判断することは一切できませんし、すべきでもありません。分断するつもりもなく、どういった向き合い方も全部正しいと思います。ただそこには、この音楽の向き合い方は自分にはちょっと合わないかもな……というスタンスの違いが存在するだけです。バンドの方向性の違いというものは、こういうところから生まれるのかもしれませんね。

まあつらつら書いてみましたが、難しいことを考えず、楽しければ、日常の活力になるのであれば、音楽をすれば良いのです。音を楽しむと書いて音楽です。大きな音をドカーンと鳴らした先に幸せや、青春が待っています。でも、合わないと感じたら無理をしないでね。ここまで読んでくれて、ちょっと違うなとか、そういう感想の人がいたら、すみません、なんかジュースとか奢ります。許してください。中学生の頃の僕だったら絶対納得しないだろうし、音楽やらなくても魅力ある人は魅力あるし、なんか、うん、偉そうにすみませんでした。少し恥ずかしくなってきました。お、終わりましょう。で、では、また次回、お元気で。はい。

◆16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」一覧

◆Live Information

〈ZOOZ〉

○2023/10/29(日)名古屋・新栄CLUB ROCK’N’ROLL
16ビートはやお企画「こぼれるビート」
ZOOZ / ガストバーナー / LADY FLASH / Giallo

○2023/11/5(日)ボロフェスタ2023

〈ガストバーナー〉

○2023/10/20(金) @名古屋・池下 CLUB UPSET
「MAGICツアーファイナル」
ガストバーナー / キュウソネコカミ

○2023/10/29(日)名古屋・新栄CLUB ROCK’N’ROLL
16ビートはやお企画「こぼれるビート」
ガストバーナー / ZOOZ / LADY FLASH / Giallo

○2023/11/12(日)東京・新宿BLAZE
HERE主催　ハイテンションフェス2023
ガストバーナー / HERE / SYS / suga/es / アルカラ / ukka / アシュラシンドローム / DJピエール中野 / Hello Sleepwalkers / メリー / ロマンス&バカンス / 流れ星☆

『MAGIC』東名阪ワンマンツアー
○2023/12/2(土) @東京・池袋 Adm
○2024/1/20(土) @大阪・南堀江knave
○2024/2/10(土) @名古屋・新栄CLUB ROCK’N’ROLL

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