バンド好きの若者に人気のラババン、その流行の背景とは?
いつの間にか市民権得すぎじゃない? と思うラバーバンド/シリコンバンド(このコラムでは以下すべてラバーバンドと総称します)。最近では“ラババン”なんて通称もついちゃって、忘れらんねえよはシングルCDにラバーバンドが付く“ラバ盤”なんてものもリリースするらしいし、みるみるうちにバンドグッズのマストアイテムとなりました。わたしは普段の恰好が全然ラババン似合うタイプでもないので、全然ラババンには興味もなく、普段の生活でつけたりできないし、何でそんなに人気あるの!? と常日頃疑問だったのですが、その「なぜ?」を考えていくと、いろいろ腑に落ちました。そのわたしなりの考察の結果を今回ここに書き記します。
まず、バンド界にラバーバンドが姿を現し始めたのは5年くらい前でしょうか。わたしが初めてバンドのグッズとしてラババンをしっかりと認識したのは、2010年の椿屋四重奏の日比谷野外大音楽堂単独公演でした(※来場者全員に特製ラバーバンドが配布されました)。その後、ラバーバンドに価値や意味を見出したのが東北ライブハウス大作戦ではないでしょうか。数多くのバンドマンがつけたことで一気に浸透し、あのラバーバンドはプロジェクトを支持していますという明確なアピールにもなりました。
それをきっかけに日本のバンド界隈で徐々に増えてきたラバーバンド。バンドグッズとして浸透してきたのはその「明確なアピール」というものが主な理由だと思います。CD市場よりもライヴ市場、なんて言葉ももう聞き飽きたというくらい世のなかに溢れていますよね。その場でオーディエンスが自らの志向をアピールする手段が「Tシャツ」、そして普段の生活では「缶バッジ」と「ステッカー」が主な機能を果たしていたように思います。今もそうですが、フェスやライヴハウスには好きなバンドのTシャツを着て「わたしはこのバンドが好きなの」とアピールする人も多く、缶バッジをリュックにいっぱいつけて、ステッカーはノートや学校に持っていくクリアケースに貼ったり……などの方法がありました。
で、ここでどうラバーバンドが機能したか。それは、これだけ“フェス”というものが交流の場となり、TwitterなどのSNSというツールがリスナーに定着してきたことが背景にあると思います。フェスの“フロア”で交流する若者は、そこに「こんなバンドたちが好きなの」とアピールするアイテムのリュック/缶バッジを持ってくることができません。Tシャツの「わたしはこのバンドがいちばん好きなの!」というアピールにプラスして、フロアで「Tシャツ着てるバンドが大好きなんだけど、わたしは他にもこんなに大好きなバンドがいるの!」「どのバンドも同じくらい好きなの!」という主張を実現させたのがラバーバンドだったのです。
柔らかいから危なくないし、好きなバンドのラババンを複数付けていれば自分の趣味をアピールできる。おまけにそれを見た人が「あ、あの人はあのバンドとあのバンドとあのバンドが好きなんだ。好きなバンドが結構たくさん被ってるぞ? 友達になりたいな」と思ったりする確率も高くなる。Twitterでラババンをつけた腕の写真をアップすれば、顔をさらさずに自分の存在を外に知らせることができる。そして大体500円くらいで買えるので、若者のお小遣いでも購入可能。材質は同じなのに太さや形、カラーで様々なヴァリエーションが作れるゆえに、コレクションとしても楽しめる。バンド側にとってもTシャツほどデザインの手間もかからないし、安価で買い求めやすいものが提供できる。カラビナもそこそこ見かけますが、カラビナはステンレス製だしひとつで充分だし、バンド名もさりげないくらいにしか入らないと考えると、やはりいちばんライヴ現場でリスナーにとって利点が多いのはラババンなのです。
なのでラババンはフェスやライヴが盛んな現代だからこその流行なのだなーという結論に落ち着きました。カバンにたくさんラババンつけてる人も見かけますし、わたし自身も東北ライブハウス大作戦のラバーバンドを手帳の開き止めに使ったりしています。カラフルで可愛くて、一種のデコレーションにもなる。流行るべくして流行ったものなのだと思います。(沖 さやこ)
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