THE NOVEMBERS -2014.11.28 at 新木場STUDIO COAST

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THE NOVEMBERS
THE NOVEMBERS TOUR – Romancé –
2014.11.28 at 新木場STUDIO COAST

8本のライヴで1枚の壮大な絵を描いた「TOUR – Romancé -」

取材・文:沖 さやこ
ライヴ撮影:タイコウクニヨシ

 

現在のTHE NOVEMBERSは、雨上がりの空のようだ。塵や埃などはすべて流れ落ち、とても鮮やかで清い。1つのパッケージにディスクが2枚収められた“シェアCD”や、視聴端末などによって映像が変わるMV、リスナーが音源を手に入れる方法を選択できる楽曲配信リリースなどなど、音楽をさらに楽しんでもらうために様々な試みに満ちた活動を行う彼ら。この新木場STUDIO COAST公演でもMUSICAやKOLAとのコラボ企画が行われ、それを楽しむ人々の姿が多く見られた。これらの試みをプロモーションと捉える人もいるかもしれないし、そう機能している部分もあるが、彼らが最も重きを置いているのは「音楽をもっと楽しむためにどうするべきか」という思考ではないだろうか。前提がその純粋な「知的好奇心」ゆえに、すべての活動が手と手を取り合ったときに感じる体温のようにあたたかい。

new__DSC0367-7開演前からステージの背景には映像が映し出され、薄暗いなかにミラーボールが回転しムーディーな空間ができあがる。暗転すると同時に、場内のざわめきが消えた。この静寂が、THE NOVEMBERSを愛するリスナーたちなりの盛大な歓迎だ。オープニングムービーが流れると、小林祐介がひとりで舞台上に現れる。最新アルバム『Rhapsody in beauty』のジャケットにもなっている海の画がステージ全体に映し出され、小林はその海のなかで、レコードに針を落とすように優しくノイズと歌声を重ねてゆく。1曲目はアルバムと同じく【救世なき巣】。はじまりのはずなのに、なぜかもうかなり長い間この空間が存在しているような気がした。この感覚は何なのか――するとステージに現れたケンゴマツモト、高松浩史、吉木諒祐が位置につき【picnic】へ。こちらの心のなかをこじあけるようなあたたかい光が射しこむ。なんて開放的な空気なんだ。まるでライヴのラストのような感動だ――と思い、気付いた。そうか、THE NOVEMBERSにとって、この「TOUR – Romancé -」の8本のツアーがすべて地続きであり、1枚の絵なんだ。どこにもリセットは存在しないから、これだけ耕された音をこの新木場STUDIO COASTに持ってくることができたのだ。

new__DSC0956-425「TOUR – Romancé -」の初日は名古屋。この日は3時間近くライヴをしたとのことで、来場者にとってもかなり特別な夜になったという。セットリストも日が昇り沈んでいく過程のように少しずつ変化していき、ツアー序盤には小林の弾き語りだった【僕らはなんだったんだろう】も、【僕らはなんだったんだろう (Parallel Ver)】の配信が始まってからはバンドスタイルで演奏するようになったようだ。

閃光さながらのギターが残響を切り裂き【Misstopia】。ドラムスの吉木の位置が少々前方に出たことで、真正面から見ると4人全員が横並びに見えるそのセットも、オープンな空気をまとうバンドの様子をよく表している。そして全員が黒で揃えた衣装のシルエットも、長身痩躯の4人だからこその美しさだ。【Harem】【Flower of life】【Rhapsody in beauty】と穏やかな楽曲から【dumb】【dnim】と、ダークサイドへと移行。だが、そこに牙を剥いたような攻撃性はほとんどなかった。爆発力のある小林のシャウトにも爽やかさすら漂う。
new__DSC0978-221序盤から感じていたことだが、間違いなくこのバンドは変わった。以前までのTHE NOVEMBERSの表現は、小林の確固たるポリシーが積みあがり、そこに各プレイヤーがどう自分の色を出していくかで構築されているようにも思えた。だがバンドが独立し、MERZというレーベルを設立し、ダイレクトに様々な人々と触れ合い、新しい価値観や音楽以外の音楽作品を作ることで、小林のポリシーに柔軟性が出てきたようにも思う。自分の色と相手の色を混ぜて新しい色が生まれることを、本当の意味で楽しめるようになったのかもしれない。だからこの日、小林以外の3人は小林の歌を高めるように音を鳴らしていたし、小林もフロントマンとしてバンドを引っ張るだけでなく、時に寄り掛かり、時に内側へと潜り……と、新たな楽しみかたを見つけているような気がした。あと何より――きっと誰もが思っていることだと思うが――やはり彼が父親になったことが大きいのだろう。慈愛にも近いふくよかな愛が溢れていた。

一面が白黒の映像で埋まり【鉄の夢】。徐々に赤などの色味が生まれていくその様と、楽曲の緊迫感が作り出す空間はまさしくアートで、曲が終わるや否やフロアから興奮の拍手が起こった。【Strum und Drang】【Blood Music.1985】などのラウドな楽曲も、鋭いというよりは感謝と歓喜が漲り、そのしなやかさに恍惚とする。小林が高く振り上げた手を下げたと同時に、高松がベースリフを奏でた【dogma】もまた、小林のヴォーカルを中心に渦が巻き起こるような高揚があり、その流れを切らさず【Xeno】へと駆け抜ける情景は美しさの極みだった。攻撃的/暴力的と形容されやすいハードな楽曲を、今の彼らは攻撃性や暴力性で表現しない。それが意図的なものなのか否かはわからないが、そのギミックや含みがまた奥行きや可能性を生み、『Rhapsody in beauty』の持つ「パラレルワールド」というものの提示のひとつのようにも見えた。星屑のようなミラーボールの明かりに、背景にはMVでもシンボリックだった“ゆらめき”のもやが映し出された【Romancé】で本編ラストを迎えた瞬間は、雨上がりの空に虹が浮かぶような煌びやかさだった。

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アンコールで小林が「もうすぐ11月は終わっちゃうけど、今日がまた誕生日みたいな気持ちで、またまっさらな気持ちで音楽や、音楽にまつわることで、綺麗なことや楽しいこと、素敵なことを自分たちで楽しんで、豊かに生きていけたらいいなと思う」と語り、【バースデイ】を披露した。これは彼が19歳のときに作った、THE NOVEMBERS結成初期の楽曲だ。この曲を聴きながら、THE NOVEMBERSが2007年9月にSHIBUYA-AXで開催されたSyrup16gの企画イヴェントのオープニングアクトとして出演したときのことをふと思い出し、それからこの新木場STUDIO COASTに至るまでの様々な場面が蘇ってきた。きっとこのバンドは毎回、節目節目で誕生日を迎えてきたのだろう。だからいつの時代の情景も聴き手の記憶と心に残る。それができるのは、バンドが作品を生み出すたびに意味や価値を見出し、愛し育んできたからに他ならない。

ラストの【今日も生きたね】で、「TOUR – Romancé -」という季節は終わりを迎えた。だが少しずつ明るく光が射しこむような音像は夜明けから日の出に移り変わるようで、また新たな日々が生まれることを強く印象付けた。THE NOVEMBERSは来年10周年で、再来年は本番の11周年。いまのTHE NOVEMBERSは苦しみも悲しみも、すべて豊かさへと昇華する術を持っている。〈まだまだ僕らは まだまだこれから〉――【GIFT】のこの歌詞に、この日、本当の意味で確信を感じた。THE NOVEMBERSは、これからもっと面白くなる。

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▲SET LIST▲

01 救世なき巣
02 picnic
03 Misstopia
04 Harem
05 Flower of life
06 Rhapsody in beauty
07 dumb
08 dnim
09 236745981
10 僕らはなんだったんだろう (Parallel Ver)
11 鉄の夢
12 Strum und Drang
13 Blood Music.1985
14 dogma
15 Xeno
16 Romancé

encore
17 バースデイ
18 今日も生きたね

 

20141017_名古屋CLUB QUATTRO

20141019_心斎橋Music Club JANUS

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20141125新潟CLUB RIVERST_2

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