LUNKHEAD-10th ANNIVERSARY『一世一代のみかん祭』密着レポート
開演時間が迫る。「とうとう(この日が)来ちゃう」と漏らす小高さん。合田さんは「でも、あっという間やったね」と語る。第1部は90分、第2部は120分。もちろんLUNKHEADにとってこんな長丁場のライヴは初めてのことだ。小高さんは「ぶっ続けで3時間半やると悟のおしっこがもたないからね」と冗談を言っていたが、このときにはもう表情は真剣そのもので、すぐ吸入器へと顔を向ける。これから計3時間半歌う、その重みが彼の背中から感じられた。「札幌からの飛行機が止まってて、来れない人が結構いるみたいだよ」と桜井さんが言うと、メンバーはとても悲しそうな顔。そのあと桜井さんは「食べれるときに食べとかないと」と持参のお弁当を食べ、合田さんはてきぱきとステージ衣装に着替える。合田さんの準備が整うくらいに、ソファーに寝そべっていた壮さんもゆっくり用意をし始めた。開演15分前。楽屋の会話も少なくなり、小高さんは「あー、緊張するなあ」と水分補給。「怖い」とつぶやくと再び吸入器で喉を潤す。だが開演5分くらい前になるといつものように桜井さんとふざけたりと、朗らかさが出てきた。オンタイム、16時、いつも通り気合い入れをしたメンバーはいざステージへと向かった。
第1部、1曲目の【前進/僕/戦場へ】では合田さんがステージを前方からドラムセット裏までぐるぐる走り回りながらベースを弾くなど、合田さんの様態に不安を感じていた観客にも完全復活を堂々と見せた。【月光少年】のサビでは歌詞の通りフロアに〈両の手のひらは広げたまま〉高く上がり、硬質なギターが耳を刺す【冬の朝】は4人が激しいが優しく、大きい音を鳴らす。【きらりいろ】から【HEART BEATER】に繋げると、小高さんの顔も少しずつやわらかくなり、会場もとてもあたたかい空気になった。やっぱりLUNKHEADはいつの時代もいい曲を作っているんだな……と痛感すると同時に、観ていてなんだか物足りなさを感じてしまった。これはなんだろう? 少し考えて気付いた。むかしの曲はいまのLUNKHEADには、歌うのも演奏するのも簡単すぎるんだ。いまの彼らを存分に活かすには、昔の曲に幼さが否めない。とはいえ勿論完成度の高いライヴであったし、いい曲を作り続けているのは事実。ただ、いまの4人が10年前と比較にならないほどハイスペックすぎるのだ。デビュー曲である【白い声】のイントロが鳴った瞬間は全身の血が光の速さで駆け巡るような衝撃が走り、感情的に響くギターに心が引き裂かれそうになった。
1部が終わるや否や楽屋へ駆けつけると、「ターバンがずれるから抑えてたくらいですよ」と余裕の表情の合田さん。小高さんも「ちょっと出だしが固くて初デートみたいな感じやったけど、中盤からいい感じにいったね」と安堵の表情だ。桜井さんはすぐに楽屋の中2階へ。壮さんは「こんな長いライヴ初めてだから、全然セットリストが入ってこない(笑)」といたってマイペース。合田さんはすぐに次の衣装(1部よりもさらに派手)に着替え、余分な動きはせず静かに座って休憩に入る。小高さんは「お腹減るなー」とバナナを1本食べ、しばらくしてまた「もうちょっと食べたいけど……」と悩みながらももう1本食べていた。彼は吸入器にあたりながらも音漏れで聞こえる龍さんのDJに「あ、ステファブだ!」と反応したり、袖でスタンバイしているときは龍さんのバストアップ体操を舞台袖からにこにこしながら見てiPhoneで写真を撮ったりと、少年のようだった。たぶんこの人は死ぬまで少年だと思う。
>>第2部、衰えることを知らないエネルギーがもたらす歓喜の音像