時代に埋もれることのない音楽を――Any、自主リリースの挑戦(前編)

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◆バンドの関係性が危うくなった瞬間もあった

――ところで『抱擁』くらいのときに、工藤さんはブログで「音楽が馬鹿らしい、歌いたくないと思った時期があった」と書いてらっしゃいましたが……。

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高橋 武(Dr)

工藤:うわー、全然覚えてない(笑)。

高橋:工藤くんはそういうムラが定期的にあるよね(笑)。そのときが特に大きかったのかもしれない。

工藤:(曲を書くことの)責任を強く感じてた時期だったのは確かなので、タイミング的にそれが大きかったかも。「曲が書けない、もうやりたくない!」という気持ちとは違う重さは持ってたのかなー……。

高橋:そのときに担当についてくれた人は割と、僕らに自分でやらせようとしてくれたんです。ツアーを組むのも、ライヴハウスに自分で電話したりして。

工藤:その担当の人が僕らの3、4つ上の元バンドマンだったんです。ひょっとしたら、「いまのうちにどうやってツアーを組むかとか教えて鍛えないと、こいつらこの先危ないぞ」ってことだったのかもしれないよね。僕らが我儘言うと「だめだよ、そんなのできるわけないだろ!」と返してくる人で、「なんでだめなんですか?」と聞くと、いい意味でちょっと棘のある返しをしてくるんです。だから僕らに「そうか、だから俺らは甘いのか」みたいに気付かせてくれたというか。

――最後にその人が担当になってくれたのは、Anyにとってもすごくよかったですね。

工藤:その人のことが嫌いなわけじゃないんですけど、当時は本当むしゃくしゃすることもあって「なんだよ!」と思うこともいっぱいありました(笑)。でもその人が担当をしてくれたお陰でいまの僕らがあるなと思います。そのときからすがってても絶望してもしょうがないなと思ってて。だからシフトチェンジする方向に行けたんだと思います。大森くんと武くんもその頃くらいから「サポートをやりたい」という話をしはじめたんです。実際僕もこのふたりは皆さんにおすすめできるので。

――もともとお上手でしたしね。

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大森 慎也(Ba)

工藤:そうなんですよ。でも僕もメジャーにいたときは、そういうところに気付いてなくて。……やっぱり僕は音楽的なことをわかってないこともいっぱいあって、メンバーから気付かされてちょっとずつ良くなっていってるところがあるなって。やっぱり人から言われないとだめですね。僕は自分だけだと自分のことを肯定しつづけるので、「間違ってるはずなどない!」って(笑)。

大森:「間違ってるのはお前だ!」くらいのね(笑)。

工藤:昔は本当にそういう姿勢でした(笑)。だから最初に僕らの担当をしてくれた人に「あのさ工藤、あのふたりがどれくらい苦労してるかわかんない?」「お前のそのだめさ加減にどれだけつき合わされてると思ってるの?」と言われて……。

全員:ははははは(笑)。

工藤:バンドの関係性も危うくなった瞬間もあるんです。でもそこを乗り越えて。この3人でなければ続いてない気がしますね。普段一緒にご飯を食べに行ったり服を買いに行ったりすることはないけれど、集まって嫌な感じがするわけではないし、楽です。長い間やっているからこそわかるツボもあるし。いろんなバンドにいろんな特色を持ったプレイヤーがいて、「こいついいな!」と思う人はいっぱいいるんですけど、自分が歌うとなると「やっぱりこのふたりだな」と思うんですよね。

>>最近の僕らの活動は、いろんな縁があってできている

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