アーティストのTV露出と日本の音楽文化の活性 ~ONE TONGUE SUMMIT #3

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ONE TONGUE SUMMIT #3
アーティストのTV露出と日本の音楽文化の活性

東京と神奈川を中心に音楽ライターとして活動している沖さやこと、福岡で情報誌の編集をし、エンタメ界に幅広く精通しているふくこと福島大祐が、タイムリーな音楽事情を語り合うコラム「ONE TONGUE SUMMIT」。今回のテーマは「アーティストのTV露出と日本の音楽の活性」についてです。2000年代はロックバンドが地上波放送にほとんど出演せず、加えてインターネットの発達によって自分の好きな音楽を選択してそれだけを聴くという方法が主流になったことにより、日本のロックはライヴハウスや一部の音楽好きだけのものになっていきました。それが2010年代から少しずつ変化を見せています。地上波放送に積極的に出演するバンドも増えた現在、日本の音楽文化の活況なるか?

 

◆飛躍するゲス乙女。はTV出演で市民権を獲得

ゲスの極み乙女。『私以外私じゃないの』(2015)

 ここ数年、ゲスの極み乙女。やSEKAI NO OWARI、[Alexandros]などなど、バンドのTV露出が目立ちます。一時的に復活したHEY!HEY!HEY!の進化版であるHEY!HEY!NEO!はこの数年の間にライヴハウスで観てきた面々が軒並み顔を揃えていて、感慨深くもありました。特に今年TV露出で知名度をぐんと上げたのはゲスの極み乙女。ではないでしょうか。わたしは少々オリコンチャートに疎いのですが、ゲスはセールスも健闘していますか?

ふく お茶の間レベルの代表曲扱いである『私以外私じゃないの』が最高11位、そんな彼らがアリーナ埋めて初の武道館は2days。セールスとライヴの規模が比例してないですよね。いまはオリコンチャートよりツアーの規模や会場のキャパ、チケットの売れ行きがバロメーターだと思うんです。「CDは買わないけど好き」「CDは買わないけどライヴには足を運ぶ」という層がいるからだと思うんですけど。

 「CDは買わないけどライヴには足を運ぶ」層、これはフェスのハードルが完全になくなった2009年くらいから出てきた風潮だと思います。でもこれは俗に言う「音楽好き」だけにみられるものではないかと。ゲス乙女の横浜アリーナに行ったときに印象的だったのは、半分以上の観客がライヴ慣れしていない人たちだったことです。ちゃんMARIさんがMCで「アリーナ!」と声をかけたらスタンドも歓声をあげていたり(笑)、そもそもその掛け声は歓声を上げる合図であることも知らない人も多かった。やっぱりTVは「音楽好き」以外が引っ掛かる大きなきっかけで、ライヴは都市に住んでないとなかなか行きづらいので、これからCDのリリースの状況も少し変わってくるかも、と思ったりもしていて。

ゲスの極み乙女。『両成敗』(2016)

ふく 前作『魅力がすごいよ』の時点でもっとドカンといくと思ったんですけど、初登場4位でしたね。セカオワの『Tree』は初週で20万枚超えてトータルで50万枚ぐらいいってましたし、ゲスの勢いなら『両成敗』は20万枚は超えないと夢がないと思います。まだ発表されてないですが間違いなく今年の紅白に出演すると思いますし、紅白で【私以外私じゃないの】をやって、年明けから過去曲がチャートを上昇する“紅白売れ”が発生、そのままアルバムに繋がるなんて展開になったら20万枚超えも見えそう。そのぐらいいってほしいですよね。2015年、これほど各楽曲の打率の高いバンドはなかなかいなかったので。

 ゲス乙女と言えば衣装の世界観も人気の秘訣ですよね。バンドがTVに露出することが増えていることと、ウェブメディアの発達でアー写が広まる機会が以前よりも増えたことで、楽曲ごとのファッションに力を入れているバンドが増えてきたな~と思ってます。バンドに関して言えば完全にTシャツジーパンの時代ではなくなったなと。モッズやパンクなど、音楽ジャンルとファッションはいつの時代もどこの国でも密接な関係にあると思うんですけど、いまの日本はジャンルというより自分たちの楽曲に合った服装をしている気がします。

サカナクション『新宝島』(2015)

ふく たしかに近年アンダーグラウンドからメジャーへと火がついたバンド、サカナクション、ゲス、セカオワなどはみんな凝ってますよね。「オシャレを意識する」というより、ビジュアル含めて自分たちの世界観を表現するという意識がとても強く、そういった戦略性の高いバンドが実際に売れているというのは興味深いです。

 それを90年代からずっとオーバーグラウンドのロックとポップスで貫き続けていたのが椎名林檎さんだと思ってます。アイドルやJ-POPアーティストはどうでしょう?

ふく ももクロなどは別ですが、いわゆるJ-POP層からは正直そこまでの戦略性は感じませんね。たとえばいきものがかりなどは「普遍的である」ということがひとつのアピールポイントになっているので、そういった外見から特別な発信はしないのかもですね。なんならちょいダサいですから(笑)。

 ははは。近所にいるお兄さんお姉さん、もしくは理想の学校の先生みたいなところもいいんだと思います。そこまでイケメンではないメンバーが揃ったバンドの場合は、ダサさを演出して母性本能のくすぐりを狙う方法もあるのだとか。「流行に乗る」というよりは「そのバンドや楽曲に合ったヴィジュアルイメージ」というものが定番化しているのかもしれないですね。

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