音楽アルバムにテーマ性は必須? CD形態それぞれの存在意義

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みなさんにとって「いい音楽アルバム」とはどういうものでしょうか? シングル曲がたくさん入っているものでしょうか、ヒット曲がたくさん入ったベストアルバムでしょうか、それともテーマ性に富んだものでしょうか?

今回のコラムは、実はワンタンマガジンでも執筆してくださっているふくさんのツイートを見たことがきっかけになりました。

わたしもc/w曲はシングル購入者の特典的な立ち位置にいてほしいので、アルバムにc/w曲は入れないでいただきたい派。ふくさんの場合はB面曲のアルバム収録に関しては、テーマ云々よりリスナーが自分でB面まで探究する、ディグる余地が欲しいなあと思っているからだそうです。なんならシングル曲も入れないでいただきたいが、フルアルバムの伏線としてのシングル曲なら入れるべきか……と考えたとき、「自分はアルバムにテーマ性を求めているのだ」と客観的に思いました。フルアルバムには全体の流れ、ミニアルバムは1曲1曲の精度の高さを求めますが、総じてアルバムにはテーマ性があると望ましい。だがごくごく稀にミニアルバムの曲がフルアルバムに入ることがある。1曲が2枚のオリジナル作品に入ると単純に混乱するし、オリジナルアルバムの個性が消えるのでは? 話はずれるがフルアルバムにシングルが入るのは仕方ないとしても、ミニアルバムにはシングル曲が入れてほしくないな……といろいろ考えていくうちに「みんなはどう思っているのだろう」と気になり始めました。そこでTwitterのアンケート機能を使い投票を募りました。

普段のアンケートより投票数が少ないので分母の小ささが気にかかるところではありますが、この結果では半数近い方々が「ミニアルバム曲とシングルのc/w曲(EPの表題曲以外の曲)をどちらも入れないでほしい」と思っている。一部の方々がその理由を教えてくださいました。

 ・創り手によると思いますが、アルバムには1つのテーマがあって、それに沿って創られた曲が収録されるイメージなので、ミニといえど他のテーマに沿ったものが入るのは嫌ですね。c/wは同じくテーマに沿って創られたならアルバムの流れで聴いてみたいです。

 ・シングルは一曲一曲を個別で聴く作品、(ミニも含む)アルバムは全曲通して聴く作品だと思っているので、c/wがアルバムに入るのは良いのですが、ミニの曲があるとアルバムとしての軸がない気がしてしまって……。

同様のご意見をたくさん頂きました。みなさんアルバムには「テーマ性」を求めている。トータルの作品としての美しさを楽しみたい人が多い。そしてテーマ性と同じくらい重んじられているのは「新曲の多さ」でもありました。

 ・単純に新曲がたくさん聴きたい

 ・c/wはやっぱりシングル購入者の特典であってほしいんですよね……。

 ・アルバムにシングル曲が入っているともったいない気がします(笑)。

 ・c/wやミニアルバムの曲を入れてしまうと、それを買った時の価値が薄れてしまうようで、できれば入れてほしくないですね。「アルバムに入るなら、シングル買わなかったのに!」ってなります(笑)。

 ・People In The Boxに惹かれた理由のひとつがCDに曲かぶりがないことです。

シングルを買うとき、c/wが1曲だけだと「この先に出るアルバムに入るんじゃないの?」、2曲あると「このうち1曲はアルバムに入るんだろうな」と思い、買わないパターンはわたしも多いです。作品としての意義を果たしているシングルが少ないこともシングルの購買意欲を減らしている原因ではないでしょうか。そういう点で、People In The Boxはシングルでも作品としての意味を作ることに成功していると言ってもいいと思います(敢えて言うならばスプリット作品に収録した2曲をのちに自身のシングルに収録していますが)。

アルバムにおけるシングル曲の扱いに関しても言及してくださる方々も多かったです。

 ・アルバムの中にシングルが組み込まれるとまた違った側面を持ったりする場合もありますし(なので、できれば少しアレンジを変えてほしい)、シングルで興味持ってくれた方にも「おぉ!」ってなって欲しいので、シングル曲がアルバムに入るのはいいかな、と思います。

 ・(既発曲を)入れるならリミックスみたいなアレンジの違うのがいいです。メレンゲがやっていた通常曲とやけのはらリミックスの2曲を入れたのは、リミックスがツボだったのですごく好きでした。

 ・LILI LIMITが同じ曲を何ヴァージョンも出していたのはすごく面白かったです。

 ・基本的にアルバムはアルバムの流れを作ってほしいなと思っているのですが、そのなかにシングルが入るのは仕方ないかなと。そんだけまっさらな曲をアーティストがつくるのも大変やし。

シングルが入るのは当然のことだという認識の方々も多い。欲を言えばシングル曲はヴァージョン違いで入っていると非常にうれしい……ということですね。でも「むしろシングルの表題曲を入れないでほしい」というご意見も。

 ・新曲のなかにシングル曲、既に知っている曲が混じっていると、曲に集中できなかったり逆に聴き入っちゃったりでひとつのアルバムとして聴けていない気がします。

残念ながら「どちらも入れてOK」という方々からのご意見が頂けなかったのですが、推測できる理由としてはフルアルバムしか買わないから、というところでしょうか。もしよろしければご意見お待ちしております。

様々な方々の意見を踏まえると、リスナーはCDに「作品としての価値」や「音源を漁る意味」を求めていることが多い。どの作品にも新曲を入れるという手法はとても素晴らしいですが、なかなかハードルの高いことだと思います。シングル曲はヴァージョン違いで収録しアルバムのカラーに合わせる――それは90年代にはJ-POPにもよく見られた手法でもありますが、2000年以降はそれほど多く見かけません。シングル曲を活かすアルバムづくりもアーティストの課題ではないでしょうか。そしていよいよわからなくなるのが「シングルの意義」。特典DVDをつけるのもアイディアのひとつではありますが、シングル曲はYouTubeにMVがアップされて当たり前で、c/w曲もシングル曲もアルバムに収録される今日。シングルというフォーマットにおける「音源としての価値」を見直す必要もあるのではと思うのですが、いかがでしょうか。(沖 さやこ)

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