People In The Box-2016.4.8 at 渋谷CLUB QUATTRO

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CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE 山口大吾(Dr) Produce 『みんなダイゴマンになるダイゴマンナイト』
2016.4.8 at 渋谷CLUB QUATTRO

バンドのキャリアを存分に活かしたレア曲満載の仮面演奏会

取材・文:沖 さやこ
撮影:Takeshi Yao

 

People In The Boxの4ヶ月間にわたる渋谷CLUB QUATTROでのマンスリーライヴ2回目。今回はドラムス山口大吾による『みんなダイゴマンになるダイゴマンナイト』である。発表時からタイトルは物議を醸し(?)、初回のマンスリーライヴでも山口が「本当に皆さんを(ダイゴマンに)ならせますので」と発言。「みんなダイゴマンになるとは……?」という一抹の不安を抱えていると、ライヴ当日にダイゴマンのお面が配られることがインターネットを通じてアナウンスされた。使用上の注意は「メンバーのMC中に装着すること」「演奏に支障が出るので演奏中は使用不可」「お面は必ず持ち帰ってから捨てること」など、思わず笑ってしまうような内容。会場に到着する前からダイゴマンナイトは始まっていた。

いつも通りJim O’Rourkeの【And I’m Singing】がSEとして流れると、山口も含め全員ダイゴマンのお面を装着してメンバーが登場。全員がひとりのメンバーのお面をつけて登場するところも、それに対して失笑を止められないフロアもシュールすぎる。1曲目は【砂漠】。いきなりあまりライヴでお耳にかかれない選曲に、山口大吾の心遣いが見える。ゆったりとした同曲から収録作品『Weather Report』と同様に【大砂漠】へとつなぎ、特に山口のドラムのしなやかさは大きなインパクトになっていた。彼のテクニカルなドラムも光る【笛吹き男】も非常にパワフルで、波多野裕文のやわらかく感傷的な歌声とのコントラストも美しい。

MC中にはお面を装着するのがこの日のルール。その様子を見た波多野は「悪夢ですね(笑)」と爽やかに告げる。山口が、開場直後の15分間入口でお面を配っていたことをカミングアウトすると、場内からは驚きの声が上がった。彼はそのあと振込詐欺にあったことを告白し、この日のセットリストはそれに対してへこんだ気持ちや悔しい気持ちを込めたものだと言う。彼のドラムがいつも以上に体育会系なのも、そのやるせなさの影響だったのだろうか。

【水面上のアリア】【旧市街】【映画綺譚】と自身のキャリアから万遍ない選曲で構成されたセットリストは、最近あまりライヴで演奏されていなかった楽曲も多々あり、普段は終盤に演奏されがちな【聖者たち】が3曲目に来るなど曲順も斬新だ。先月の福井健太プロデュース公演もそうだったが、このマンスリーライヴは普段やれないようなことをやったら勝ち、という企みが感じられる。その様子は彼らが音楽と戦うだけでなく、戯れているようにも見えて、とても気持ちがいい。そしていまのPeople In The Boxには、その日のモードや空気で自分たちがどのような演奏ができるのかを楽しむ余裕がある。とは言っても過去曲には現在の彼らすらも振り回すパワーを孕んだ曲も多く、プレイヤー同士だけではなく、プレイヤーと楽曲、バンドと楽曲の間合いが作り出す緊張感も美しくスリリングだった。昨年リリースされたシングル『Calm Society』収録の【海はセメント】は3人の心の波形がぴったりとシンクロするような高い集中力と精神力が、すべて注ぎ込まれたような圧巻の音像。この安定感がもたらす雄大なエネルギーが、いまの彼らのモードなのかもしれない。

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9曲演奏して「足が攣った」と言いストレッチを始める山口。波多野が「肉体を駆使する曲が多いことがここからもわかっていただけると思う」と言うと、観客からは笑いが起こった。コンディションが整ったところで後半戦、まずはRage Against the Machineの「Maria」を披露した。原曲に沿ったカヴァーで、波多野のラップにメタル然としたリフ、ファンク・テイストのある福井のベース、山口の叩くヒップホップ調の8ビートと、ピープルの楽曲ではなかなか聴くことができないアプローチの応酬に心が躍る。3人とも非常に楽しそうで、非常に健康的なグルーヴが生まれていた。間髪入れずに山口が【大陸】につなげると、波多野と福井も揃って太鼓を叩くという3人態勢のリズム合戦。ユニゾン、ソロ回しなどで魅了し、ダイゴマンお面をつけながら太鼓を叩く波多野の姿が民族音楽感を増幅させていた。

ピアノ・アレンジが施された【あなたのなかの忘れた海】はもとのアレンジよりも洗練された空気が。波多野のヴォーカルにスポットが当たる【月】は、彼のヴォーカルの奥深さが増したことでさらに大きな説得力と包容力が生まれ、その空気感に恍惚とした。ダイゴマンの決め台詞「本日も全力でぶっ殺しに行くんでよろしく!」のあとはラストスパート。【火曜日/空室】【スルツェイ】【球体】と力強く畳み掛け、【逆光】はサビの高揚とラストの開放感が煌びやかで本編ラストに相応しい好演だった。

山口が「何年もやってない曲をやって終わろうと思います」と言いアンコールで演奏されたのは【鍵盤のない、】。People In The Boxの全国デビュー盤『rabbit hole』収録曲である。この日最も彼らが過去と親睦を深めていたのはこの曲だったと思う。福井の彩り鮮やかなベース、天を仰ぐような波多野の歌、山口のドラマティックなドラミング、すべてがいまの彼らにしか出せない成熟と情熱がとても優しかった。いまの彼らに過去の彼らの姿が重なり、それが過去の自分たちを抱きしめているようにも見え、感慨に耽る。自分たちが生み出す作品に高い尊厳を持ち、音楽と真剣に向き合い続けた彼らだからこその、地に足のついた音だった。バンドの歴史の喜怒哀楽が大きくふくよかに鳴り響き、その余韻には未来が見えた。

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People In The Box
CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE 山口大吾(Dr) Produce 『みんなダイゴマンになるダイゴマンナイト』
2016.4.8 at 渋谷CLUB QUATTRO setlist

01 砂漠~大砂漠
02 笛吹き男
03 聖者たち
04 水面上のアリア
05 旧市街
06 映画綺譚
07 潜水
08 レテビーチ
09 海はセメント
10 Maria(※Rage Against the Machineカヴァー)
11 大陸
12 あなたのなかの忘れた海
13 月
14 火曜日/空室
15 スルツェイ
16 球体
17 逆光
encore
18 鍵盤のない、

◆CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE Information
・5/13(fri)「波多野裕文(Gt/Vo) Produce 『Renaissance』」
・6/17(fri)「Request day 『People In The Jukebox』」※SOLD OUT
時間:open 18:15 / start 19:00
料金:adv. 3,800yen (1drink別途)

◆more information
People In The Box official website

◆CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE Report
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福井健太(Ba)Produce
『ニューイヤーコンサート』

 

 

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