その日常はなぜ日常なのか――creature falls umbrellaの音楽に渦巻くグシミヤギヒデユキの思考

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s__17A6710その日常はなぜ日常なのか――
creature falls umbrellaの音楽に渦巻くグシミヤギヒデユキの思考

取材・文:沖 さやこ
撮影:溝口 裕也
協力:学校法人 東放学園音響専門学校

 

感傷ベクトルや夏代孝明のサポートギタリストとしても知られるグシミヤギ ヒデユキが、自身がギターヴォーカルを務める3ピースバンドを始動させた。バンド名はcreature falls umbrella。昨年突如2曲のデモ音源を公開し、グシミヤギのギタリスト活動と並行させながらバンドはライヴも行っている。そして彼らはこの夏、初の正式音源『mistletoe』を自身のウェブサイト限定でリリース。音質にもこだわるなど理想を現実にした処女作は、彼やメンバーの概念や感性が色濃く表れたものになった。

 

creaturefallsumbrella_a_photo◆creature falls umbrella
(クリーチャー・フォールズ・アンブレラ)

グシミヤギ ヒデユキ(Vo/Gt)、マクタ ユウジ(Ba)、ヨシダ シュンイチ(Dr)からなる3ピースバンド。2014年10月結成。翌年3月に初となる楽曲「メトロノームがきこえる」をインターネット上に公開し、バンドとしてのキャリアをスタート。3ピースというシンプルな構成の中で、各楽器の個性とより良いメロディーの共存を追求する。
オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter

 

 

 

 

 

◆3人でライヴをしていくなかで「自分たちがダイレクトに表現していきたいこと」に気付いた

――creature falls umbrellaはどのような経緯で始まったバンドなのでしょう?

僕はこれまでギタリストとして音楽活動を行っていたので、他の人が作った曲にギターを乗せていくことが活動のメインだったんです。けどそれを行ううちに自分のなかに「音楽的な表現欲求をダイレクトに表現できる場が欲しい」「自分で曲を作って、自分で動かすバンドを作りたい」という思いが芽生えて、大学のサークルの後輩ふたり(ベースのマクタ ユウジとドラムのヨシダ シュンイチ)に声を掛けました。当初はヴォーカルを別に立てようと思っていたんですけど全然ヴォーカリストが見つからなくて。「自分の曲を誰かに歌ってもらうのもハードルが高いし、自分が歌えば自分も納得できるんじゃないかな」と思って、結果的に3ピースバンドとして活動していくことになりました。

――では3ピースバンドになったのは結果論だったと。そうして始まったバンドを実際動かしてみて、いかがでしたか?

「音数が少ない」というのがいちばん最初にぶち当たった壁ですね。ギターが2本以上あるバンドか鍵盤があるバンドにしか参加したことがなかったので、自分のギターだけで自分が歌うとなると、リードギターという立ち位置のフレーズにも限界が出てくる。制限された枠内で表現をすることがすごく難しくて、いまも試行錯誤している段階です。でもシンプルなことは自分の思い描いているものと直結しやすくて、材料が少ないぶんクリアに曲の全体像を作りやすい。それは3ピースのメリットかなと思います。

――そしてcreature falls umbrellaは2015年3月に【メトロノームがきこえる】と【映画】の2曲を突如soundcloudにて公開し、この2曲を収録した1stデモCDを会場限定でリリースしました。

【メトロノームがきこえる】は僕がずーっと昔にデモを作ってた曲で、【映画】は3ピースで活動していくことが決まったあとに「3人でやっていくとしたらこういう曲がいいよね」ということを話しながら作った曲なので、ある意味相反しているかなと思います。


creature falls umbrella「メトロノームがきこえる」MV

――【メトロノームがきこえる】はテクニックが効いたアプローチですが、【映画】はそれに比べるとのびのびした印象があります。

知り合いのミュージシャンからは【映画】を褒めてもらうことが多くて、「3ピースバンドが3人ということにフォーカスして曲を作るのは重要なんだな」と思って。だからそのあとの曲作りはトリオ感を重視したいなと思うようになりました。曲を作って3人でライヴをしていくうちに「自分たちがダイレクトに表現していきたいことは小賢しいことではなくシンプルなことなんだ」という気付きもありましたね。

――ベースのマクタさんとドラムのヨシダさんはどんな方々ですか?

ふたりとも後輩なので、どうしても僕を立ててくれる感じなんですよね(笑)。音楽的な部分ではふたりとも表現したいものを持っているので、レコーディングのときはちゃんと意見交換もできるんですけど……僕的にはもっと「てめえ、この野郎!」くらいぶつかってきてくれてもいいのにな、バンドはそういうものを乗り越えてこそだしな、と思ったりもします。とはいっても『mistletoe』を作るにあたって、曲順、ミックスの音像など、「ここはどうするべきなんだろう?」と自分だけでは決めかねる瞬間にメンバーが「自分はこんな感じがいいです」というヴィジョンを出してくれて。だから僕が作詞作曲をして引っ張っていきながらも、3人で作りこんでいった手応えは感じているんですよね。

>> 6曲すべてに自分の一貫した人間性が出ている

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