長く音楽を続けたい―― 歩みを止めず進み続けたBrian the Sunの10年(後編)
◆ちょっと背伸びしながらひとつひとつ活動することができた
――いまの事務所の社長さんとの出会いも、Brian the Sunにとっては大きかったのでは?
白山 2011年のメジャーデビューの話がなくなったあとに、いまの事務所の社長が「手伝おうか」と言ってくれて、ちゃんとお仕事としてタッグを組むようになったんです。しかもインディーズからやりましょうと言ってくれたんで、「僕らもそうしたかったです」と。
小川 「仲間がひとり増えた」って感じやったな。
森 事務所の社長は俺らの知ってる世界とは全然違うところの、ものすごい人ですからね。だから安心感もあったし、何より俺らと同じように人柄、人間性、信頼関係をすごく大事にする人なんですよ。目先の何かというよりは、もっと先のことを見据えて俺らと一緒にやろうと言ってくれてるなと。そういう人情がある人なので、一緒に何かできたらいいなー……というのはすごくあったんです。ちゃんとライヴハウスに来て現場を見て「イケてる/イケてない」を見てくれる人で、俺らの目線に合わせてくれたから、俺らもひとつひとつちょっと背伸びしながら活動することができた。あたたかく見守ってくれて、後押ししてくれたから良かったです。いまバンドが続いてるのはあの人のお陰やし、全員が全員あの人には恩返ししたいと思ってるから――。そういう魅力がある人なんですよね。
白山 ほんまひとつひとつ一緒にやってくれたもんな。CDのリリース時期から、流通、ジャケットまで、いちから話して。ジャケで揉めたこともあったなあ。
森 俺がジャケットに関して「ダサい」「嫌や」と反対したことがあったんです。そのときに「自分たちがいいと思うものと人がいいと思うものは違うんやな」ということもわかったし、「そのこだわりは大事なものじゃないな」とすごく思いましたね。俺が音以外で自分がいいと信じるものを持つ必要はないなと思った。外側の印象だけで本質がぶれたり変わるような音楽やってたらあかんなと思ったし。いい経験でした。
白山 『Sister』で初めてレコード屋さんに自分たちのCDが並んで、すごくうれしかったよね。初めてお店回りして、移動の車でラジオをつけたら自分たちの曲が流れて「うわぁー!!」と思った。自分らの音楽は自分らでCDを入れないと流れないものやと思っていたから、あの瞬間は忘れられないですね。誰かがリクエストをしてくれた、DJさんが紹介してくれた……ひとつひとつのことをいまでも覚えています。
――波長が合う、グルーヴが作れる4人が集まってから、いい出会いがあって、ひとつひとついろんなことがうまくいっているんですね。
白山 そうですね。もちろんしんどいことはたくさんあるんですけど、爆発的な楽しいことがたまにあるから、やめられないですよね。
森 ガラガラのライヴハウスでやってたインディーズでの活動が長いぶん、聴いてくれる人がおるというのは、ほんまありがたいなー……と思います。お陰さまで続いてるし、逆に言えばライヴに来てくれる人がおるからライヴハウスに行くしかない(笑)。俺がおらんわけにもいかんし、代えは効かんし――それは尊いことやと思うんですよね。居場所があるというのは何事にも代え難いことやと思うし。どんどんどんどんお客さんが来てくれたらいいなあと思うんですけど、増えていけば増えていくほど、お客さんというものが抽象化されていくじゃないですか。
――そうですね。
森 インディーズ時代は「お客さん」言うたら5人くらいの顔が浮かんでたものが、いま「お客さん」言うたらすごい数なんですよ。でもそれをありがたいと思うのはライヴで面と向かってるときやったりするし。曲を作ってるときやレコーディングをしているときは音楽に集中してるけど、いざ生ものとして発表するときは、(お客さんの存在は)ほんまにありがたいなと思いますね。
――音楽をやっているのは自分のためであり、人のためでもあると。
森 そうです。自分のためにやるのはもちろんやし、自分のためにやっていることは人のためになるべき――それがいちばん綺麗なかたちやと思います。
白山 それを再確認したのが2013年の『NON SUGAR』のツアーやったと思います。このアルバムをリリースしたあとに「激ブライアンカナブンブン丸」(※Brian the SunとKANA-BOONのツーマンライヴ)をやったんですけど、そのあとに「全国回ってこい」と言ってもらって、3ヶ月で40本くらい回ったんですよ。全会場Brian the Sunを観に来た人が2桁以上いて、「閃光ライオットのときから聴いていて、今回初めてライヴに来れました」という人もいたりして、ほんまうれしくて。そのころはもう東名阪ツアーをやればお客さんは結構集まるという状況やったから、自分の気持ちが(「1対1がお客さんの数だけある」というバンドのポリシーから)ぶれてたかなと思うところもちょっとあって。ここでメンバー全員が「1対1がお客さんの数だけある」ということを強く認識できたなと思います。
>> 自分の思っていることを思っている通りにやりたいからギターを持って歌っている