地方でも東京でもない“横浜町田”で生まれる若者のリアルなクリエイティヴィティ――3ピースバンドMade in Me.が持つローカルのプライド
地方でも東京でもない“横浜町田”で生まれる
若者のリアルなクリエイティヴィティ
――3ピースバンドMade in Me.が持つローカルのプライド
取材・文:沖 さやこ
インターネットや交通網の発達もあり、音楽活動をする人々がそれぞれの地元で活動をすることも珍しくはなくなった。地方でもフェスやサーキットイヴェントが行われ、それが地方の活性化につながっているケースも少なくない。だが“首都圏”、なかでは神奈川県はどうだろう? 神奈川に住みながら活動拠点を東京にしている音楽家も多ければ、神奈川県でも主要とされていた横浜のライヴハウスclub Lizardも閉店してしまった。だがどれだけ「音楽不況だ」と嘆かれる時代でもいい音楽が生まれてきたことと同じように、どんな場所にも志を高く持った若者がいる。その若者たちは決まって、若者ならではの感性で新しい“いいと思うもの”や“信じるもの”を生み出しているのだ。
◆強いけど弱い、弱いけど強い“ハリネズミ”なバンドとクリエイターがタッグを組んだイヴェント「HEDGEHOGS」
地元である横浜&町田を拠点に活動するMade in Me.もそういうバンドだ。彦(Vo/Gt)、優作(Ba)、ゆかり(Dr)からなる3ピースバンド。彼らが地元のバンド仲間であるBlackBlankとともに2017年7月29日に町田Nutty’sで開催した「HEDGEHOGS vol.1」というイヴェントは、彼らのツーマンライヴに加え、様々な若いクリエイターの作品が集合した空間だった。Made in Me.とBlackBlankはそのイヴェントのためにスプリットシングル『Reincarnation』を制作。レコーディングエンジニア、MV監督、MV編集、ジャケットなど同世代のクリエイターで作品づくりを行うだけにとどまらず、イヴェント当日も2バンドのメンバーをそれぞれフィーチャーした写真、オブジェ、アートワーク、写真の展示に、“勝利”や“豊穣”の象徴でもあるオリーブを串に刺したフードも販売された。その強い意志が結合する空間はエネルギッシュで、非常に居心地がよかった。
このHEDGEHOGSという企画が立ち上がったのは、Made in Me.の「ツーマンライヴでしか味わえない雰囲気や、自己満足、世界観の体現など放出、共有したい要素が日々の活動の中でありすぎた」という動機がそもそものきっかけだった。それにあたり彼らが考えてる以上に情熱と思想でレスポンスをしたのが平均年齢20歳3ピースロックバンドのBlackBlankだ。
「僕らも軽い気持ちでやりたいと言い出したつもりはなかったですけど、ブラブラ(※BlackBlank)は僕ら以上のポテンシャルで最初はこの企画自体をブラブラに飲みこまれそうになりました(笑)」(彦)
「BlackBlankは言葉に表すことが難しいイメージや気持ちを曲にできるバンドだと思います。ノンフィクションなこともフィクションに変えてくれる」(優作)
アートの展示やクリエイターとの連携が体現できたのは、そんなエネルギッシュなBlackBlankの協力も大きかったようだ。結果的にBlackBlank側から招聘したクリエイター、Made in Me.側から招聘したクリエイター、お互い共通の仲間など、様々な界隈から同世代クリエイターが揃い踏み(※参考リンク:HEDGEHOGSアーティスト紹介)。そこにはバンドと比べてひとりで活動することが多いクリエイターにとっても、刺激し合える場所にしたいという想いもあった。
「クリエイターとバンドのお互いの弱い部分を接続できると思いました。芸術と芸術のキャッチボールは、言葉にせずとも言いたいこと、考えてること、好きそうなこともわかる。アーティストは暗号が好きだと思います。曖昧なくせに、わかってもらいたがる。みんなひねくれてるので仕方ないです。きっとひねくれることでしか自分を守れなかったはずです。強いけど弱い。弱いけど強い。HEDGEHOGS(=ハリネズミ)な人にはシンパシーを感じます。周りの仲間たちとの結びつきや、コラボレーションによってより五感に訴えかけることができると思ったんです」(彦)
クリエイターたちはそれぞれの過去の作品や、それぞれの感情が出ている作品をもちより、バンドは音楽で表現する作品はもちろん、音以外の表現方法を求めた。多彩なクリエイティヴ空間「HEDGEHOGS」はそれぞれの強い感情、想いを混ぜることで出来上がったのだ。
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