メロディアスでファンタジックな“毒”ロック――名古屋の男女混合バンド・カヨを徹底解剖
◆筋道のヒントをもらったおかげで「ひとつの道を究めていいんだ」と思った
――カヨの音楽性はどうまとまっていったのでしょう?
イケヅ メンバー全員好きな音楽の系統が違うんですけど、どんなに激しい音楽が好きなメンバーでも、全員共通してメロディアスなものが好きなんですよ。作曲はワカが担当していて、いつもいいメロディを作ってくれるんです。歌をしっかり聴かせて、演奏はしっかりバンドとしてかっこいいものにしたいなと思っています。ギターがふたりになったことでサウンドもロック系になって、同期音も減っていきました。
サアヤ 最初の頃は、バンドの雰囲気も「ハッピーポップバンド! イェーイ!」って感じだったんです。自分たちはそれがいいものだと思っていたんですけど、それは自分たちのことを客観的に見れていなかったんですよね。そんなとき、ある日突然わたしたちの目の前に現れた“兄様”から助言をもらって気付いたんです。
――所属レーベルの“兄様”との出会いがターニングポイントになったということですね。
ワカ 自分たちが本当にやりたいことを、どういうふうに表現したらいいかわかってなかったんですよね。いまもポップさというものはあると思うんですけど、前はポップさしかなかったというか(笑)。僕らがやりたいことはロックバンドなので、ロックのなかのポップを追求していきたいと思っていますね。“兄様”はああしろこうしろと言うのではなく、僕らのやりたいことを引き出してくれたんです。
ヒロミ めちゃくちゃポップな曲をやっていたのは、一般受けを欲していたからなんですよね(笑)。へんな意味で広げすぎていたんだろうなと思います。でも筋道のヒントをもらったおかげで「ひとつの道を究めていいんだ」と思ったんですよね。
モリシタ 僕は激しい音楽が好きで育ってきたので、いまのカヨのスタイルは前よりも自分のやりたいことに近づいている感じもします。ギターがふたりになって、カヨになってロックサウンドになってきていることで、自分の持っている引き出しの中身を出しやすくなりました。フレーズを作る際は、歌の邪魔にならないものにすること、歌を引き立たせるものにすることを意識していますね。ギターとかがどれだけヘヴィでも、歌がポップ……みたいなギャップがいいよね。
ワカ そうだね。歌がポップでキャッチーなことだけは必ず守ってる。
イケヅ 2017年度から東京でもライヴをするようになって、いろんな出会いがあったんです。名古屋にずっとこもっていたら、こういうスタイルにはならなかったと思います。
サアヤ いまは自分たちのやりたい音楽のヴィジョンがちゃんとあるなかで活動できていますね。
――ワカさんの作ったデモをみなさんが自由にアレンジして、サアヤさんが歌詞を書くということですか?
サアヤ そうですね。わたしは、歌詞も自分の素のままで書くと「大好き!」「楽しい!」「綺麗!」みたいに極端で単純なものになっちゃって(笑)、それが悩みでもあったんです。だからいまは自分の生活にいろんな変化をつけるようにしていて。もっと深みのある、味のある歌詞を書きたいので、自分にないところを増やして、自分の引き出しを増やしているところです。
――生活を変えることが音楽の変化につながる。だから“生活密着型バンド”というキャッチフレーズがついているんですね。
サアヤ ワカさんが作った曲を聴いたときに「こういう歌詞が書きたいから、こういうことをしてみようかな」と思うんですよね。歌詞は結局自分から生まれるものだから。その日その日で「今日は普通の人みたいに振る舞ってみようかな」「今日は変人みたいな感じにしてみよう」「今日は艶っぽい雰囲気にしてみよう」……みたいに自分を変えてみたりして。服装も変えるんです。
――ある種の憑依型なのかしら。
サアヤ そうかもしれない。自分のなかにいくつもスイッチがあって、パターンによって入れるスイッチを変える感じですね。
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『CHITOSE E.P』の3曲が導きだしたカヨの特色
それを引っ提げて開催されているバンド初の全国ツアー