WOMCADOLE / KAKASHI / バウンダリー / RiL -2019.3.28 thu at 渋谷 TSUTAYA O-Crest
WOMCADOLE / KAKASHI / バウンダリー / RiL
UNCROWN RECORDS pre. DONT’WEAR, GET UP
2019.3.28 thu at 渋谷 TSUTAYA O-Crest
4バンドがそれぞれ鳴らす自分たちならではのロックと美学
取材・文 沖 さやこ
撮影 ハライタチ
レーベルメイトとはどんな存在なのだろうか。友達同士でもなければ家族でもない。仲間なんだろうけど、自分たちの意志のもと集まったわけではない。同じ組織に所属しているけれど同じことを成すわけでもない。そんなふうにうだうだ考えていたことも、この日を境にどうでもよくなってしまった。UNCROWN RECORDS所属の4バンドが集結し、大阪と東京で開催されたレーベルナイト。レーベルメイトがどんな存在かはわからなくても、レーベルメイトという関係性でないと作れない空間は間違いなくある。それを確かに実感できた日だったのだ。
一番手はUNCROWN RECORDSの特攻隊長、群馬の4ピース・KAKASHI。以前の彼らは劣等感から生まれる強烈なエネルギーや足掻きで人々の心を突き動かしていたが、今日の彼らには一音一音を堂々と鳴らす迫力や貫禄が生まれている印象があった。最新作『PASSPORT』のメンタリティが、ライヴにも表れるようになってきたのかもしれない。セットリストを進めるごとに、気持ちが解き放たれるように演奏も歌も荒々しく衝動的になり、その青さは灯火しか見えない夜というよりは、闇を焼き尽くすような炎だった。
堀越颯太(Vo/Gt)がUNCROWN RECORDSへの感謝を伝えると「今日は絶対いい日にしたい」と力強く宣言する。「仲良しこよしで4バンド肩を組んで頑張ろうとは一切思ってないんだけど、この4バンドがこのまま大きくなって、もっとでっかいところでやれたら面白いと思う」「もっともっと自分たちで面白いことをしていきたい。その時、あなたたちが傍にいてくれたらうれしい」と言い演奏された【変わらないもの】は、そのMCに込められた気持ちが鮮明に投影されていた。
そのあとも堀越は曲と曲の間で自分の心情を自分なりの言葉選びで伝えていく。KAKASHIの音楽は彼の言葉や感情から生まれているが、齊藤雅弘(Gt)、中屋敷智裕(Ba/Cho)、関 佑介(Dr/Cho)が楽曲に自分の意志と想いを重ねた瞬間に生まれる威力こそ、現在の彼らの武器だろう。ラストの【愛しき日々よ】は真摯な歌声と演奏がとても頼もしく優しかった。
セッティングからそのまま演奏をスタートさせたのは大阪の女子3ピース・バウンダリー。往年のロックンロールを彷彿とさせるギターサウンド、どっしり構えた演奏の立ち振る舞いや、ゆき(Vo/Gt)の声量のあるちょっと生意気なヴォーカルなど、序盤は自分たちに確固たる自信を持っているバンドなのかと思ったが、それは正解のようで正解じゃない解釈だったことが後になってわかる。
ゆきはMCで自分たちの曲について「弱い自分に向けた曲がほとんど」「自分で自分を励ますような曲たちですが、もし誰かがへこんだ時に届けばいいなと思って今日も歌います」と語っていた。バウンダリーは音楽という鎧を身にまとうことで強くなれるバンドなのだろう。新曲の【さよなら】は明るいなかに陰があり、ふうか(Ba/Cho)のさりげなくクセのあるベースプレイがいいアクセントになっていた。さくら(Dr/Cho)のドラムから入った【独り言】も、甘くなりすぎないポップ感にほんのり苦味を感じさせているところが生々しい。
ゆきはレーベル長との出会いについて明かすと、最後に「すごく素敵な人」と照れ笑い混じりに語った。「わたしたちもこの先ずっと進んでいきますし、人生それぞれ頑張りましょう。まっすぐ生きたいという曲です」と言い新曲の【真っ直ぐ】と最後に【BABY】を届ける。若き女子の強がり交じりの泥くささが、美しい花を咲かせる日も近いかもしれない。
トリ前に登場したのは町田の2ピース・RiL。ワンタンマガジンでSMDRの特集を組んだ2017年11月、まさかこのバンドが同レーベルが契約を結ぶとは思ってもみなかった。縁とは不思議なものである。ドラムとギターヴォーカルというバンド編成、ギターにつながるアンプは3台、2人で出しているとは思えない音圧、Urara(Dr/Cho)はついこの前までJKで、華奢な身体からは想像し得ないアグレッシヴなプレイなど、既存の枠にとらわれないダークホース。この日もその異端児っぷりを知らしめる。
SEのショパン【革命のエチュード】をShusei(Vo/Gt)がギターの爆音だけで一気に掻き消すと【1994】のイントロへ。どこか不穏で、隅々までひたすらにひりついた音像。それは観客に歩み寄るわけでもないが拒絶するわけでもなく、敵意を見せるわけでもない。それは彼がぶっきらぼうに言う「ついてこれるだけついてこい」という言葉に集約されていると思う。このふたりはただただ自分たちの全身を振り絞って音楽を鳴らすためだけにここにいる。そしてそこに集中すればするほど聴き手と深いところでコンタクトが取れること、それが音楽であることを本能的に悟っている。
静と動を巧みに操り、凄みを増せば増すほどしなやかさと鋭利さも増し、音が全身を貫くだけではなく激しい火傷のように肌の奥までねじりこまれていくようだ。必殺技とも言うべき【LOSER】と【IGGY & BIGGIE】の畳みかけでShuseiの見せた不敵な笑みはまさに興奮と熱狂の象徴。アンプに乗ったりフロアに降りたりする様子も痛快だった。彼は最後にダブルピースをきめ、ステージを後にする。完成されていると感じさせる説得力と同時に、まだまだ底知れぬポテンシャルを秘めていることを想わせる、圧巻のステージだった。
トリの飾るのはもちろんUNCROWN RECORDSの長男、滋賀のスーパーロックバンド・WOMCADOLE。3月中旬に彼らを観た時も4人の自由度の高さがさらに猛威を振るっていて、青き春の桜吹雪のようなライヴだと感じたが、また短期間で装いを新たにしていた。
去年の秋から目覚ましかった楽器隊のパワーアップに加えて、去年の年末から少しずつ見えていた樋口のフロントマンとしての存在感、声の艶や歌唱力が芽吹いた。苦しそうに絶唱する姿はなく、その瞬間に鳴らす音、観客から発せられる想いや熱から生まれた激しい高波や濁流とスリルを楽しんでいるように見える。初期曲【ドア】もより強靭に逞しく、樋口がハンドマイクでパフォーマンスする新曲【R-18】も太くてスロウでヘヴィな音色で魅了する。マイクのシールドを首に絡める装いも映えていた。
「音楽をやりに来た、聴きに来た、それだけの関係じゃねえ。ここにいる僕ら全員で音楽をしに来たんです。最後まで一生懸命歌いますので、あなたの心臓、魂、こっちまでぶつけに来てください」と樋口が告げると【アルク】へ。古澤徳之(Gt/Cho)の繊細なギターフレーズ、溢れる感情で猪突猛進する安田吉希(Dr/Cho)のドラミング、歌うように滑らかで芯のある黒野滉大(Ba)の辿る低音、観客の歌声、樋口の感情がそのまま音階を持ったメロディといった、現在のWOMCADOLEの礎とも言える楽曲である。まさに得意技であり、一心不乱に全速力を出すにはお誂え向き。こうなったらもうこのバンドは向かうところ敵なしだ。【アオキハルヘ】と【ライター】を華々しく鳴らし、アンコールの【唄う】では樋口がフロアに降りたり、黒野にマイクを向けて歌わせたりと、この日の最後を爽やかな熱狂で彩った。
どのバンドもレーベルといい関係を築けていることが窺えたし、4バンドそれぞれ音楽性だけでなく感謝の伝え方がまったく異なるところも興味深かった。そしてUNCROWN RECORDSのバンドは一筋縄ではいかず芯が太く、自分たちの鳴らすそれぞれのロックを信じているという共通項も見えた。樋口は最後「また会おうな!」と言い小指を立てて、未来への約束を示した。この先を語れるのも、今と本気で向き合っているからだろう。どのバンドも今持ち得る最大限の力を出した熱演だった。
2019.03.28@東京渋谷TSUTAYA O-Crest UNCROWN RECORDS pre.「DON’T WEAR,GET UP」Digest Movie
◆SETLIST
KAKASHI
01 本当の事
02 流星の中で
03 ドブネズミ
04 変わらないもの
05 違うんじゃないか
06 愛しき日々よ
バウンダリー
01 神様
02 明日
03 さよなら(新曲)
04 独り言
05 タイマー
06 真っ直ぐ(新曲)
07 BABY
RiL
intro
01 1994
02 shambhala(short)
03 THE DOOR
04 LOSER
05 IGGY & BIGGIE
outro
WOMCADOLE
01 人間なんです
02 絶望を撃て
03 ドア
04 R-18(新曲)
05 アルク
06 アオキハルヘ
07 ライター
encore
08 唄う
◆Information
・UNCROWN RECORDS official Twitter
・WOMCADOLE official site
・KAKASHI official site
・バウンダリー official site
・RiL official site