十年選手の初期衝動――ガストバーナーがオルタナ×歌謡メロで体現する幸福論とは(後編)

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◆10年以上バンドをやってると、かっこいいと思われたい、認められたいという気持ちが強くなる。だからこそ売れたいではなく「広がってほしい」という言葉になる

――そんなアルバムが『Happy』というタイトルなのも意味深いなと。

加納 これはあとから意味がついてきたというか。

はやお 【ストレンジャー】のMVを撮った次の日に【ダーティーダンスホール】のMVを撮ったんですけど、その間の夜にはるきちさんの家に泊まって、朝4時くらいまで「幸せってなんだろう?」という話をしてたんです(笑)。起きてからもその話を引きずったままで、【ダーティーダンスホール】のMV撮影に向かう最中も「幸せってなんだろう?」と話してて。

りっちゃん 朝会っていきなりはるきちさんから「りっちゃんは幸せ?」と言われて。そういう話好きなので、いいバンドだなって思いました(笑)。その流れでアルバムのタイトルも『Happy』にしようとはるきちさんが提案したんですけど、その日には「幸せかどうか」「幸せとはなにか」という結論は出なくて。それが録り終えて、みんなで音源を聴いた瞬間に「これが“幸せ”か……!」って感じたというか。

はるきち なるべくして『Happy』になったんだろうなあ。

りっちゃん 組んですぐにコロナに巻き込まれましたけど(笑)。

――そうですよね。でも、ふつうなら出鼻をくじかれている状況なのに、結成から半年で音源リリースしてるなんて、なかなかできないことだと思います。

はるきち ふつうのバンドよりダメージが少なかったのは、遠距離バンドならではの制作方法だったのもある気がしてますね。ライブをやれないこと以外は、コロナ禍であるないにかかわらず当初の予定通り進んでるんです。僕らの初ライブ予定だったネコフェスも中止にはなってしまったけど、(主催者であるアルカラの稲村)太佑さんがYouTubeで「おうちネコフェス」を開催してくれたおかげで、スタジオライブ映像を流してもらえたのも有難かった。


おうちネコフェス アーカイブ

はるきち でもやっぱり、ライブやりたいですね。対バンがしたい! みそっかす時代に知り合って、ガストバーナーになってあらためて「一緒にライブがしたいな」と思うバンドがたくさんいるんです。意味のある対バンができると思う。

――たしかに。そうですね。みそっかすを知っているけどガストバーナーを知らない人、ガストバーナーをみそっかすの延長線上だと思ってる人もたくさんいると思うんです。でもガストバーナーは結果的にみそっかすでやれなかったことをやれるバンドになっていますし、経験と初期衝動のいいとこどりが出来ているとも思います。

はるきち だから「広がってほしい」という野心はあるんですよね。お金が欲しい、メジャーに行く、事務所が決まるというよりは、ただただひとりでも多くの人に聴いてもらいたい。

はやお 「売れたい」と「認められたい」はまったく別物だ、って話を前にはるきちさんと僕でしましたよね。10年以上バンドをやってると、かっこいいと思われたい、認められたいという気持ちが強くなる。だからこそ売れたいではなく「広がってほしい」という言葉になるんやろうなと思います。

りっちゃん わたしが思うに、はるきちさんは、みそっかすでできないことがたくさんあったぶん、解散したあとは自分のやりたいことだけをやろうという気持ちが強かったんだと思うんです。

はるきち ああ。みそっかすの反動は大きいのかもしれない。

りっちゃん 最初は自己満足でやっていたんだけど、思っていた以上にかっこいいものができたから、「聴いてもらいたい」「広げたい」って気持ちが大きくなってるんじゃないかなって。

はるきち たしかに最初は「自分が納得できるものが作れたらそれでいい」と思ってた。でもこれだけかっこいい曲たちができたから、これを広げるために自分が力を尽くさないと後悔するなと思って――みたいなことを夜中にツイートしたんですけどすぐに消しました(笑)。

――見出しになるくらいすごくいい話じゃないですか。なんで消したんですか(笑)。

はるきち こういうことつぶやくとまたTwitterでマイケルに「カリスマ」とかいじられるな~って(笑)。

加納 まあいじるうえでは格好の餌食ですけど(笑)。

りっちゃん でもすごく素敵じゃないですか? みんなに認められようとして作った音楽じゃないのに、いろんな人が認めてくれてるんですよ?

はるきち そうなんだよね。いままで認めてくれなかった人たちが「かっこいいね」と言ってくれることも多いし、なにより本当に自信作だから、この程度の広がりじゃ納得できなくて。俺が死んでこのアルバムが話題になるなら、それでもいいと思っちゃうくらい、ひとりでも多くの人に聴いてほしいんです。

りっちゃん ……かっこいい!

――MV曲はバンドの性質が明示されているし、アルバム曲では激しさのなかに焦燥感や個々が抱える闇深さも表現されている。みなさんの人生を凝縮した1枚なんだろうなと。

はるきち 10年経っても「あのアルバムすごかったよね?」と言ってる気がする。僕は本当にみそっかすの1st『三次元からの離脱』と2nd『異次元からの来訪者』が大好きなんですけど、そういう自分の歴史にしっかり残るアルバムだなと思ってます。

加納 俺もこの『Happy』で今やれることは全部やりましたね。前のバンドを脱退してから完全に退いて、ギターもアンプも全部置いてったのに、またこんなふうになるなんて不思議ですし……はるきちさんとマイケルに誘われなかったら、また音楽をやることはなかったと思う。アルバムのタイトルどおり、これが“Happy”なんでしょうね(笑)。


ガストバーナー / ストレンジャー(GAS and BURNER / A Stranger) 【Official Music Video】

――今後ガストバーナーはどう動いていこう、というビジョンはあるのでしょうか?

はるきち なんも考えてないんですよ。マイケルは「海外でライブして、さんざん叩かれて帰ってくればいい」とか言ってましたけど(笑)。やっぱりまずはライブかなあ。「ガストバーナーってヤバいバンドがあるんだぞ」と自分たちの存在を知ってもらいたい。毎日のようにライブも誘ってもらってるんですけど、まだ初ライブをしてないバンドだから、ライブを決めるのにちょっと慎重にはなってるんです。……やっぱりライブがなかなかできないとなると、次の作品を作るしかないのかな?

加納 いいですね。作品いっぱい作りたい。

りっちゃん うんうん。初ライブでお客さんがみんな曲を知ってるっていいですよね。

加納 通常のライブがいつできるようになるかわからないけど、そうなったときに曲が揃ってて、ワンマンやれたらかっこいいですよね?

はるきち うん、たしかに! 次作りましょう。でもひとまず、今回リリースまでこじつけられたことが“Happy”ですね。

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番外編、5人目のメンバーとも言うべきプロデューサー・マイケルTHEドリームにソロインタビュー。彼がガストバーナーにかける想いとは

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